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スタンダップコメディはもしかしたら一番身近な自己表現なのかもしれない。
※団体等は関係なく個人の所感です。
インコさんのスタンダップコメディ、「おはようインコさん」シリーズに参加し始めて、3年近くが経とうとしている。
そして、今、日本スタンダップコメディ協会という団体に関わらせていただいている。
その初めての公演が下北沢で行われた。公演を見ていて、個人的に「スタンダップコメディの魅力」について初回公演について
レポート的に書いてみたので、少しでも多くの方に興味を持っていただければと思う。正直、このスタンダップコメディというジャンルについては国内では認知度が低い。
知人を誘っても「何それ?」で終わることが多い。
「映画ジョーカーで主人公のアーサーがなりたかったあのシーンの職業だよ!」と今年のトレンドに合わせて伝えてみるものの、いまいち「漫談?」「フリートーク?」と言われ、その面白さの真髄に気がついてくれる人はまだまだ少ない。
日本スタンダップコメディ協会が本多劇場グループ協力の下開催された『年忘れ!スタンダップコメディ・ネクストFes.』。
初日の出演は昼の部がぜんじろう、居島一平、藤田記子、ウエストランド井口、清水宏。
今回はこのフェスの初回をレポートすることで、スタンダップコメディの楽しみ方。を感じ取って欲しい。
冒頭の日本スタンダップコメディ協会会長、清水宏の挨拶で「左から右まで(思想)差し障りなく笑うのがスタンダップコメディです。」との観客への挨拶で、このジャンルが多様性の価値観を知的に楽しむものであると観客に教えてくれる。
そう。スタンダップコメディとは、プレスリリースにもあったが、
【世間の気になる大きな話題から、個性豊かなスタンダップコメディアン達がそれぞれ見つけた小さなニュースまでを各自の視点から笑いに変えるもの】
聴衆の皆様には「わかる!」と頷く場面も、「そんな見方があったのか!」と意外な視点からの発見をスタンダップコメディアン達の話の技術がが単なる「世の中の愚痴」や、「悪口」ではなく、きちんとした「話芸」に変えてくれ、1つのエンターテインメントとして成立している。それがフリートークや漫談との大きな違いだとも僕は思っている。
オープニングを飾るのは、清水宏とともに協会を立ち上げた、副会長のぜんじろう。
冒頭で自身が51歳になって経験した実家での体験や、所属する吉本興業の事情で観客の興味を一気に観客の感情を彼自身の声へと集中させる。
自らの手で世界を公演して歩いている彼ならではの価値観でホテル選びを題材に心配性や貧乏性と贅沢したい気持ちを持っていると、
自己紹介的に観客の興味を彼の内面へと引っ込んでいく。
観客の集中と、彼の内面を伝え、場が整ったところで彼自身の海外体験の話題に。日本では高級な料理として認知されているフランス料理。それを彼が公演で訪れた現地フランスで入ったレストランでの出来事。
フランスという外の地で彼は心配しながら高級そうなフランス料理を頼んでいく。隣のテーブルでは、現地のおじさんがフランス料理を堪能している。
心配性のぜんじろうは、差し出されるがままの1つ1つの料理を値段への不安と闘いながらコース料理を体験していく。
そしていざ、ボーイから出された金額を確認すると・・・「想像よりも余裕で安かった!」。心配しながらコース料理を食べていた自分自身の性格で
損してしまったかもしれない時間を後悔しながら隣を見ると・・・現地フランス人のおじさんも不安そうに値段を見ていた!という話。
続く2番手は、漫才コンビ、米粒写経でも活動する、居島一平。
いわゆる「右寄りの考え方」として知られている彼自身の価値観から、
「自分たちが生活している日本とは?」を考えさせてくれる20分。今年の最大の話題の1つであったラグビー日本代表の「桜」から世間を騒がせている
「桜を見る会」に参加経験のある自分自身の価値観で「左翼・右翼の見分け方」というフリップトークで随所に笑いを挟み込んでくれる。
3番手はスタンダップコメディ初挑戦の劇団カムカムミキニーナ所属女優、藤田記子。「埼玉県川越市での40代〜60代の死体発見」事件の報道への違和感。
それは、いわゆる「歳を重ねている」という世間の価値観の枠組みに対して、現在40代の彼女からのアンチテーゼ。
そもそも、「40〜60代」は同じ世代ではないはずなのに、なぜ一括りにされるのか。自身のウィークポイントや身体のケア体験を例にしてこの違和感を観客に伝えていく。
観客にその違和感が伝わったところで、自身の年齢に近くこの世を去った実の父親の話題に。
家庭を顧みずに死んでいった父親の数々の行為が最終的に自分を演劇の道へと誘い込んだ過去の出来事。
そこから自身の恋愛観を語り、「40代の女性」の生きている現実を笑いあるエピソードと共に観客に伝えることで、冒頭のニュースの報道の違和感を圧倒的なリアリティで観客に浸透させていく。
4番手はウエストランド井口。
「技術が進化している世の中。実は便利ではなく、複雑になっているのでは?」という矛盾、本末転倒感を誰もが知っているコンビニエンスストアや電車を例に笑いに変えていく。そしてその矛盾の矛先は、「人間」へと話題が進む。
居酒屋でアルバイトをしていた彼は、遭遇してきた数々の「迷惑なお客さん」を例に、したエピソードを語り出す。
そもそも、「お酒が入ること」で気分が大きくなった人の迷惑行為のエピソードを「居酒屋で働く店員の視点」から観客の中に持っている「あるある」へと変えていく。
酔っ払った客が「偉そうに振舞っていた」としても、店員である彼からしたら「社会の一人」でしかない。という価値観を観客に伝えることで、
「自分の価値観は相手にとっては意味のない記号かもしれない」との気づきを与えてくれた。
そしてトリを飾るのは会長、清水宏。
今回彼が語るのは、「人間の階級と表現の矛盾」。公開中の話題の映画、「スターウォーズ・スカイウォーカーの夜明け」で繰り広げられる
エピソードで(ネタバレがあるのでここまで!)人間の階級について観客に実感させる。そして、自分たちが生きている民主主義と言われているこの国でも実は階級が存在している社会矛盾の話題に。
実は、競馬のテレビCMが、楽しそうにギャンブルを楽しんでいるイメージを与えていたとしても、実際に夢中になっている層の人間の暮らしに照らし合わせると、華やかなものではない現実があるのではないか?
