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言語の壁高きチャイナ(入国編)
中国語は你好、謝謝しか知らない。あ、ウォーアイニー(=愛してる)も分かる。でも本当にそれだけである。
↑前回(別に読まなくても楽しめますが読んだ方がもっと楽しめます。知らんけど)。
*
中華人民共和国は福州、福州長楽国際空港に到着したのは日が沈んだ19時過ぎを回った頃だった。
至る所に漢字。そこに平仮名も片仮名もない。全てが漢字で表されていることが中国に来たことを実感させる。
とはいえ英語表記の看板があるから、入国審査まで迷うことなく進めた。まあクアラルンプールやバンコクのスワンナプーム国際空港と比べたら小さな空港なので、入国審査と思われる場所までは飛行機を降りてからものの5分くらいで着いた。
「No photograhy」
ピクトグラムなんてものはなく、英語でただそれだけ書かれた標識があった。ここで写真を撮ったらどうなるのだろう。速攻で逮捕になるのだろうか。フォトグラフィーを読めずに撮影した外国人観光客は懲役何年になるのだろう。
外国人と中国人とで列が分かれる。外国人は氏名や生年月日、旅券番号、入国の目的など諸々と紙に記述しなくてはならないようで、僕もそこに英語で記述していく。
今まで数々の——といってもそんな大したことはないけれど、いくらか入国書を書いたことがあるが、名前の下に「もし中国語名があれば」と英語で書かれているところにはお国柄を感じた。世界にはたくさんの中華系の人々が存在するから、こういう記載もあるわけだ。現に入国審査で僕の前にいた女性は見るからにアジア人の装いであったが、彼女が手にするパスポートの表紙には「CANADA」と書かれていた。
入国審査前はどこの空港でも多少なりとも緊張するが、この国の審査は変な汗をかく。でも、幸い成田空港発に搭乗したこともあり何人かの日本人が搭乗しており、僕が並ぶ前後から日本語が聞こえてきたから少しは安心する。母国語が持つ力というのは凄まじい。
僕にその順番が回ってきたのは並び始めてから約10分後のことである。列は然程長くないのだが、この国は一人に対する審査時間が長すぎる。それほど厳重なのだろう。
僕は航空券と先程記入した紙をパスポートに挟んで審査官に手渡した。審査官の制服の左肩には「公安」の刺繍があった。警察官なんでしょう。
「ハロー!」
入国審査で気をつけていることは、できるだけ明るい雰囲気を醸しだすことである。まあ今までは日本のパスポートというだけで一瞬で通ることが多かったが。
今回もなるべく笑顔をつくって審査に臨む。
審査官のおじさんが僕のパスポートをじっくり見ている。ページをすごいスピードでめくる。彼は不服そうな表情で首をかしげ、超絶早口の中国語で僕に何かを告げる。
「○☆△◇×????」
いや分からんわ。僕は前述の通り、你好、謝謝、ウォーアイニーしか知らないのだから。
「スピークイングリッシュプリーズ?」
「○☆△◇×????」
だめだコイツ。世界の共通語は英語じゃなかったのかよ。
「は?アイキャントスピークチャイニーズ」
「……ビザ!!」
入国にビザが必要だが、お前はビザがないと言いたいんだな。
「トランジット。アイウィルゴートゥーバンコクトゥモロー。ソー、アイドントハブビザ!」
僕はカタコトの英語で、彼に伝わるようにゆっくりと話す。すると審査官はパスポートを僕に返却し、向こうへ行けと指差した。
彼の指差す方向を見ると、制服を着た女性が僕に近づいて来て、こっちに来いと手招きをしてきた。
「アーユートランジット?」
「イエス」
僕はやっと英語が通じそうな人に出会えたことにほっとした。彼女の後をついていく。
え、これ別室に移動させられるのか??
そう思うと急に心臓の鼓動が早くなる。
僕が移動した先は審査場の手前、並んでいた場所の真後ろで、別室は外国人でいっぱいになっていたからか、僕はその外にある簡易的な机の前にあるパイプ椅子に座らされ、先程とは違う紙を書かされた。英語の通じる中国人の彼女によると、一時入国に必要な書類らしい。
それから彼女は「パスポートプリーズ」と言ってきたので僕は彼女にパスポートを渡すと無言で何処かへ消えていった。その間に一時入国書を書けということだな。
なんだよまた書くのかよだるいなあ、と思ったがそんなことを言ったら「なら懲役でいいのよ」となりそうだったので大人しくその紙に情報を記入していく。
一時入国書を書かされているのは僕だけではなく、先程僕の前に並んでいた日本人夫婦もいた。何か嫌だったのは若い男性の警備員が記入している僕の姿を後ろからじっと見ていることである。テスト中に巡回してくる先生が永遠と自分の解答用紙を覗き込んでくるような感覚だ。
僕が書き進めていると、何か不備があるのかその男性警備員が僕に声をかけてきた。中国語なので何を言っているか分からないが、指を指された場所が国籍のところでそこが空白になっていたのだ。
「あ、サンキュー」
国籍にJAPANESEと書く。これでいいね。
僕は彼に紙を見せると、まだ不備があったらしく、明日のフライトのチケットを見せろと言われ僕はあらかじめスクリーンショットをしておいたeボーディングパスを見せた。
すると彼は嫌な顔ひとつせずに、それを見ながら代理で記入してくれた。やるじゃん中国。もしかしてオモテナシの国なのか!?
