「イデミ スギノ」杉野英実シェフが映像化プロジェクトで伝えたいこと
「杉野さんのお菓子づくりを映像で残しませんか」。
柴田書店から映像化の話があった時、これまで自分が学んできた技術や考え方を知っていただくよい機会だと思うと同時に、どんなお菓子を紹介したらいいかと悩みました。
これまで僕の本では紹介していないものを、とも考えましたが、2017年に出版した『進化する菓子』は僕の集大成。載っているのはどれもスペシャリテですし、すでに多くのパティシエにも手にとってもらっています。
読んだ方から「本のようにつくってみたのですが」と聞かれた経験もあり、みなさんの理解がさらに深まればと、この本の中から焼き菓子、マカロン、生菓子を12アイテム選びました。
マドレーヌにフィナンシェ、バレンタインの時期につくっていたショコラのマカロン、僕の代名詞であるムース……どれも「イデミ スギノ」の代表的なお菓子です。
フィナンシェ生地とダコワーズ生地を重ねて焼き上げた「ノワゼッティン」や、完成までに10年の歳月を要したイチジクのムース「フィグフィグ」など、他にないオリジナルのお菓子づくりも披露。この12品で生地やクリーム、ガナッシュ、ムースなどさまざまなバリエーションが身につくラインアップになっています。
撮影時は、僕がやってきたお菓子づくりをそのまま見てもらおうと、「イデミ スギノ」の仕事を忠実に再現しました。材料の下準備、それこそフルーツやナッツを1個ずつ選別するところから、ブーレ(型にバターをぬる)や型の準備、キャラメルをどこまで焦がすか、ムースを最後クレーム・フェテと合わせる時にどこまで混ぜるか、混ぜないか。映像だと一目瞭然です。
また、映像を見た方に「作業がきれいで早い」と驚かれるのですが、早くしないとおいしいお菓子はできません。いい状態は一瞬です。ムースだって素早く作業しないと気泡がつぶれて死んでしまう。僕がムースを仕込む前に、ビスキュイのシュミゼからすべて準備を済ませておくのは、ムースのベストな状態を逃さないため。
テクニックはもちろん、こうした段取りやスピードにも注目してもらいたいですね。
本や映像を見た方が、SNSなどで僕のお菓子をつくっているのを見かけると嬉しくなります。いずれは僕のレシピやテクニックを使い、みなさんらしいお菓子をつくってもらえたら嬉しいですが、最初はまず、本や動画と同じようにつくってみてください。お菓子は、きっちりつくることでわかることがあります。
今回映像化してよかったと感じたのは、映像は気になるところを何度も巻き戻して見ることができる点。
繰り返し見て、ぜひおいしくつくるコツをつかんでください。
昨年パティシエ人生50年を迎えました。ありがたいことに今も「杉野さん、またお店をやってほしい」とたくさん言っていただきます。僕の中には、お店をやっていた当時からアイデアはあるのに、忙しさに追われてまだ形になっていないお菓子がたくさんあります。今後はそういうものにも取り組みたいですし、今だからできることに挑戦していきたい。この映像企画もそんなチャレンジのひとつです。このプロジェクトが、お菓子をつくる人たちの一助になれば幸いです。
☆インスタライブ開催決定!
2024年4月18日(木)20時ごろより、インスタライブを開催します。
映像プロジェクトのお話を中心に、ライブ中に寄せられた質問にもお答えできたらと考えています。
【配信アカウント】
杉野シェフのアカウント @suginohidemi
カフェ-スイーツのアカウント @cafesweets_shibata
2つのアカウントから同時配信予定!