と、「現実の競馬に夢中な層」へと登場人物を変換したテレビCMを実演することで矛盾を笑いに変えながら観客に伝えきる。
つまりは自分たちが普段、当たり前のようにメディアから受け止めている広告って本当に正しい表現なのか?自分たちで考え直してみるきっかけにもなっていた。
世界がどんなに広くても、人の不安や価値観は同じ場合もあるし、目の前の出来事を自らの捉え方次第で楽しむことも楽しめないこともあると
自分自身の活動体験から語ったぜんじろう。
自身の価値観や立場から世の中の思想の違いをそれぞれの立ち位置を尊重しつつ語ってくれた居島一平。
過去体験から今の自分の社会の価値観を語り、観客自身の自分の過去から考え直させてくれるきっかけをくれた藤田記子。
誰もが毎日の中で感じている「小さな矛盾」を共感させながら、世の中の本末転倒感を教えてくれたウエストランド井口。
平等に見える世界でも、現実はそう綺麗事ではないと実演しつつ笑いながら気がつかせてくれた清水宏。
たった5人のそれぞれ20分の持ち時間の中でも、社会に対する風景の印象は大きく変わる。
あくまで、初日初回のレポートであったが、夜の部に出演されたたかまつななさんの考察記事に「なるほどな!」と感じた。
ではなぜ、この記事にあるように、「経済的にも国際的にも政治的にも流暢なことを言えなくなっていると私は感じている」のだろうか。
SNSを見ていると、「誰かに褒められるための表現」を必死に考えて、「誰かにいいねと評価されるため」の大喜利大会が繰り返されている。
それを見ているのは正直、辛くて、「自分もそうしなければならないのかな?」と巻き込まれることでさえある。
そして、自分と違う意見の人に対しては、匿名などで、一生会うこともないまま反対意見を重ねていく。はっきり言って、この風潮が気持ち悪い。
しかし、スタンダップコメディは、板の上でマイクの前に立つ権利を得た段階で、全てが平等になる。そして、「自分のフィルターを通した世の中への指摘」を、伝えることができる。
僕はこのジャンルに出会うことができて、本当に気が楽になった。
自分らしさをファッションやジェンダーを含める表現に対して社会が寛容になってきているのであれば、このスタンダップコメディというジャンルは、この国ではもしかしたらもっともっと拡大していくジャンルの可能性がある。本当はみんな「言いたい!」んだと思う。それが表立っていうことが難しいので、匿名できちんとした形ではなく誤解されるような表現で「言ってしまう」のではないかとも考えている。
同じ出来事の中で生活しているはずの毎日でも、育った環境や立場、視点が違うだけでこんなにも彩りがある世界に生きていると、スタンダップコメディというジャンルは教えてくれる。
きっと、何気ない毎日を過ごしている人たちが触れることによって、新しい視点や気づきが与えられることは、それからの毎日を生きていくための肥やしになるのでは!?と無限の可能性を感じている。
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年末、12/31にはこのフェスの最後の2公演が行われる。
場所は、下北沢小劇場楽園。
12時から開始の部には
レ•ロマネスクTOBI、ヤノミ、かもめんたる槙尾、中津川弦、ぜんじろう。
16時から開始の部には
コラアゲンはいごうまん、長井秀和、与座よしあき、インコさん、清水宏、永田正行
※各公演ともに当日券の販売が行われます。詳しくは
Twitterのハッシュタグ、#スタコメ もしくは公式アカウントにて。
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そして、年明けの1/6には新宿紀伊国屋ホールにて、新年最初の公演が開催される。
2020年1月6日
『笑門!スタンダップコメディ五福星』
新宿 紀伊國屋ホール 18:30開演
出演:松村邦洋/茂木健一郎/中村 中/ぜんじろう/清水宏
予約
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