「オーケー!」
彼は笑顔で僕にそう言うと、そのタイミングで僕のパスポートを手にした女性警備員からパスポートが帰ってきた。
もう一度並んでと二人の警備員に言われ、再び審査が始まる。
先程書いた一時入国書とパスポートを審査官に渡した。一度目の審査官と同じ人だった。
彼はまたパスポートをペラペラとめくる。首を傾げている。ん??デジャブのように見えなくもない。
「トランジット?」
「イエス」
彼は再びパスポートをめくってはそこにあるべき何かを探している。
「あー」
彼が呟く。どうやら一時入国に必要なスタンプがあったようで彼はそこにスタンプを押した。
「オーケー」
無表情でパスポートが返却される。これでようやく入国だああ!!別に嬉しくはないけれど。
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その後、ベルトコンベアから運ばれてきたスーツケースを取って外へ向かう。外に出る前にもセキュリティーゲートのようなものがあり、背負っていたリュックをゲートに通してようやく外に出ることができた。
ほんまにだるいなこの国は。いやこれが普通なのか??
その後、厦門航空のトランジットホテルを予約しにそのカウンターを探した。簡単に分かるとnoteの記事には書かれていたが、正直迷いました。が、先程まで一緒に入国審査で並んでいた外国人たちが一同に並ぶ場所があったのでここしかないやろ!と思考停止で並ぶ。
前の外国人たちを観察していたが、やはりトランジットホテルの受付で間違いないようだ。生憎、日本人はその列に僕しかいなかった。
僕の番が回ってくる。
「キャナイステイトランジットホテル?」
航空券とパスポートを私服の若い中国男性の受付に手渡しながら言った。
「オーケー。○☆△◇×?」
「は?」
彼はスマホに何かを呟き、その画面を見せてきた。そこには一人部屋と二人部屋どちらにするかと英語で書かれていた。一人部屋だと別途3,000円くらいかかることは事前に情報として仕入れていたが、その翻訳されたスマホの画面にも一人部屋は有料であると記載があった。
二人部屋にすれば無料になる代わりにランダムで選ばれた人間と部屋を共有することになる。
割に大金を持っていたし、パソコンもiPadも鞄に入っているので迷わず「シングルルーム」と言って一人部屋を選択した。あと単純に知らんオッサンと一緒に寝たくないし。
彼はまたスマホに何かを話して僕に画面を見せる。支払いはホテルで、それから無料のシャトルバスがエスカレーターを上がった先の出口から出ているとのことであった。
「アップステアー?」
英語表記なので読み違いがあったら嫌だと思って簡単に英語で確認する。彼は頷いている
から間違いないだろう。僕は彼から手渡されたホテル名やバーコード、僕の名前が記載されているA4サイズの紙を受け取ってエスカレーターに乗る。
登りきった先の右手に出口があったので外へ出る。辺りは夜ということもあり暗く、目の前には港。その港に大きなクレーンがあった。どうやらここは空港の他に何か特別なものはないみたいで、街灯も何も見受けられない。
福州は台北と緯度が然程変わらないが、クリスマスの時期ということもあり寒い。気温は7度くらいだろうか。
外には男女問わず中国人が至る所で喫煙をしていた。ちなみにめっちゃタバコ臭い。喫煙所という概念がこの国にはないのだろう。10メートル感覚で灰皿のようなものが置かれている。
ここへ本当にシャトルバスが来るのだろうか、と思ったが、先程前に並んでいた外国人が一同に待ちあぐねているから間違いない。そのうちの一人、インドネシア人の布を頭に巻いた若い女性が僕に日本語で話しかけてきた。
「トランジットホテルですか?」
とても流暢な日本語である。
「はい!ピックアップポイントはここでいいんですよね?」
「たぶんあってます。あなたのホテルはどこですか?」
彼女は丁寧に言葉をひとつひとつ選択していくように話す。
「なんか読めないですけど、とりあえずここです」
日本では見たことのない、「森」における「木」が「金」に変わった漢字だったので、読める訳がない。とりあえず受付で貰った紙に記載されているホテル名を見せた。
「ワタシも一緒です」
「あ、そうなんですね〜よかった。ていうか日本語上手ですね」
そこからは異国の地で外国人と母国語を話すというよく分からんことをしていた。短い時間ではあったが、楽しい国際交流の時間だった。
インドネシア人の彼女とホテルは同じだったが、シャトルバスは僕が思っていたようなバスではなく割りに小さなミニバンが2台ということもあって、彼女とは違う車に乗ることになってしまった。
ドライバーにスーツケースをトランクに詰め込んでもらい、ミニバンに乗り込むと車はすぐに発車した。乗車人数は僕とドライバーを含めて6人だけで、まだ3人くらいは乗れそうであったが待たずしてエンジンが動き出す。ちなみに僕以外全員中国人だった。
おそらく一般道だろう。しかし車はすごいスピードで進んでいく。あたりは暗いからよく分からないが、大きなホテルが軒を連ねているがそれ以外に何があるかと言われれば何もなく、殺風景である。道は直線的で、車もそれなりにスピードを出しているから高速道路なのかもしれない。いや、歩道のようなものもあるからやっぱり一般道路か?まあ日本におけるバイパス道路みたいな感じか。
直線的な道の両端白色の灯りが照らされ、ビックモーターが近くにあるのを伺わせるほど萎れた街路樹がずっと埋まっている。
道の横に街灯辺りは田んぼなのか畑なのかよく見えないが何もないところで車は停車した。
僕は一番後ろに座っていたんだけど、僕の前の中国人の女性が扉を開けて、ドライバーに何かを言って一人暗闇に消えていった。
は?この辺りにホテルがあるとは到底思えないぞ。
車はUターンをして元来た道を進んでいく。順番に降ろしていくのかな?
