「撲殺天使ドクロちゃん」荒唐無稽ギャグアニメの超名作
今回は「撲殺天使ドクロちゃん」について語りたい。
本作はおかゆまさき氏による同名ライトノベルが原作となっている。
2005年と2007年にOVAとして発売され、特徴的なOPソングも相まって人気を博した。
さらに本作は「ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて」「大魔法峠」と共に邪道魔法少女シリーズと呼ばれている。本シリーズは魔法少女の純真なイメージとは程遠い、ブラックで破茶滅茶な内容が大きな特徴だ。
後年、魔法少女まどか☆マギカのヒットを受け、王道から外れた魔法少女物が量産された。だが、ステレオタイプな魔法少女像からかけ離れたアプローチというのは本シリーズこそがパイオニアなのである。
撲殺天使ドクロちゃんは邪道魔法少女シリーズの中でも、特に荒唐無稽なギャグ展開が売りの作品だ。
物語はある日、主人公「草壁桜」の家に同居している「ドクロちゃん」が転校してくるところから始まる。実はドクロちゃんは天界から来た天使で、愛用の武器は撲殺バットのエスカリボルグである。
エスカリボルグの破壊力は凄まじく、着替えをうっかり覗いてしまった桜の頭部を容易に木っ端微塵にする程だ。
頭部を跡形もなく破壊された桜、だが物語はここで終わらない。
ドクロちゃんがひとたび、エスカリボルグを構えながら「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜」と唱えると桜の体は再び元通りとなるのだ。
このように桜が、ドクロちゃんから理不尽に惨殺される流れが本作のお決まりとなっている。
桜の体がどんなに不可逆的な状態となり死亡しても、ドクロちゃんにかかれば一瞬で元通りなのだ。
本作の破茶滅茶さはこれだけではない。桜が通う中学へドクロちゃんが転入し、ホームルームで自己紹介をする場面がある。しかし、その際にも悲劇は起こる…
基本的にドクロちゃんは、桜に対して偏執的な愛を向けている。
転校初日、自己紹介を終えたドクロちゃんは桜と隣同士の席を希望する。しかし、桜の隣には既に別のクラスメートがおり、さらには学級委員がドクロちゃんのお世話係を買って出るなど、二人の間には様々な障害が存在した。
ドクロちゃんは桜と隣同士の席になるためには手段を選ばない。そして、手始めに学級委員をニホンザルへ変えたのだ。
一般的なギャグアニメでは場面が変われば身体的変化はリセットされる。だが、本作では最終話まで学級委員はニホンザルのままだ。
さらに最後の障害である、桜の隣のクラスメートはドクロちゃんにより、存在が消されてしまった。文字通り先ほどまでそこに居たクラスメートが消えたのだ。
いかがだろうか?本作の荒唐無稽ギャグとしてのレベルの高さ、そして面白さ伝わったら幸いである。
また今期、荒唐無稽ギャグアニメを目指していたと思しき作品が放送されている。それは「しかのこのこのここしたんたん(以下しかのこ)」だ。
この「しかのこ」については個別の批評記事を書いたので、よければそちらも目を通して欲しい。
撲殺天使ドクロちゃんとしかのこは共通点が多い。特徴的なOPソング、風変わりな美少女とそれに巻き込まれるドタバタコメディ、作品の骨子は非常に近いものがある。しかしドクロちゃんが超名作である一方、しかのこは陳腐で下らないアニメだ。それは何故か?
ドクロちゃんは画風こそ萌え絵で、作中のヒロインは美少女として描かれる。だが、ギャグパートでは美少女でも平等に酷い目に遭うのだ。とてもヒロインとは思えない姿になることも多々ある。
しかし、しかのこはギャグパートでも美少女が姿を保ったまま、どこかギャグに振り切れていない。絵を崩せば名作という訳ではないが、ギャグとして重要なギャップの要素に欠けているのだ。お笑いの緩急がないと言った方が正確だろう。この低レベルなギャグパートがドクロちゃんとの決定的な違いだ。
平坦でギャグにキレがないしかのこと違い撲殺天使ドクロちゃんは息もつかせぬ予測不能な展開、美少女にあるまじき醜態とギャグアニメのあるべき姿を示している。
「しかのこ」のようなレベルの低い後発作品が世に出た今、撲殺天使ドクロちゃんの評価はさらに高まるに違いない。
最後になるが「撲殺天使ドクロちゃん」未見の方にはぜひおすすめしたい。
2作をあわせても全6話と非常に視聴しやすく纏まっているし、テンポよくギャグが繰り出されるので、30分があっという間に過ぎていく超名作だ。
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