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太陽がまぶしいアルジェリアの料理を知るための10皿
「ここは地の果てアルジェリア」という歌詞の「カスバの女」という流行歌が昔あって、青江美奈という、かつて一世を風靡した歌手が歌っていた。
しかし、アルジェリアが「地の果て」というのは、恐ろしいほどの誤解だ。地中海のフランスの対岸。首都アルジェまでパリから飛行機で2時間ほど。かつてはローマ帝国の植民都市が繁栄した文明揺籃の地でもある。
19世紀から130年にわたり、フランスの植民地だったこともあって、フランスの影響も大きい。アルジェリアのワインのおいしさは折り紙付き。「異邦人」で知られるノーベル文学賞作家アルベール・カミュは、アルジェリア入植者の家に生まれたフランス人。「異邦人」には、支配者であるフランス人の視線からみたアルジェリア人も描かれている。
アルジェで生まれ育ったアルベール・カミュ、第二次大戦中、ドゴールらとの会談のためアルジェに行ったウィンストン・チャーチル。アルジェの旧サンジョルジュホテルのバーには、多数の宿泊者の肖像写真が飾られている pic.twitter.com/EA9hsoqOry
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) May 10, 2014
そんなアルジェリアの料理は、「自然の恵み」と「見た目の美しさ」を重視しながら、フランス料理の良さを取り入れた世界的にみてもユニークなものだ。
①彩りが美しいサラダ
トマトの「赤」、インゲン豆の「紫」。サラダをはじめとしたアルジェリア料理の色彩感覚にはとても驚いた。
地中海の青と、サハラ砂漠のカーキ色の国、アルジェリア。料理の彩りも鮮やかで、味わいにもエッジの立ったシャープさがある。130年間、フランス植民地になったことの影響が、アルジェリア料理をさらに高次元に引き上げたような。アルジェの高台に立つオラシーホテルのビュッフェにて。 pic.twitter.com/SsV1ebbEXF
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) July 9, 2018
②人参サラダ
フランス風ということでいうと、ニンジンを細切りにしたサラダは、アルジェリアでもよくみかけた。
アルジェリアの前菜。ほのかにフレンチ。130年、仏植民地だった北アフリカの大国。地中海を見下ろすアルジェのホテルにて。 pic.twitter.com/ABnKWymG65
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) August 7, 2016
③クスクス
北アフリカ諸国共通の料理で、今や世界じゅうに広まっているクスクス。ひきわり小麦粒に具だくさんのあつあつのソースをかけて食べる。
北アフリカの代表的料理クスクス。アルジェリアのものも、モロッコなどのものと見た目は大きな差はなし。写真は10人分ほどの大皿の羊肉クスクス。アルジェのとあるホテルであったレセプションにて pic.twitter.com/K3w1JoDuRp
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) April 17, 2014
④ナスのタジン
やはり、北アフリカの名物である「タジン」。アルジェリアにもさまざまなバリエーションがある。ナスとヒヨコ豆のタジンは、いかにも家庭料理的な素朴さがあった。
骨付き羊肉のうまみがナスに染み込んでいる。アルジェリア名物、ナスのタジン。アルジェのアルジェリア料理店「ジェニーナ」で pic.twitter.com/NPnShmPffc
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) April 16, 2014
ちなみに、アルジェリアで売られていたタジン用の鍋はどれもすばらしかった。この辺にもアルジェリアの人々の美的センスを感じた。
アルジェリア土産のタジン鍋とマグカップ。少数民族ベルベル人特有の文様が描かれている。アルジェリア北部のベルベル人の街アザズガやアルジェ市内の土産物店で購入 pic.twitter.com/RKZuVaLRLf
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) April 29, 2014
⑤羊レバーのシチュー
これもフランス風といえばフランス風なのだろう。羊の臓物を使う、というところはアルジェリア(アラブ)的かもしれない。ドミグラスソースがびっくりするほどおいしかった。
羊レバーの煮込み。ドミグラスソースみたいだった。アルジェリア料理は煮込みが多い印象だが、どれもおいしかった。アルジェのホテル「オラシー」内レストランで pic.twitter.com/l7NH8Q96uK
