アイドルアニメの現在地を叩きつける!?映画『トラぺジウム』感想
はじめに
映画『トラぺジウム』を劇場で見てきたので、久しぶりになりますがnoteに感想を残そうと思います。
なぜかアイドルアニメは感想が書きたくなるようで・・・。
今回は予告などの事前情報を一切見ずに、劇場のチラシとポスターに載ってあった情報だけで見てきました。
劇場で流れる予告や公式ホームページも把握しておらず、詳しい内容についてはほとんど知らなかったですが、原作者が乃木坂の方で、アイドルを目指す少女の物語だということは最低限理解していました。
恥ずかしながら、パンフレットやその他のメディア情報は見ておらず、映画本編を一回見ただけの感想となっているので、自分の誤解や理解不足がある点はご容赦ください。また、他の方の感想や評判も自分は把握していないので、自分の感覚が世間とずれている点は多分にあるとは思います。
あくまで、映画を見ただけの雑感なので、考察などではないです。
ただ映画がとても面白かったので、文章として書いてみたかったということです。
そして、がっつりネタバレを盛り込んだ感想となっているので、まだ見ていない人は注意してください!
映画の感想
序盤
前置きはさておき、
まず映画を見てまず思ったのはOP映像がカッコいい!
CGを使ったダイナミックなカメラワークと、丁寧に作画されたアニメーションが最高でした。
冒頭映像が公開されていて、映画を見終わった今は余韻浸りつつ何回でも見ています。
今見返すと、オーディションに落ちてもアイドルを諦めきれない、ゆうの心情が短い時間の中で描かれていることに気づきます。
映画を観るか迷っている人は、この本編映像を見てみると良いと思います。
ノリノリのOPで始まった『トラペジウム』ですが、本編のテンポも非常に速いです。
ゆうが蘭子とくるみと親しくなる時間もあっという間に感じました。
上映時間が94分ということで、見る前から時間が足りるのかな?と思っていましたが、まさかここまで思い切っているとは思いませんでした。
(原作小説が未読なので、どこまで本編で省いているのかは分かりませんが・・・。)
このダイジェスト感は本編通してあったように思います。
そして、長くない本編時間にも関わらず、この序盤では全くアイドルを目指すという展開にならなかったので、アイドルになるシーンなんてないのでは?とすら思ってしまいました。
中盤
と思っていたら、取材で知り合ったADを通じてTVの番組出演が決まるという超展開が待っていました!
特に事務所に所属していない女子高生が、番組の一コーナを担当するのは滅多になさそう?なので、これには驚きました。
そして、そのまま流れるままにアイドルになった展開についても、アイドルを目指していたゆうはともかく、他の3人がいきなりアイドルになったことを受け入れたことにも驚きました。(後々、この展開は回収していましたが)
この辺りのスピード感は本編でも随一だと感じました。
最初は、様々な経験ができるアイドルを楽しむことができていた4人ですが、様々な厳しい現実が待ち受けます。
アイドル活動のシーンは、ここまでの展開と比べて生々しい描写の連続で、元アイドルの経験も入っているのかなと思うほどでした。
見せ場?も多くて、特にゴミを見る様な目で美嘉を軽蔑するゆうの顔は、ちょっと笑ってしまいました。
終盤
狂気的ともいえる熱意でアイドルに執着するゆうは、物語の中では浮いた存在になってしまいます。
というか、最初からぶっ飛んでいた様な気もするので、今更感があるような気がしないでもなかったです。
ここまでは、序盤の展開から考えれば、物語的には既定路線だったの様にも思います。
自分が映画の中で一番気になったのは、ここからどういう結末を迎えるのかという点でした。
アイドルが嫌になって辞めていたので、さすがに3人がアイドルに復帰することはまずないだろうとは思っていました。
となると、考えられる展開としては、以下の2つなのかなと見ながら思っていました。
「1. ゆうは友情を犠牲にしてでも、アイドルを目指す」
「2. アイドルの話は一旦置いておいて、ともかく4人の友情が回復する」
やや極端な例ではありますが、大雑把に言えば、青春の友情を取るかアイドルの夢を取るかの二択ですね。
そして、本編では自分が思うには、2の展開に近かったのかなと感じました。
辛いこともあったアイドルの経験を活かして、これからの将来に向けての次の一歩をそれぞれが踏み出し、その時に得られた友情はいつまでも大切に残るというのが、高校生編の結末だった様に思います。
確かに、ゆうはアイドルの夢をあきらめていませんが、今までに見られた狂気的な気持ちというのは、4人の友情を通して、最後にはさわやかに消化された様に感じました。
映画を見て思ったこと
この映画が描いたこと
では、この映画をどう受け止めればよいのでしょうか。
一つの見方としては、ゆうが毎日もがき苦しみながらも最後にはアイドルの夢を叶えるが、それは決してキラキラしたものだけではなく、狂気的ともいえる異常な熱意が必要であることを描いている、とはいえると思います。
演出でもその部分は、丁寧に描写されていた様には思います。
自分も途中までは、そういう映画なのかなとは思っていました。
アイドル経験者が見てきたリアルなアイドルの姿を表現することが物語の中心なのかなと。
ただ、最後まで見終わると、そうではない感想を持つようになりました。
この映画は、「アイドルを目指す少女のリアルな感情と世界を描いた」作品ではなく、「アイドルを目指した日々の思い出を語った」作品だったと思います。
