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「The Soul Taker 〜魂狩〜」新房監督の原点がここに
今回は「The Soul Taker 〜魂狩〜」について語りたい。
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本作は「化物語」「魔法少女まどか☆マギカ」のヒットで知られる、新房昭之監督の原点となった作品だ。
タツノコプロ制作、WOWOWで2001年に放送されていた。
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「シャフ度」という言葉をご存知だろうか。シャフト制作のアニメで、キャラクターが独特な角度で首を曲げる演出を指す造語だ。
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実は「The Soul Taker 〜魂狩〜」はこのシャフ度の元祖となったアニメなのだ。シャフ度の元祖が、タツノコプロ制作の作品とはあまり知られていないのである。
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本作は立体感を排した平面的なレイアウトのカットが多く見られる。
また、モノクロや原色が多用され、不自然なほどに強調された陰影なども後の新房作品に通ずる特徴だ。
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脚本やストーリー以前に、強烈なビジュアルで画を魅せるという、新房監督の手法は既にこの頃から完成されていた。本作はこの特徴的なカットが本編のほぼ全てを占め、いわゆる普通のアニメーション的映像はOPや最終話などで僅かに見られるだけだ。
因みに、ナースウィッチ小麦ちゃんシリーズのスピンオフ元も本作である。
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本作の魅力は新房監督の特徴的な演出だけではない。タツノコプロが得意とするヒーロー作品の遺伝子を受け継ぐ、SFオカルティックなダークヒーロー物としてのシナリオも魅力の一つだ。
ある日「伊達京介」は育ての母から刺されてしまう。その後、京介は生きたまま埋葬され、母は息絶えてしまった。墓から京介を助け出したのは「岬真夜」と名乗る美少女だった。
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真夜の部屋で看病される京介だったが、彼女が姿を消してしまう。
京介は彼女が姿を消した後、謎の男から生き別れた双子の妹とその分身「フリッカー」の存在を知る。実は真夜は妹の分身フリッカーで、多国籍企業桐原グループにより誘拐されていた。
妹の存在、そして真夜を救うべく京介は桐原グループの施設へ向かうのだった。そして、京介は母の死をキッカケに超人的存在「ソウルテイカー」へ変身する能力に目覚めた。
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実は京介と妹の「時逆琉奈」はミュータント同士の間に生まれた真のミュータント、すなわちエイリアンだったのだ。
エイリアンとは文字通り、宇宙より訪れた異形の地球外生命体であり、地球へ飛来した彼は種族最後の生き残りだった。エイリアンは子孫を残すべく、βアプリコンという人間をミュータントへ変えるウィルスを散布した。
その目的はミュータント同士を掛け合わせてエイリアンの雌を誕生させることだった。ソウルテイカーとはつまり、エイリアンとしての真の姿なのだ。
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桐原グループはエイリアンと結託して陰謀を巡らせていた。だが、琉奈は地球へ飛来したそのエイリアンを殺害し、成り代わることで桐原グループに潜伏していたのだ。彼女の目的は唯一の同族(エイリアン)である兄の京介と新たな世界を作ること。
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このように本作は、ソウルテイカーへ覚醒した京介が桐原グループの陰謀、そして黒幕である琉奈に立ち向かっていく物語となっている。
また、戦いの中で出会うフリッカーたちの多くが悲惨な目に遭うのも特徴だ。最初に出会った真夜は桐原グループに誘拐された後、人体実験を受けたあげく解剖されてしまう。
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本作はSF的要素が下敷きとなっている物語だが、緻密な設定に裏打ちされたシナリオというより、荒唐無稽で飛躍のある展開が目立つ。
特にフリッカーの設定があまり活かされておらず、深夜アニメ的に美少女を複数登場させる舞台装置でしかない印象だ。
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しかし、荒唐無稽で勢いのあるシナリオはビジュアルで魅せる新房演出と非常に相性が良い。最終決戦では妹を殺してでも止めると決心した京介と、琉奈の対決などアツいシーンも数多く存在する。
つまり、本作の正体はタツノコプロのハードなヒーロー路線を継承したリスペクト的作品なのだ。そこへ新房監督の斬新な演出が相まって、新機軸のダークヒーロー物として仕上がっている。
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さらに余談として、本作は人手不足などから苛烈な制作状況にあった。
その中でグロス請けとして協力していたシャフトと新房監督が縁を結んだ事で、後の新房×シャフト体制に繋がっていくのである。
そして、構図や陰影などに工夫した一枚絵に近いカットを散りばめる本作の手法は、人手不足の中でもクオリティ維持に有用なことから、後のシャフト作品にも受け継がれていくことになった。
したがって「The Soul Taker 〜魂狩〜」は00年代のアニメーション史を語る上でも重要な作品となっている。
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最後になるが、新房作品が好きな方には絶対にハマるアニメとなっている。むしろ、新房監督のファンを名乗るなら本作は絶対に抑えておきたい。
新房監督の原点が詰まった「The Soul Taker 〜魂狩〜」ぜひ、おすすめしたい。