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「School Days」寓話的な愛憎劇
今回は「School Days」の魅力を愛憎劇、アダルトゲーム原作アニメの成功例、この2つの視点で解説したい。
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School Daysと言えば、主人公の伊藤誠がクズ男の代名詞として、今やある種のミームと化している。巷では女の敵や世界一のクズとして有名で、アニメや原作ゲームを未見でも、名前だけなら知っている方も多いはず。
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また本作は主人公の知名度だけでなく、最終話の結末を引き合いに衝撃作と評する声も多い。だがこれには大いに疑問を感じる。
何故なら、School Daysという作品は単なる恋愛作品ではなく、等身大の高校生男女の破滅を描く、血みどろの愛憎劇であるからだ。
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そもそもSchool Daysは、終始一貫ラブコメや純愛モノとして描かれてはいない。その証拠に第2話のラスト、つまり物語の序盤で誠は意中の相手、|桂言葉《かつらことのは》と相思相愛となる。
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ラブコメや純愛モノは往々にして、二人の前に立ちはだかる困難や、その男女の関係性を曖昧にしたまま、そのモラトリアムを描く傾向が強い。
しかし、本作では特段の困難もなく序盤に、誠と言葉はカップルとして結ばれる。これは、School Daysが単なるメロドラマではないという表れだ。
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本作は主人公とヒロインが結ばれるところから始まり、さらにもう一人のヒロイン、|西園寺世界《さいおんじせかい》を加えた、三角関係に主眼を置いたドラマである。
三角関係と言っても、同時に2人の異性と交際する最悪のパターンに類する。これでは最終話の血みどろの結末もやむ無しだ。
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例えば、ラブコメや純愛モノが唐突に凄惨な結末を迎えたとする。これは大いに意外性を含んでおり、衝撃作と言って差し支えないだろう。
だが本作のように、始めから三角関係をテーマに痴情のもつれを描く作品で、血みどろの結末を迎えようとも、それは全くもって意外でも衝撃でもないのだ。
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本作は序盤こそ、誠と言葉が結ばれ甘酸っぱい恋愛模様が描かれる。だが、次第に誠は世界に惹かれ、物語は段々と不穏な空気を帯びていく。
このような展開から考えれば、最終話の結末はむしろ妥当だ。
したがって、School Daysを意外性のある衝撃作として語るのは大いに間違っている。
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古今東西、痴情のもつれはある意味、定番的で王道を往く物語のテーマだ。
四谷怪談のお岩さんも夫に捨てられたお岩の復讐劇であるし、やはり古くから男女の諍いにはエンタメ性が秘められている。
School Daysは他の学園モノ作品と違い、登場人物や舞台設定に非現実的な要素は見られない。ヒロインがアンドロイドだったり、超能力者が跋扈するような世界でもない。あくまで、等身大の高校生たちが紡ぐリアリティある人間ドラマが最大の魅力である。
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登場人物たちが三角関係の果てに、破滅へ向かっていく様は生々しく、また教訓的でもある。異性からの好意に受動的に流され、煮えきれない態度で臨めば、いずれ破局が訪れるというのは誰しも理解できるはずだ。
最終話で言葉は、切断した誠の首を愛おしそうにヨット上で抱きしめる。そして、このシーンをもって物語は幕を下ろす。
悲劇の末路を迎えたにも関わらず、不思議と感動的なシーンにも見える。この非常に情緒的で余韻を残すラストは、School Daysの作品性を象徴している名シーンだ。
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さらに本作はアダルトゲーム原作のアニメ化において、稀有な成功例とも言える。2000年〜2010年代は数多くのアダルトゲーム原作のアニメが制作された。しかし、そのいずれもイマイチぱっとしない出来栄えの作品が多かった。特に恋愛アドベンチャーに代表される、複数ヒロインが登場する作品はその傾向が顕著であった。
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一例を挙げると、「SHUFFLE!」という作品は首を傾げてしまうアニメ化だった。その理由は原作とアニメ版との大きな作風の乖離にある。
そもそも、SHUFFLE!の原作ゲームは人間関係のドロドロを排した、明るい作品というコンセプトの元開発されていた。
しかし、アニメ版ではヒロインの内一人の性格が原作とは大きく異なり、まるでヤンデレキャラの如く描写されていた。
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アニメ化にあたり、原作ゲームからシナリオやキャラクター設定を改変する必然性があるなら納得できる。だが、この時代多く見られたアニメ版での改変、つまり通俗的に言えば原作レ○プは、そのほとんどが必然性なく無闇矢鱈に原作とは乖離を生じさせるものだった。
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また恋愛アドベンチャーは複数ヒロインが登場する性質上、アニメ化に向いていない。基本的に恋愛アドベンチャーと称される作品の多くは、共通ルートから選択肢などの分岐により、各ヒロインの個別ルートへシナリオが進行していく。当然この手の作品は、ヒロイン各々の個別ルートにあるドラマにその魅力が詰まっている。
つまりアニメ化する際、複数登場するヒロインの中で誰のルートを描くのか、という構造上の問題が存在する。もちろん、共通ルートのみを描写したり、メインヒロインの個別ルートをエンディングに据えるなど、問題を解決しようとするアプローチはこれまでも多く見られた。
だが、このような試みは折衷案的でスマートな解決方法とは言い難い。
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しかし、SchoolDaysは原作スタッフ監修の元、アニメオリジナルのシナリオを書き起こし、恋愛アドベンチャーが抱える特有の問題を見事解決した。
本作の結末は原作ゲームにはないアニメオリジナルのエンディングだ。
原作でも言葉と世界のどちらかが死ぬような、悲劇的なバッドエンドはいくつか用意されている。
だが、アニメ版では誠も死亡し、世界も殺害され、さらにはヨット上で言葉も漂流するような、ある意味全滅エンドに近い形になっている。これは原作に存在するどのバッドエンドよりも最悪の末路を辿っている。
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原作スタッフ監修の元、アニメ化に際してオリジナルシナリオを起こすというのはある意味、たったひとつの冴えたやりかたに感じる。
School Daysでは原作よりもさらに、悲劇的な結末を用意して新規層へ強く訴求することに成功した。
原作ゲームの宣伝としても、単品の映像作品としても十分に傑作と言える本作は、恋愛アドベンチャー作品のアニメ化おける大成功の一例と表現しても過言ではないだろう。
ファンとしては最終話のEDテーマに、原作ゲームのOPテーマが起用されている点も非常に嬉しかった。
痴情のもつれという不朽のエンタメを、現代の高校生たちを取り巻く三角関係になぞらえ、生々しくもどこか寓話的に描いたSchool Daysは愛憎劇の超傑作だ!