ただ中国語が話せぬ僕はそこに座っていることしかできない。じっとしているしかなかった。
車はあろうことか、空港に戻ってきた。そして先ほどまで僕がいた場所にまた停車したのだ。
どういうこと????
ただその後すぐにインド人の夫婦とその幼い子どもが乗車し、車は再び動き出した。相変わらず、平気で100キロ以上を出して車は進む。途中、ドライバーがハンドル横のスイッチをいじって音楽を流し出す。イケイケのチャイナポップである。それもかなりの爆音。ジャズとか久石譲とかにしてくれると落ち着けるのだが、そんな曲を中国人は聞かないのでしょう。
趣味の悪いチャイナポップは中国人の若い女性の乗客3人にはかなりウケがいいらしく、彼女たちは首でリズムを取りながら何かを話している。日本のYOASOBI的な感じなんでしょうよ。
よく分からんけど無事ついてくれ。そう願っていると車は再び停車した。今度はガソリンスタンドである。前もって給油くらいしておけよ。まあ無料で送っていたたげるだけありがたいと思って、僕はミニバンの中で時が過ぎるのを待った。前のインド人はGoogleマップのようなスマホアプリでホテルまでの経路を表示して、あとどれほどで着くのか、はたまたこのバンが進むべき方向は正しいのかを見つめていた。
出発から30分、いや僕がこのバンに乗り込んでから約45分ほどでようやくホテルに着いた。合っている。金が三つの謎漢字からはじまる何と読むのか分からないホテルである。
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運転手がトランクから取り出したスーツケースを受け取ってホテルの受付へ進む。一緒に乗車していた中国人女性3人とインド人家族たちは我先にとカウンターへ入っていく。
別に急いでも仕方がないので僕は彼らの後ろに並んで順番を待った。待つこと5分くらいして僕の順番が回ってくる。
「ニーハオ、チェックインプリーズ」
僕は空港でもらった紙とパスポートを受付の若い女性に手渡す。
「○□△◎▽⭐︎!?」
そうだこの国、英語で話してこないんだったわ。
「キャンユースピークイングリッシュ?」
「No」
まさかの断り。Noって言えるならできるやん。彼女は苦笑いしている。本当に英語が話せないのか、醜いプライドで英語を話したくないのかどちらなのだろうか。
仕方がないのでGoogle翻訳を通じて受付スタッフと会話をする。
「おひとり様なので135元です」
スマホにはそう表示されていた。
「Now ?」
ナウくらいさすがに通じるだろうと思ったが、彼女は固まっていた。先程のNoといった回答は醜いプライドではなく、本当に英語が話せないということなのだろう。
もういいや。僕は確認を待たずに150元を手渡すとお釣りとカード式のルームキー、先程預けたパスポートを渡された。
いやあ中国、おもろいわ。英語がここまで通じないとはねえ……
そんなことを考えながらエレベーターに乗り込む。ホテルは割りに綺麗で一泊¥3,000と考えれば安いものです。
朝食は無料でサービスすると翻訳アプリを通じて教えてくれたが、現在夜22時。何も食わずにも寝られるが、海外旅行のひとつの楽しみは異国の食事である。とはいえ外は寒いし周りに何があるのか調べる気にも出る気にもならなかったので、ホテルの売店で適当に夜食を買った。よく分からない味のカップラーメンと、これまたよく分からない激甘のパン(一口かじってあとは残した)、それと食べ慣れた落花生を少しいただいた。
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バンコク行きのフライトは明日の15時すぎ。ホテルフロントによれば空港までの送迎は12時にしてくれるとのことだったので(これも翻訳アプリを通じての情報)、明日の午前中は中国をうろうろとしてみよう。水圧がこれでもかと強いシャワーを浴び、電気を消す。成田空港泊と比較すると1,000倍は寝心地の良いホテルであった。
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綺麗な状態で写真撮れよって感じですよね、
ごめんなさい。
つづく!
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![斉藤 夏輝](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/99102081/profile_39f7d16aeb4bfcf469ba4c16efb9f15f.png?width=600&crop=1:1,smart)