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苦しいほど好きだった君へ #1

きっかけは、ほんの些細なことだった。

大学入学と同時に入ったダンス部。元々趣味と呼べるようなものがダンスくらいしかなかったから。
女子メンバーが多かったから、そこまで男子と関わることもなく。女子関係も苦手な私は、ただダンスができればよかった。

入部して半年経った頃、同じ学年で全然話したことのない男女グループが突然グループラインに

「練習会&交流会」
途中参加もOK、誰でもどのジャンルでもOK
気軽に参加待ってます

内気な私は交流を広げるチャンスだと思いながらも躊躇していた。最後まで迷って結局、"振り付けを考えないといけないから"という理由をつけて(これは本当だった)行ってみることにした。

遅れて行ったスタジオには既に8人くらいが集まっていた。といってもほぼその男女グループの人でアウェイな状態。
あ、来なきゃよかったなと一瞬思ったけど
すかさず空気を読んでくれた1人の男子が話しかけてくれた。
彼は大学に入ってブレイクダンスを始めたらしい。
体型が大きく、プーさんなどと呼ばれていた。

練習が終わってそのまま飲みにいくことになった。
私がそこにいるもの珍しさもあり、積極的に話してくれた。彼は場を回して誰も外れないように話をするのが上手だった。

私もどちらかと言えば姉御肌な性格で、酔った別の友人を介抱しながら、気付けば終電の時間になっていた。そんな時間に帰るのはほぼ初めての私。誰とも路線がかぶらず、1人で帰ることを彼はとても心配してくれた。同い年なのに。

1人で電車で乗っている時に、彼から初めてラインが来た。
"大丈夫だった?"
介抱していた友人のことかと思い、"改札まで送ったし、最後は正気だったから多分大丈夫!"と送った。

"違くて、〇〇は?無事に帰れた?"
"あ!帰れたよ!心配してくれてありがとう!"

私は自分がこんなに心配されることもあるんだなと不思議で、ちょっぴり嬉しかった。

ラインは続いた。学部の話、趣味の話、最近の課題の話、部活の話。気付けば君からの連絡を待つようになっていた。

何回か電話もした。
話が尽きなくて、朝まで話していたり
途中で寝落ちしたり。
忙しい中でもこの人となら、と思ったりもしていた。

明日一緒に帰ろう

君からいつもの電話で言われた。
直接会って離すのはほんとうに久しぶりで、緊張しながら電話を切った。


迎えた当日、君が緊張しているのが見てとれた。
誘ったくせに、全然話してくれないし。
君はわざわざ私の帰り方に合わせてくれたけど、わざと遠回りな道を選んだ。君は知らないと思うけどね。
駅に近づいても君は何も言ってこない。
駅から自宅までの電車は、全く反対方向だ。

このままでいいのか?自分に言い聞かせた。
私は今すぐにでも付き合いたいと、そう思っているのに。
隣にいるこの大きい男は何を考えているんだろう?
私と付き合いたいと、1ミリも思わないのだろうか?
駅の改札に入っても何も言われなかったら、私から言おう。そう頭の中で決めた矢先。

"まだ時間ある?"

"うん。夜バイト行かないとだけど、少しなら。"

君は駅の近くのカフェに目を向けてそう言った。


カフェに入って君が選んだ席は、ちょうど日が落ちるころの、照明の綺麗なテラス席。
私のために色々考えてくれていたのかななんて思ったりして。

やっと口を開いた君の、ぎこちなさと言ったら。

"…。電話とか、ラインしてたのが楽しくて"

彼が言葉に詰まった。

冷めかけたカフェオレに添えていた片手を、そっと握ってみる

"っ! 俺が幸せにするから、付き合ってください!!!"

やっと、想いが通じた瞬間だった。

"もちろんです。これからよろしくお願いします"




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