【ケーススタディ】介護事業所のリーダーから自分の部下を昇格させたいと相談があった場合の対処方法
株式会社カチカです。弊社は、介護業界の1on1面談の導入支援や定着支援をさせて頂いております。
先日、とある介護の会社さんで人事評価制度の研修を行った際に、最後に、少し質問よろしいでしょうかということを言われました。
部下を昇格させたい
その方は、50名程度のスタッフが働いている有料老人ホームのリーダーの方で、自分の部下を昇格させたいという話でした。
この会社では、一般職の中にS-1とS-2というグレードがあり、S-1からS-2に昇格するには2期連続でA評価を取る必要があります。(評価はS、A、B、C、Dがある。)
話を聞いてみると、その方は前期B評価だったとのことでした。
ルールに則ると、昇格は難しいということをお伝えしました。
ただし、私が気になったのは、なぜそこまでリーダーが部下の昇格にこだわるかという理由でした。
話を聞いてみると、フロアが1階、2階、3階に分かれており、1階は、その部下の方とパートの方のみでフロアを回しており、その対象者が実質的にフロアリーダーの役割も担っている。だから、その方はS-1ではなくて、S-2に昇格するべきだと言う理由でした。
その話を聞いた私は、人事評価制度のルールでは、S-1からS-2に昇格するためには、2期連続でA評価を取る必要がありますが、フロアリーダーであるL-1やサブリーダーのS-3に昇格するためには、2期連続でA評価以上を取るというルールはありませんとお伝えしました。
と言いますのも、フロアリーダーは事業所を運営する上で必要なポジションですので、入社間もないS-1の方に、場合によっては担っていただく必要があるからです。
私は、そのリーダーに、今の話を聞く限りでは、その部下の方は、S-1からS-3ないし、L-1に上がれる可能性があるのではないでしょうかと伝えました。
部下を昇格させたい時に上司ができること
ただし、あくまでも上がれる可能性ということなので、まずリーダーであるあなた自身がやらなきゃいけないことは、上司もしくは施設長に、自分の部下が実質的にフロアリーダーを担っており、グレードは、S-1ではなく、S-3ないしL-1であるべきだということを、理由とともに伝えることですと伝えました。
上司が、確かにあなたの部下は実質的にフロアリーダーを担ってくれているので、S-3かL-1に役職が上がるべきだというふうに言ってくれたとしたら、いつ上がれる可能性があるのかということを確認してください。
逆に、上司が、私はそうは思わないということであれば、その理由を聞いてください。
もしかすると上司自身が、S-1から、S-3やL-1に上がる条件を忘れてしまっている可能性があるので、会社のルールとしては、ポジションが必要であればS-1からS-3やL-1に上がる可能性はありますということを、会社に確認しましたということを伝えて下さい。
その上で、上司には、部下の方のどういった点が、フロアリーダーとして足りないのかをしっかりと確認して下さい。
逆に、どうなれば、会社に推薦してもらえるのかを聞いてください。その理由に、リーダーのあなた自身が反論できるようであれば、ディスカッションをするべきだと思いますし、リーダーのあなた自身が、たしかに、そういう側面もあるなと思われるのであれば、それは部下の方に伝えるべきです。
リーダーの自分としては、あなた(部下)は、実質的に1階のフロアリーダーを担ってくれているので、上の役職に上がるべきだというふうに、上司に推薦しました。ただし、上司としては、ここの部分がまたリーダーないし、S-3のレベルからすると足りていないので、会社に推薦することは難しいという風に言われました。
私はあなたに昇格してもらいたいという風に思っているので、施設長や上司から指摘を受けた部分について、意識し、改善していきませんか。
そうすることで、あなたを上の役職に引き上げることができます。
私はそういう風にしたいと思っているので、一緒に頑張っていきませんか。
リーダーは、こんな風に部下の方と向き合っていただきたいと思います。
頑張る部下のことを、会社や上司に対してきちっとPRする。このこと自体は、とても素晴らしいことだと思います。
ただ、会社には、人事評価制度というルールがあり、そのルールの中で、会社や上司とすり合わせをしながら、部下のことを認めてもらえるようにするスキルを身につけていただきたいと思います。
こうした内容をリーダーに対して回答したところ、最初は納得がいってない様子でしたが、自分自身がやれることがあるということを理解してくれた時に、ちょっと挑戦してみます上司に相談してみますというふうに言ってくれました。
人事評価制度と上司の役割
会社の人事評価制度がルールとして決まっているからこそ、皆さんが、ある程度評価結果や昇格結果に納得していただいているとわけです。
実際この会社では、2期連続をAを取ったS-1の方が15名ぐらいいらっしゃり、全員S-2に昇給してます。
従業員は、人事評価制度というルールをまずはきちんと理解する。その中で、自分の部下を昇格させたいとか、昇給させたいということであれば、どこの部分をより改善していかなければならないのか、人事評価制度の中の何の点数が低いのかを分析する。こうしたことを、上司と部下との間で1on1面談などを通じて実施していかなければなりません。
今回の出来事を通じて、私自身は、こうした気概を持ったリーダーがいる会社は素晴らしいなと感じました。部下ががんばっているから、上の役職に引き上げたい、リーダーとして、本当に素晴らしい行動だと思います。
ただし、会社にはルールがあります。引き上げる為には、上司→施設長→マネージャー→部長→役員 という流れを経ないといけません。
こうした、ことを理解した上で、どうしたら部下を昇格させることができるのか、これを考え行動できるリーダーが一人でも多く出てくると、この会社は、より強くなると感じました。
リーダーが人事評価制度を理解し、部下との関係性の強化やマネジメントに活かしていただく、これが、株式会社カチカがコンサルティングに入らせていただく一つの価値です。
こうしたリーダーがいるというエピソードを伝えていくことで、他のリーダーにも火がつくのではないか。こうしたことも、私たち外部の人事評価コンサルタントの役割であると感じたワンシーンでした。
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