ZINEフェス東京の振り返り(2025.1.11開催)
東京・浅草の東京都立産業貿易センター 台東館で開かれた「ZINEフェス東京(ZINE FEST TOKYO)」に出展してきた。
吉祥寺でシェア型書店「ブックマンション」を経営する中西功さんが2021年3月に吉祥寺パルコの屋上で始めたイベントは、どんどん規模が拡大し、今回は、500組700名のZINE作家が参加。東京都立産業貿易センター 台東館の2フロアーを使った会場が多彩なZINEブースで埋まった。
カフェバグダッドはZINEフェスに、一昨年秋に吉祥寺の武蔵野公会堂で開催された回から何度か参加している。自分としては、「文学フリマ」「おもしろ同人誌バザール」と並び「三大ZINE即売イベント」という位置づけになってきた。出展者・来場者に関し、それぞれに特徴があるのがとても興味深い。
ここでは、今回の印象記を中心にしながら、他のイベントとも比較もしてみたい。
【早い立ち上がり】
まず驚いたのが、イベント参加者のモチベーションの高さ。文学フリマに参加するときにメドにしていたのは、一時間前の会場入り。それにならおうと思い、浅草で朝食を食べ、朝から参詣客でにぎわう仲見世や浅草寺境内をぶらぶらしていたが、「もう会場空いてるんだったら、行こうかな」と思いついて開始1時間半前の午前10時半に会場に行ったところ、すでに半数ぐらいの出展者が設営を始めていた。
これほど早い立ち上がりのイベントは初めてだった。
こちらはなんとなくだったものの、早く会場入りしたおかげで、午前11時には設営が終わり、開始前の小一時間で、すでに設営完了しているところも多かった他のブースをそれなりに回ることができた。
【豊かな国際色】
まず印象的だったのは、出展者、来場者ともに国際色が豊かだったこと。例えば、私の隣の隣のブースにいたガリさんは、スペイン北部バスク地方出身のバスク人。東京外大でバスク語も教えている方だという。
やはり同じフロアの6階で「Zashi Magazine」というZINEを出品していた米ニューヨーク・ブルックリン生まれの米国人の方。ゴミ問題など日本社会の実態を写真ですくいとろうという「PHOTO ZINE」。話を聞くと、米国では、写真を中心として文字はあまり使わないスタイルがZINEの主流だそうで、日米のZINEカルチャーの違いというものを実感する。「ZINEフェス」の出品者は、どちらかというと、米国流に寄った「アートブック志向」の人が多い印象だった。
また外国の方で「ZINE」を「ザイン」と発音する方が多かったことに新鮮な驚きがあった。日本では「ジン」と発音する人が多いと思う。
【ユニークすぎるフォトジン】
自分では考えもつかない発想でZINEを作っている人も多く、驚きや学びがあった。例えば、この曲樹(Magaligi)さんの作品。
なんとなくのぞいてみたが、ブースの看板をみただけではどんな作品なのかまったくわからなかったが、曲樹さんが丁寧に説明してくれて、そのユニークさをじわじわと感じた。
作品は、「匂わせ写真」を生成AIを使って創造した写真集。
「匂わせ写真」という言葉、耳にしたことはあり、なんとなく知っていた。作品は、不倫をにおわせる写真の連作で、ひとつのストーリーになっているのだという。
曲樹さんは脚本家でもあるそうで、一見地味と思えたなZINEにあるとんがった時代性を感じた。
【他のイベントとの比較】
文芸作品が中核の「文学フリマ」、「情報系同人誌」というカテゴリーを提唱している「おもしろ同人誌バザール」、そして今回の「ZINEフェス」と、これまで参加していた即売イベントそれぞれに特徴があるのが面白い。やや強引にキャッチフレーズをつけるとしたら、
・文学フリマ→テキスト重視の創作系
・おもしろ同人誌バザール→深掘りして情報集約
・ZINEフェス→センス重視のアートブック志向
といった感じただろうか。来場者も、本人たちが意識しているかしていないかは分からないところはあるが、それぞれの志向を好む人が訪れているはず。
こうした潮流の違いを考えて、意識していくことは、今後のザイン作りにとっても欠かせないな、と感じたのだった。
最後になってしまったが、カフェバグダッドが今回販売したのは、「日本で食べられる中東料理ガイドブック」など。
ラインナップは以下のboothオンラインストアで確認できる。
送料が210円で購入が可能なので、関心がある方はチェックしてもらえたら。昨日、イベント会場においでいただいた方々、購入いただいた方々には、厚く御礼申し上げたい。