物語の最後では、あれから10年が経ち、大人になった彼女たちが登場します。
そして、10年後の自分をイメージする(現在から未来を考える)シーンが、物語の最後には、これまでの自分たちの歩みを振り返るシーンへと、変化していました。
(物語の展開がどこかダイジェストのような感じがしたのも、未来の自分がインタビューを通して過去を振り返っていたからだと、こじつけできるかもしれません。(さすがに上映時間の問題が大きいか))
そして、あえてテーマをメタ的に表現をすれば、この作品は、原作者がアイドルを卒業した今の視点からアイドル時代を振り返ることで、自分が経験したアイドルとは何であったのかを表現しているのではないかと思います。
では、この作品では、アイドルをどう表現していたのでしょうか。
言い換えれば、アイドルになる夢を叶えたゆうは最終的にどう描かれていたのかということです。
物語の最後、4人は成長しそれぞれの幸せを掴んでいることが描かれます。
ここで、自分が特に重要だと感じたのは、この4人はそれぞれ違う道を選びましたが、その価値はどれも等しいものとして描かれていたということです。
「アイドルになること」と「母親になること」と「仕事で成功すること」と「支援活動をすること」に優劣はないということです。
この映画の最後では、「アイドルになったこと」は決して特別なこととしては描かれていません。
ゆうにとってはアイドルになることが特別でも、美嘉にとっては恋人ができることが特別であったように、それぞれ夢は違ってはいても、決して優劣があるようには描かれていません。
高校生の時に4人が経験したアイドル活動とは、自分が本当に叶えたい夢を見つけるための大事なステップであり、ある種の通過点だったといえると思います。
そこでは、アイドルを引き続き目指すというゆうの選択は普通ではないとは強調されず、他の3人の夢と同じレベルのものであるように相対化されて描かれていました。
これもメタ的に表現すれば、アイドルになることは夢が叶ったゴールなのではなく、いつか卒業してそれぞれの進路を歩まなければならないという、現実が作品に反映されているのではないかと思います。
アイドルアニメの現在地
最新のアイドルアニメの現在地として、この映画が描いていること、描いてしまったことは「アイドルはもう特別なものではない」ということです。
それが何だという話なのですが、
自分がここで何が言いたいのかと言いますと、
「アイドルになる夢を叶えること」はもう特別なことではないのに、それを大真面目に描いている作品は古臭いと言われてもしょうがないという時代になっているということです。
多くのアイドルが生まれては消える時代において(本編でも一度はアイドルにはなれましたが、すぐに解散する結果になってしまいます。)、もはやアイドルになる夢を叶えるだけでは、物語の強度を保てず視聴者の関心を惹くことはできないのです。
今の時代においてアイドルとは、叶えたい夢そのものなのではなく、別にある本当に叶えたい夢を叶えるためのステップや通過点になっていることが多いのです。
映画『トラペジウム』において高校生編の最後に強調されるのは、アイドルになることを諦めないゆうの選択ではなく、アイドル活動で失った友情を取り戻すことでした。
アイドルになること自体に価値を見出すのではなく、そこから何を得られたのかが重要だということです。
『トラぺジウム』が面白かったのは、ゆうが二度アイドルになったということです。
言うなれば、仮初のアイドルの結成と挫折を描くことで、本物のアイドルになるというプロセスを踏んでいます。
確かにこの方法ならば、アイドルを卒業するという現実を描きながらも、アイドルになれます。しかし、その時のアイドルは特別なものではなく、TV局の中のシステムに組み込まれた、仕事としてのアイドルに落ち着いてしまっているように見えました。
また、『トラペジウム』が以前のアイドルアニメと大きく違うのは、成長した大人の姿を画面に出せている点です。
特に妊娠している美嘉の姿は、他のアイドルアニメではなかなか出すことはできないでしょう。
自分は、大人になって成長したシーンを見るのが好きなので、アイドルを扱った作品でそれを見られたのは嬉しかったです。
この企画が他と違っていたは、これが推し活に代表されるキャラクタービジネスを前提としたものではなく、一本で完結する独立した映画であるということです。
その特徴を最大限に活かしていたと思います。
おわりに
『トラぺジウム』を見ながらも自分の頭の中で考えていたことは、『ラブライブ』シリーズのことでした。現在は、『虹ヶ咲』では劇場版が、『スーパースター』では3期が制作されていますが、『トラペジウム』のような作品がアニメ化された以上は、やっぱり無視できないのではと思っています。
もちろん、ターゲット層もやや異なるので、一概に影響を与えるとは思いませんが、アイドルだった少女たちの大人になって成長した姿を描いていることは大きな意味を持つのではないかと感じます。
『ラブライブ』について書くと、余計に長くなるのでここでは書きません。
(過去のnoteの記事で散々書いた気がするので・・・)
ただ、『トラペジウム』を見たことで、ますます楽しみになってきました。
劇場で一回しか見ていないこと、また見た直後にこの記事を書いたので、
印象が偏った感想になったとは思いますが、ここまで読んでくださりありがとうございました!
アイドルアニメはやっぱり面白い!!
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