【愛と復讐と】名作SFアニメ「アルジェントソーマ」を紹介
今回は感動の超名作SFアニメ「アルジェントソーマ」を紹介したい。
どんなアニメ?
サンライズ制作のTVアニメ。2000年10月〜2001年3月までテレビ東京で放送されていた。当時は関東ローカルのみの放送となっていた。
恋人を「エイリアン」によって失った主人公の復讐とエイリアンに秘められし、哀しき真実が描かれるSF作品となっている。
あらすじ
2059年、地球は「エイリアン」と呼ばれる金属生命体から襲撃を受けていた。5年前、突如地球へ飛来したエイリアンは甚大な被害をもたらした。この襲来を人類は第一次遭遇戦と呼んだ。その後、人類はエイリアンへ対抗するべく、国連が軍を再編し「フューネラル」を組織した。
また、エイリアンは地球へ降り立つと必ずある地点を目指す、それを人類は巡礼ポイントと呼んだ。巡礼ポイントへエイリアンがたどり着けば、カタストロフが起きると考えた人類は巡礼ポイントに到着する前に撃破することを急務としたのだ。
ユニバーサル大学へ通う「タクト」は恋人の「マキ」と共に、生態工学科の教授ノグチ博士のエイリアン研究の実験へ協力していた。研究内容はエイリアンの残骸同士を繋ぎ合わせ、新たに1体のエイリアンを作り出すというものだった。
エイリアンの肉体は積層された金属で構成されながらも、内部をワイヤーなどが張り巡らされていて人体の構造と酷似していた。
残骸を繋ぎ合わせる実験は最終工程を迎えていた。残すはエイリアンの頭部とされるブロックを取り付けるだけである。残骸を繋ぎ合わされたエイリアンは「フランク」と呼ばれていた。
頭部を取り付けたフランクに電流パルスを流し、蘇生させる実験の最中に事件は起きた。突如フランクが動き出し研究施設を破壊しながら逃亡したのだ。施設が瓦礫の山となる中でノグチ博士とマキは死亡し、タクトのみが生き残った。
一命を取り留め、病院のベッドで思案にふけるタクトの元へ謎の男が現れる。男はシェイクスピアになぞらえ、復讐か忘却か天秤の上では五分と五分、塵一つ乗せた方が重いと語る。タクトは選択を突きつけられていた。
フランクへの復讐を望むか、このまま全てを忘れ去るか、気づくと男は姿を消していた。
その夜、タクトの元へ再びあの男が現れる。返事は決まっていた。フランクをこの手で破壊できるなら自分すら捨ててもいいと男に告げる。
覚悟を決めた答えに、男は満足した様子でタクトの腕に注射器を突き刺すのだった。タクトが気を失う寸前、謎の男は自らを第3の男と称した。
タクトが目を覚ますと、そこは知らない病院の個室だった。そして近くに置いてあるカルテには「リウ・ソーマ」と記されていた。看護婦曰く、自分は昨夜の交通事故でこの病院へ運び込まれたことになっているらしい。その後、施設の事件で焼けただれた顔の半分に整形を施し、別人となったタクトは謎の男の計らいにより、新たな戸籍を与えられリウ・ソーマとしてフューネラルへ入隊するのだった。
フランクと心を通わせる少女
施設から逃亡したフランクはある少女と出会う。少女の名前は「ハリエット・バーソロミュー」第一次遭遇戦で両親を失い、今は祖父と二人暮らしをしている。祖父からは「ハティ」と呼ばれ、湖で出会ったフランクを妖精くんと名付けとても気に入っていた。
湖に潜んでいるフランクにハティは会いにゆき、花冠を贈るなど順調に心を通わせていった。まるで意思疎通ができているかのように。
ハティとフランクが心を通わせていたその時、エイリアンが襲来する。一方、フューネラルの部隊もフランクの反応を追って近くまで駆けつけていた。湖がある森の異変に気づいた祖父が駆けつけた。しかし、ハティを庇い祖父は亡くなってしまう。
そして、エイリアンは次の標的をハティに定めた。ハティは第一次遭遇戦でエイリアンによって両親を失ったトラウマから動けなくなっていた。
両親だけでなく最後の肉親であった祖父まで亡くし、茫然自失のハティにエイリアンの目が光る…
その時、フランクがエイリアンに掴みかかる。心を通わした少女のピンチに立ち上がったのである。フランクも人間に作り出されたとはいえ、同じエイリアンのはずだが、一体なぜ?
