プロポーカープレイヤーだった私がメンタルコーチになった理由 part3 ~ティルト克服への道~
こんにちは。
マナベツバサと申します。
海外で「プロポーカープレイヤー」として活動後、今現在は日本で「メンタル・パフォーマンス・コーチ」としてコーチングを職業としています。
前回は、私が本格的にプロポーカーの世界に入り、「ティルト」と呼ばれるメンタルの大きな壁にぶつかったこと、そして結果的に4000万円もの損失を出してしまった出来事までをまとめました。
前の記事:『プロポーカープレイヤーだった私がメンタルコーチになった理由 part1 ~ポーカーとの出会い~』
前の記事:『プロポーカープレイヤーだった私がメンタルコーチになった理由 part1 ~スカイステークスへの道と人生最大の逆境~』
スカイステークスでプレイするようになって、「ティルト」への対策が私の命題となりました。
「根本的な解決策の模索と絶望の日々」
24時間で4000万円を失うという出来事の、私のメンタルへの影響は甚大なものでした。
その後しばらくは何もする気が起きず、長い時間をベッドの上で過ごしました。鬱病のような症状が見られ、ドクターからは「燃えつき症候群(burn out)」と診断されました。
しばらく休暇を取り、友人の助けなども得ながら何とか持ち直した私は、再びティルトの問題と向き合い、なんとしても解決しようと心に誓いました。
そこからは、今までやってきたスポーツ心理学やコーチングに加え、自分のこだわりを捨て、かなりの時間と数千万単位の投資をし、少しでも効果がありそうなものは何でも試しました。下記が、私が試した手法や指導を受けた方々の一部です:
・ 様々な心理療法(認知行動療法、自律神経療法、精神分析、アートセラピーなど)
・ 催眠療法、NLP
・ 自己啓発系のセミナー多数(Tony Robbinsなど)
・ ミリタリー・情報機関系のプロフェッショナル:CIAの尋問官、アメリカ陸軍士官学校の教官、イスラエルの元軍人など
・ ヨガのグル、古武術の師範等
・ 気功や霊気、占いまがいの怪しそうなものまで etc.
しかしどれもほぼ根本的な解決には全く至らず、絶望に近い感情を抱きながらも解決策を探し続けることしかできないまま時間が過ぎていきました。
その間もスカイステークスに挑戦し続けていましたが、常にティルトに怯えながらプレイしているため良いパフォーマンスが出せる筈もなく、負けが込んだ日は$10/$20までレートを落としてプレイするという辛い日々を過ごしました。
「MET療法との出会い」
そんな中転機として訪れたのが、私のメンタル問題の根本的な解決に繋がる「MET®」と名付けられたゲシュタルト療法をベースとした最先端の心理療法との出会いでした。
きっかけは友人のポーカープレイヤーからの勧めだったのですが、その時は私も半信半疑だったため、この心理療法を実際にやってみたのは他のアプローチを試し、効果が得られずほぼ諦めていた頃でした。
MET®というのは、元々うつ病などの精神疾患をケアするために開発されたものです。この療法の特徴は、他の心理療法と違い、分析や論理的な「なぜ」の追及はせず、クライアントが体験/体感している「いま」ある感情を扱う点です。
私は、当時「すべての自分の行動は、自身の合理的思考によってコントロールできる」と考えていました。
しかしティルトという、いくら頑張っても全くコントロールが出来ない現象を体験することによって「どれほど努力しても、自分を常に論理的に行動させるよう強制することはできない」と認めざるを得なくなっていました。
最初のセッションで、セラピストから私自身が無意識に溜め込んでいた感情を指摘されました。初めはその指摘に納得できなかったものの、セッションが進むにつれて涙が溢れるなど、否定できないほどはっきりと感情が動いたことに驚きを隠せませんでした。
次々と自覚していなかった自身の様々な感情が表に出てきて、頭での理解が追いつかなかったのですが、どこかで「これは根本的な解決に繋がるかもしれない」と感じたのを覚えています。
「ティルト改善の兆し」
継続してMET療法の治療を受け、2ヶ月というわずかな期間でセラピーの効果が出始めました。
一番の課題だった、負けを取り返そうとして分散の高いプレイを繰り返すといった問題が解決したのです。
その後もまだまだ課題があると感じたため継続的に治療を受け続けましたが、解決策を探しては絶望する終わりのないサイクルから抜け出すことができ、精神的にかなり楽になりました。
また同時に、MET療法のセラピスト養成講座を受け始めました。講座の内容の9割が、まず受講者がセラピーを受ける事だと聞き、とにかくメンタルを強化したかった私は二つ返事で参加を決めました。
セッションの回数を重ねるにつれて、自覚していなかった他の課題もどんどん可視化され、以前の自分だったら辟易していたかもしれない事実と向き合う必要が出てきました。
しかしトレーニングを続けることで得られた「どんな問題でも、メンタルの話であればどうにかできる」といった感覚、解決できるという自信によって、様々な自分の課題に向き合うことを楽しむことができるようになっていました。
そしてティルトに打ち勝つことができた私は、再びトップを目指してポーカーをプレイし始めるのです。
次の記事(『プロポーカープレイヤーだった私がメンタルコーチになった理由 part4 ~メンタル・パフォーマンス・コーチとして~』)に続く
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