引き留めておくべきだった
"それ"は突然やってきた。
夜があるのはなぜ?
暗くて、不安な気持ちが一気に押し寄せて、いてもたってもいられなくなる。
誰もいない小さな部屋で、私は膝を抱えて泣いている。
この世に、本当に神様がいるのかと。
君がどこかで幸せになっているのかと。
私は、こうして夜を迎えるのが怖くて、寂しくて、切なくて。
音もない、色もない、光もない、そんな部屋で涙を流して。
ここがどこかも、今が何時かも、そんなことも気にならないくらいの
息苦しい夜を、今日も越えようとしていた。
ふと音楽を流せば、そこには君がいて
ついこの間までの笑っていた君を思い出した。
君の笑顔はずっと眩しかった
そんな君に勇気をもらっていたの
なのに、君にありがとうと言えなかった。
ずっと、ずっと言えなかった。
どんなに陽が眩しくても、もうそこに君はいない。
こんなにもたくさんのものをもらって
"ありがとう"
この言葉だけでも伝えたいのに、
もう君はいない。
よく食べる君の顔が、ずっと脳裏に焼き付いていて。
最後に会ったあの日のことを、
ずっと思い返している。
つい昨日のことのように思える。
毎日、空を見上げればそこにいるのに。
眩しく私たちを照らしているでしょう?
どうして笑ってくれないの、
笑った君しか思い出せないくらい
無邪気な君の顔が好きだったんだよ。
少し寒くて、少し生温かい空気
雲ひとつない、真っ暗な夜に
たったひとつ、輝く月
それを取り囲むように散らばる星たち
紫が似合う、君の声が
今にも聴こえてきそうで
夜は嫌いなのに
ずっとこのまま時が止まればいいのにと思う
どうかこの夜が明けないで欲しいと思うの
桜が緑に変わり始めるころ
たんぽぽの綿毛が舞うように、
風に乗って君が今にも現れそうで
私の背中を押すように、追い風が吹くから。
大丈夫だと思える。
今日もきっと夜が明けると思える。
.
カーテンを開けて、差し込んでくる光はまぶしくて
まだ起きたくなくて、そっと目を閉じてみた
ぼんやりしたまま、通知を見る。
嗚咽で、うまく息ができなかった
"それ" に
身体が震えて涙が溢れた
ねえ、この声 聴こえてる?
お願い、もう一度だけ笑って。
"引き留めておくべきだった"