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) April 20, 2014
⑥エビのトマト煮込み
地中海に面しているだけに、魚料理もよく食べる。首都アルジェには、魚介類専門のちいさなビストロ風の店がいくつもあった。
地中海のエビのトマトソース煮。ミソがたっぷりでうまみも半端じゃない。アルジェのベンアクヌーン地区にある海鮮食堂「シュラグラグ」で pic.twitter.com/B89RNaHMjA
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) April 17, 2014
⑦タコの足のみじん切り
アルジェのビストロで、想像もしない一皿が出てきて驚いたのが、このタコ足のみじん切りの前菜。
こんな前菜は初めて。ゆでだこのみじん切り。レモンを絞って。プリプリ感はないけど、間違いなく蛸。アルジェリアの首都アルジェのベンアクヌーン地区の大衆レストラン「シュラグラグ」で pic.twitter.com/TqbTsW5v2Q
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) April 17, 2014
⑧ベルベル風牛煮込み
アルジェリアの食で忘れてはならないのは、北アフリカの先住民であるベルベル人が多く暮らすカビリ地方の料理。地中海にせり出すような山岳地帯で、特に牛肉が有名らしく、野趣あふれる味が楽しめた。
アルジェリアの先住民ベルベル人の一派カビリア人が暮らす北部アザズガのレストランで食べた牛肉の煮込み料理。アルジェリアには煮込み系の料理が多かった pic.twitter.com/jg2FGluJ6q
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) April 24, 2014
⑨ベルベル式牛串焼き
牛のいろいろな部位の串焼きも、忘れられない味。はねかえされるような歯ごたえの肉を必死でかんでいると、じわじわと滋味が感じられてくる。
牛肉が特産というアルジェリア東部カビリ地方で子牛の串焼き。レアとウェルダンがほどよく混じっている。かなり満腹に。カビリ地方アザズガのレストラン「ジャベッラ」で pic.twitter.com/XdudT8hBYD
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) April 20, 2014
⑩バゲット
最後は、いまやアルジェリアの食文化にはなくてはならないパン。バゲット。これを最後に挙げるのは、いかがなものか、という声があることも承知しているが、アルジェリアのバゲットのおいしさは、アルジェリアの食文化の豊かさを示すという意味でも、指摘するべき食べ物だ。
アルジェのホテルの朝食にあったバゲット。1962年までフランス植民地だっただけあって本格的。中の柔らかい部分をちぎって残す人が多いのに驚いたが、柔らかいところを好むのは、日本など米食文化の人たちだけなのかもしれない pic.twitter.com/kyv4Yj4kYJ
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) May 8, 2014
アルジェリアでは、4月に大統領選挙が予定されていた。しかし、脳梗塞で倒れ、前回の4年前の大統領選挙では一度も公に姿を現さずに当選を決めたブーテフリカ大統領が、今回も5選を目指すことに国民の怒りが爆発した。抗議デモが高まりを見せる中、3月11日、政府はブーテフリカ氏の大統領選不出馬と選挙の延期を発表した。
The Arab Spring is alive and kicking in Algeria 🇩🇿!
— Rula Jebreal (@rulajebreal) March 11, 2019
Algeria President Bouteflika pulls out of race for 5th term & pospone elections.
After weeks of protests, finally, the army withdrew its support, forcing the 92 year old ruler to give up.
The future of Algeria opens up. pic.twitter.com/PA9RQSTYYH
「『アラブの春』は死んでいない! アルジェリアで今、始まった」などの声も聞かれる。日本ではあまりなじみのないことも事実だが、アルジェリアは、歴史や文化だけでなく、現代世界史的な観点でも目が離せない国なのだ。
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