同族からの思わぬ不意打ちに姿勢を崩すエイリアンだったが、すぐさまフランクへ反撃する。それに応じるかのように雄叫びを上げたフランクの左腕が光り輝いた。エイリアンの顔面に光り輝く左腕から強烈なパンチが炸裂したのだ。その場に倒れたエイリアンは瞳を曇らせ機能を停止した。
日が沈み、残されたハリエットとフランク。最後の肉親を亡くして悲しむハティをいたわるようにフランクが手を差し伸べる。そこへフューネラルの部隊が到着した。
駆けつけたフューネラルの部隊にフランクは捕獲され、身寄りのなくなったハティも保護された。実はハティは第一次遭遇戦で頭部を負傷した際、脳内にエイリアンの破片が入り込んでしまっていた。そのことからフランクと意思疎通が図れるのだった。
対エイリアン戦においてフランクの力は圧倒的だった。コミュニケーションが行えるハティという人物の存在もあり、フランクもフューネラルの戦力として任務に関わる事となる。
哀しき真実
ある討伐作戦の最中、とうとう巡礼ポイントにエイリアンがたどり着いてししまう。エイリアンはフランクによって撃破されたが、巡礼ポイントにエイリアンが到達すれば終末的な破局が起きると信じていたフューネラルの面々は息を呑んだ。
しかし、終末的な破局はおろか何も起きないのである。さらに驚くべきことにフランクが自身を「私の名はユーリ、宇宙船オデッセウス号のユーリ・レオノフ…」と語りだす。それまで雄叫びしか発することのなかったフランクが言葉を話したのである。
第一次遭遇戦から遡ること10年前の2044年、深宇宙探査へ向かおうとする一人の男がいた。その人物こそ、フランクの語っていた宇宙船オデッセウス号のパイロット「ユーリ・レオノフ」である。宇宙飛行士として任務をこなす彼は中々家に帰ることができず、その事が原因で妻と喧嘩が絶えなかったのである。出発の前日もまた、些細なことで妻と諍いをして喧嘩別れのような形で今回の任務に赴くのだった。
宇宙へ向けて出発するユーリへ激励の言葉をかける人物がいた。名前は「デビット・ロレンス」地上基地で指揮を務める彼はユーリの友人である。
深宇宙探査へ向かったユーリは超空間ゲートと呼ばれる物を発見した。ペンローズツイスターホールと呼ばれるそのゲートの発見をユーリから知らされたデビットは上層部へ報告する。上層部はすぐさまオデッセウス号を超空間ゲートへ向かわせよとデビットに命じるのであった。
しかし、そうすればオデッセウス号の予定航路とは大幅にズレが生じ、推進剤がもたなくなるなどの問題があった。最悪の場合、宇宙の漂流者となってしまい地球への帰還が困難となってしまうのだ。
上層部からの無茶な命令を渋々ユーリに伝えるデビッド。宇宙開発に行き詰まっていた人類が超空間への入り口を見つければ、星間航法技術の確立が期待できるとユーリは前向きにその命令を受け入れるのだった。
命令通り超空間ゲートへ出発したユーリだったが、アクシデントによりオデッセウス号を失い、小型の脱出艇で宇宙を彷徨うことになってしまった。広大な宇宙を漂流する彼の前に光り輝く空間が現れる。ユーリは偶然にも超空間ゲートへたどり着いていた。幻想的な光景に感動し涙するユーリだった、そして地球へ帰りたい、喧嘩したままの妻にもう一度会いたいと強く願った。直後、強い光に包まれユーリは意識を失った。
次に目を覚ましたユーリの眼前には、帰りたいと願った地球があった。しかし、ユーリの姿はエイリアンへと変わり果てていた。
エイリアンの正体は超空間内で、地球へ帰りたいと強く願ったユーリの心と体がバラバラに引き裂かれた欠片が怪物となった姿だった。巡礼ポイントには妻と暮らした家がある。地球で暮らす妻の元へ帰る、その一心で巡礼ポイントを目指していただけだったのだ。
フランクから語れる衝撃の真相にフューネラルの面々は驚きを隠せない。
バラバラに引き裂かれた心身だったが、複数のエイリアンが繋ぎ合わされたフランクとして蘇ったことで人間性を取り戻したのである。
フランクは続ける。リウの恋人マキが研究施設の崩壊に巻き込まれ命を落とした際にも、実際には手を伸ばして助けようとしていただけということを。
そして自身の全ての分身であるエイリアンに代わり、妻へ詫びようと巡礼ポイントに存在する自宅へ歩みを進めるフランク、かつて妻と暮らしていた家をようやく見つけたのだ。だが、既に家は廃墟となっており妻の姿もなかった。
廃墟となった家から謎の男が現れ、フランクに「おかえり、ユーリ・レオノフ」と告げる。フランクはその聞き覚えのある声に気づいた。謎の男の正体はかつての友人デビット・ロレンスだったのだ。宇宙へ散った友を救うべく、裏から様々な手引きをしていたのだ。リウをフューネラルへ入隊させたのもその目論見があってのことだった。
フランクは妻の行方をデビットに問うが、その口から告げられた真相はあまりにも残酷だった。実はフランクもとい、ユーリの妻は第一次遭遇戦で命を落としていたのである。妻の元へ帰るため姿を変えた結果、その妻の命を奪ってしまっていたという事実に深く悲しみ絶望するフランクだった。
