ルポ円頓時商店街
「商店街」
その言葉から想像できるのは、個人商店が立ち並ぶ活気ある街並み、世間話に花を咲かせる人々だろうか。
はたまた、錆びれたアーケードや閑散としたシャッター街だろうか。
どちらにせよ、コミュニティにほとんど属していない21歳一人暮らし男性からすると、魅力的な場所だ。
大学四年生になり、卒業に必要な単位を取り終えた私は、真っ白なスケジュールを埋めるように、履修していた授業を自主休講し昼下がりの電車に乗り込んだ。
円頓時商店街とは?
そもそも円頓時商店街とはなんぞや。
徳島から名古屋に来て4年目となる私も、最近までその存在を知らなかった。
Instagramを見ていると「名古屋の人気スポット◯選!」という記事に記載されていたため、地元の人からすると人気のスポットなのだろうか。
人気スポットと聴くとつい足を運びたくなる。
マーケティングに踊らされているようで、少し悔しい。
調べてみると、江戸時代の名古屋城築城の際に人が集まり、賑わうようになった商店街らしく、長い歴史を持つ店も多いようだ。
私的には、名古屋で商店街と聞くと大須商店街が真っ先に頭に浮かぶが、大須はまた別の意味で賑わっている商店街らしい。
到着
丸の内駅で降りると、周りにはスーツ姿のサラリーマンの先輩方が歩いている。
これまで3年間感じ続けていた優越感と同時に、来年からは自分も社会人だということへの憂鬱さが襲ってきた。
オフィスビルや新築マンションが立ち並ぶ表通りを一本入ると、個人経営のレストランや風俗店、民家が立ち並ぶ街並みとなった。
一見すると、私の地元、大都会徳島県にもありそうな街並みだが、その奥に見える名古屋駅の高層ビル群が、ありきたりな街並みに違いを魅せる。
車がギリギリすれ違えるくらいの道を少し歩くと、2015年に改築された真新しいアーケードが見えてきた。
商店街東側
アーケードの中は歩行者道路となっており、平日の昼間にも関わらず人通りは多い。
近くの芸術系の学生だろうか。何人かが道端に腰掛けて商店街の様子をデッサンしていた。
可能であれば声をかけて話を聞きたいところではあったが、相手への迷惑を考慮し留まった。
自分に社会的常識があることを再確認し安心するとともに、それゆえに自身の可能性が狭まっていることを自覚する。
前半とも言える新アーケード部分は比較的新しい店も多く、それぞれの外観にこだわりのある店ばかりだ。
中でも歌舞伎カフェや、あんかけスパゲッティ専門店など、珍しい店が目を惹く。
また、成り立ちの通り寺社も多い。
現代のタワーマンションと一昔前の商店街、古い寺社が融合する景色からは、他では味わえない雰囲気を味わえる。
雰囲気の良いカフェが何軒か立ち並んでおり、可能であれば入りたいところではあったが、あいにくお昼を食べたばかりであり今回は遠慮しておく。
商店街西側
大きい通りを挟んで向かい側には、少し古いアーケード街があった。
交差点には豊臣秀吉や織田信長の像があり、観光地化しようと努力した痕跡が窺える。
西側は東側と比較して古いお店が多い。
本当に商売が成り立っているのかわからないくらい古びた店が並ぶ様子からは、初めて訪れた場所にも関わらずノスタルジーを感じる。
新しいものを作らなくとも、古びた商店街のまま、私にノスタルジーを供給し続けてくれれば良いのに。
それを許さない資本主義を少し呪った。
また、西側は比較的飲み屋の数も多い。
円頓寺横丁なる目新しく、小綺麗な飲み屋は、女性でも入りやすそうで、夜になると繁盛するであろうことが窺える。
多くの飲み屋が準備中の札を店頭に掲げる中、一軒だけ営業していた立ち飲み屋は、定年退職後のお父さん方の憩いの場として繁盛していた。
時間帯的に準備中の店も多く残念だった。
再度夜に訪れて、飲み歩きたい。
商店街の西側の端は少し曲がっており、アーケード街にしては珍しく、曲がった屋根が見られた。
天井付近の時計は年季が入っている。
東側の端から歩いて、合計で30分ほどで西側の端に辿りついてしまった。
お店に入ったり、人に話しかけたりすればよかったのだろうか。
能動的に楽しめないのは人生の改善点である。
建物の背後にそびえ立っていた名古屋駅の高層ビル群は、その姿を一段と大きくしており不思議と安心感を抱いた。
初めて名古屋に来た時は見たこともないような高層ビルに疎外感を感じていた。
しかし、今となっては高層ビル群に安心し、商店街の物珍しさに驚いている。
私自身の成長(退化?)に気づいたところで終わりとする。
まとめ
近年、大型商業施設の開業によりシャッター街となる商店街が増える中で、円頓寺商店街はそれに抗い、昔ながらの商店街の雰囲気を感じさせてくれた。
中には新しくできた店も見られて、商店街の存続に必要な代替わりも着実に進んでいる。
これから先も地元民に愛されつつ、文化の発信地になってもらいたい。
名古屋駅から徒歩15分で訪れることができるので、これを読んだみなさんもノスタルジーに浸りに行ってみてはいかがだろうか。