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もう少しでシェアハウスは解散。
そんな時、大号泣事件は突然起きた。

🌊

外は大雨。
アオの弟、トモが遊びに来てくれているにも関わらず、爆弾低気圧で何もする気が起きない。
テーマパークに行くはずだったけど、ただの映画鑑賞会になった。
聞こえはいいけど、ただ寝そべってプロジェクターを見るだけの、ほぼ実家な空気感。

一瞬で1日は終わり、気づけばまた夜がきた。
トモは頃合いを見て、よいしょ!とかけ声を上げ、お邪魔しました〜と何もしないまま帰って行ってしまった。

開業の話もしたかったけど、今ではない気がして、私も何も言わなかった。
開業についてはこの日記に書いたと思う。

シェアハウスとはいえ、各々忙しく、アオ、クロ、私で過ごす3人の時間も久しぶりに感じた。

真っ暗なリビングにプロジェクターがまだ続きを映し出す。
結局「未来の10カウント」も全話一気見してしまった。

「ご飯どうする?」
そう言ってから早1時間が経過。
気づいたら22:00だった。

📽️

UberEatsは22:00までしか配達してくれない。
居酒屋さんに行くにもスッピンに部屋着。
近くのスーパーは23:00には閉まってしまう。

私たちは、そそくさと着替えてスーパーに向かった。

お得意の脳内0モードで夕飯を選ぶ。
もちろんお惣菜コーナーはガラガラ。
結局、成り行きで鍋パ→菓子パの流れに決まった。
忘れちゃいけないのは、今はもう夜中で、私たちはアラサーだということ。

レジにいる時にはもうすでに蛍の光が流れていた。
多分クロがお菓子を吟味している間に10分くらい経っている。
「食べたことのないチョコレートを食べたい」
クロはいつも突然、YouTuberの企画のようなことを言う。
アオはあからさまにうんざり顔で「はいはい」とクロが選び終わるのを待った。
なんだかんだで優しいところが姉っぽい。

🎄

家に着いたら何も言わずに支度をする。
クロは野菜を切って、アオはお鍋の準備。
私はゆっくり食器を用意する。
この場合は私が洗い物をすれば綺麗に役割分担が成立する。

何となく恋愛話や近況報告をしながら、手と口を動かしているうちに、〆のラーメンもペロリと食べ終わってしまった。

「お菓子食べよっか」

アオがそう言った時にはもうすでに24:30を回っていた。

クロがプロジェクターでYouTubeを開く。
何気なく「これ気になるね」と私が言った動画を再生する。
真っ暗のリビングに壁一面、天井にまでかかる大きさで、ディズニーシーの景色が映し出された。
オールゴールか、ピアノか、はっきりは覚えていないけど、とにかく心地よい、あのメロディー。
色んなディズニーミュージックが順番に心を癒してくれた。

1年間住んできて、初めてだったと思う。全員壁を見ながら話したのは。


アオはディズニーが大好きで、アオの影響で私ももっと好きになった。
前にも書いたけど、「ディズニーは未来の嫁としか行かない!」と言っていたクロも一緒に3人で行ったのはもう1年半ほど前の話。
私たちが、なぜか1番心を打たれたのはシンドバッド。
どうやら私たちは癒しに弱いらしい。

「ディズニーも、楽しかったね。」

癒しの音楽にのせられて、ポツリと言葉がでる。
この、“も” がミソで、自然とシェアハウスの終わりについて話す流れになってしまった。

ちょっと空気を紛らわせるように、クロが吟味して選んだチョコレートを食べる。
「うわ、これは、2人は無理かも」
そう言われてアオと私も恐る恐るいただく。
カカオ95%が、一気に口の中を支配。
女子らしくない妖怪声で「なんこれぇ」と絶句する。
「俺は食べれるけど、好きではないかな。2人の味覚ももうわかってきた。」
真っ黒の部屋にクロの真っ白なドヤ顔が映えていた。

🌝

実は私だけ、この【終わり】を望んでいた節がある。
言葉にすると残酷だけど、それにはちゃんとした理由があって、
それについても、これからゆっくり記録していきたいと思っている。
私は、訳あって、こうして、いつか来るはずのシェアハウスの終わりを、静かに待ちながら、待っている間に、宝物の思い出をもらった。

3人で過ごす時間は、心から楽しかった。

「アオとクロは、自分の人生のために、自分の楽しい時間のために、シェアハウスの話を受けてくれたのかもしれない。でも、私は、2人のためを思って提案したのが始まりだったから、自分がこんなにも楽しい時間を過ごせるとは、あんまり思っていなくて。だから、私だけ、すごくラッキーだったかもしれない。」

今までの全てが込み上げそうで、目に涙を溜めながら、少しずつでる言葉を、自分自身もゆっくりと聞いていた。
みんなが鼻をすする音を背中に感じながら、壁一面に広がる、ディズニーの素晴らしい景色を見つめる。

人生は長いけど、ひとときも無駄な時間はなくて、今この瞬間は2度と訪れない、何よりも大切な時間であることを、いやでも思い知らされる、そんな時間だった。

気づけばお菓子もお白湯も全部なくなっていて、遮光カーテンの向こうに朝を感じた。
ちょうど、「星に願いを」を聴き終えたところだった。

みんなで眠りについたのは4:00ごろだった気がする。
きっと全員同じような夢を見たと思う。
次、3人でこんなにゆったりと過ごせるのは、この家を出た後になるかもしれない。


起きて、外に出た時、いつもより景色が綺麗に見えて、なんとなく立ち止まって2枚も写真を撮ってしまった。


今日はここまで。


アオ・・・同居人の女友だち
クロ・・・同居人の男友だち
トモ・・・アオの弟





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