感動、そして希望に満ちたラスト
デビットから語られた真相に悲しみ絶望したフランクは心を閉ざした。フューネラル本部の格納庫へ連れ戻されるも、あれ以来一言も発さなくなっていた。その時、地球へ向かう超大型エイリアンの出現が報告される。そのエイリアンの全長は8000kmにも及び、質量は地球とほぼ同等であると…
超大型エイリアンが地球へ近づけば、潮汐作用によって地球は破壊されてしまうのだ。国連は超大型エイリアンを星間弾道弾ユリシーズによって迎撃することを決定する。
ユリシーズは元々、地球周回軌道に係留されていたオデッセウス号の同型艦である。ユーリの事故とエイリアン襲来に伴い宇宙開発は中止され、半ば放棄されていた物を星間弾道弾へ転用したのである。
一方その頃、フューネラル本部格納庫でリウとハティが心を閉ざしたフランクへ呼びかける。リウはかつてフランクが追いかけた夢の跡である、ユリシーズが兵器へと変えられていることを告げる。それでいいのか、とさらに問い詰めるリウだったが、フランクは何も語らず動じないのであった。
そして、リウはフランクと自分は同じであると気づいた。姿を変えリウ・ソーマとしての自分と、本来のタクト・カネシロとしての自身を分かつ心境をフランクに重ねたのである。そんな中、奇跡は起きた。
突如、フランクの全身が黄金に光り輝きフューネラル本部の上空へ飛び立った。フランクは地球に存在するエイリアンやその残骸の全てを自身に吸収したのだ。そして、黄金に煌めくスペースデブリが何かを形成し地球を包み込んだ。スペースデブリの影響でユリシーズの発射カウントダウンは停止した。
地球上に存在する自身の分身全てを取り込んだフランクは、その姿を黄金の巨人へと変貌させた。フランクは周囲にいるリウたちフューネラルの面々に謝辞を述べるとさらにこう続けた「人類の愚行はこれからも止まないだろう、しかし希望は残されるべきだ」と。
フランクは自身を犠牲に地球へ迫りくる超大型エイリアンを阻止しようと飛翔した。最後にフランクは「リウ・ソーマ、もし遠い未来また宇宙のどこかで私の分身と出会うことがあったら手を振ってくれ」と告げて地球を後にした。
故郷を救うべく、再び地球を去ったフランクは超大型エイリアンと共に宇宙の星となり消えた。最愛の妻を守れなかった男は最後に愛する故郷を守ることを選んだのだ…
フランクが地球を救うため飛翔してから6年後、リウは軍が隠していたエイリアンの真相を告発した罪で政治犯として軍刑務所で暮らしていた。一方、19歳となり成長したハティは医療と工学のスペシャリストとして探査船ユリシーズ号の乗組員として選ばれていた。一時は星間弾道弾へと姿を変えたユリシーズ号だったが、再び本来の姿を取り戻していた。ユリシーズ号の次なるミッションは、フランクが地球を飛び去った直後から現れた謎の星雲の調査である。
バーナード星系をそのまま飲み込んだ超巨大な星雲は6年前から姿を現しており、人々はユーリ・レオノフがまた帰ってきたと噂した。
ある日、軍刑務所の所長から呼び出されたリウは恩赦を伝えられる。ユーリ・レオノフの事件が白日の下に晒され、政治犯としてリウを捕えた政権は失脚していた。恩赦という形で自由の身となったリウはユリシーズ号の調査任務へ志願したのだ。ユリシーズ号の船内で6年ぶりにハティと再会したリウは敬礼を交わし、二人は喜びをあらわにする。
そしてユリシーズ号は6光年先の遥かな宇宙へ旅立った。異形と成り果てながらも故郷へ帰還し、そして守った男に今度はこちらから迎えにいくために…
総評
比喩じゃなく本当に泣ける感動の超名作SFアニメである。
未知の敵の正体が異形の姿に変貌しながらも、地球へ帰還した男だったというのは初代ウルトラマンのジャミラが元ネタだろう。
敵の正体が人間だったというありがちなオチであるが、それを取り巻く哀しき人間ドラマが本作最大の見どころだ。謎の男として暗躍するデビットもただの狂言回しと思いきや、宇宙へ散った友を思い救おうと奮闘していた、ある意味もう一人の主人公と言える。
また、本作も2クールアニメのよくある例に漏れず総集編となる回が存在する。だが、他のアニメと違い過去回を繋ぎ合わせた単なる振り返りではないのだ。
国連の高官や軍の関係者が対エイリアンについて協議している様から本作のこれまでをおさらいする形になっており、その最中に過去回のカットが挿入されるという凝った演出となっている。
総集編というとどうしても”捨て回”のイメージが強い。しかし、本作では総集編という形式の元、これまでの伏線の整理や新たな謎の提示がされる重要な回となっている。総集編にこれまで価値を見出したアニメはアルジェントソーマ以外にあるだろうか?
この点からも本作が”超”名作たる所以が伝わると思う。
アニメファンなら絶対に観るべき名作であり、強く視聴をおすすめしたい。