水清ければ魚棲まず:みずきよければ うおすまず #32 辞書の生き物
水清ければ魚棲まず
水が清すぎると魚はかえってそれを嫌って棲まなくなることから、あまり潔白すぎる、まじめすぎると、かえって人に親しまれず孤立してしまうことのたとえです。
清流を好む鮎(アユ)ですが、清流すぎて鮎が棲まない川もあるそうです。また、一見濁って汚なそうなアマゾンにいるピラニアですが、鮒(フナ)や鯉(コイ)が普通に暮らしている川では生きていけないこともあるようです。日本の河川はアマゾンより自然ではないのかもしれません。
田沼意次:たぬまおきつぐ
江戸時代の狂歌に関連するテーマのものがあります。
「白河の 清きに魚も 住みかねて もとの濁りの 田沼恋しき(しらかわの きよきにうおも すみかねて もとのにごりの たぬまこいしき)」という句です。
寛政の改革
賄賂(わいろ)政治を行った老中の田沼意次が失脚後、松平定信が引継ぎ「寛政の改革」として厳しい倹約令を出したため、民衆は腐敗政治だったとしても生活が豊かで自由だった田沼の政治を懐かしんだと歌ったものです。やはり人もほどほどの濁り具合がよいようです。
この句での白河は老中松平定信の出身藩の名前で、濁りは賄賂政治を意味しています。