あと25日

3人で家を出る。
なんでもない地下のレストラン街。
近くを通るだけで、あの日の記憶が一瞬にしてよみがえる。

前の日記に続く。

アオから来た連絡の内容はこうだった。

📱「ちょっと3人で話したい。私のせいで3人の仲が壊れたらごめん。」

私は、訳もわからないまま、とにかく友だちの一大事と言うことは把握。
こんな時、LINEのグループ名を【ほいこおろお】にしてしまったことを少しだけ後悔する。

正直、全く仕事どころではない。
なんのトラブルも起こらず仕事を終えて、無事3人の約束時間に間に合いますようにと、ただ、ただ願いながら、パソコンに向かった。

アオはこんなことも言っていた。

📱「これを機にもっと2人もお互いを知ってほしい。」

2人とは、私とクロのこと。

私はもともと、言葉の意味とか、人の脳のクセとか、ちょっと奥行きまでをみながら人付き合いをするタイプ。
だから、まだ知らない一面があることを踏まえた上で、クロのことを理解しているつもりでいた。
クロが私をどう思っているかなんて、友だちとして好きだと思ってくれているに違いないとしか思ったことがなかった。（今考えると自意識過剰にも程がある）

だから、なんだか、よくわからない、でも、その時がくるまで、わからない方がいいのかもしれない。そんな気もしていた。

🍚

【ほいこおろお】の通知。約束の時間が来る。
私はさっさとデスクを片付けて、仕事場から駅の改札に急ぐ。

待ち合わせ場所に着くと、絶妙な表情のクロと、涙を流すアオがいた。

「とりあえずどっかお店入ろっか。」

こういう時の私ってなんで笑顔なんだろう。
ちょっとだけ嫌いな自分だった。

なんとなく、定食屋さんに入る。
さすがに回鍋肉は提案できる空気じゃない。
とにかく友だちの一大事。私は何がなんでも友だちを救うぞ、という謎の意気込みで普通の定食を注文した。

そのまま、静かに時が流れた。

ー

私「で、どうしたの？」

アオ『いや、クロが、話たいことがあるらしい』

ん？一瞬混乱する。
それをなんでアオが言うのか。アオの話ではなかったのか。と状況が一切掴めない。


私「え、なに？何があったの？」

・・・

話があるはずのクロはだんまり。
なぜか話が始まらないまま、先に定食が来た。
とりあえず言いにくいことを言いたいのはわかる。
ただ、アオのピンチかと思っていたのに、クロが私に言いたいことがある…？
この状況がわからない。

別にお腹は空いてないけどとりあえず食べる。
しばらくするとアオが話し始めた。

アオ「こないだ、3人で電話したよね。あのあと、実はクロから電話があって、2人でも話したの。・・・」

それからしばらく、アオとクロは、少しずつ私に、私だけが知らないその時間の話をした。

🧛

アオ曰く、どうやらクロは私に対して怒っていた。
それを私に言えず、アオに話していたとのこと。

理由は、私が父にシェアハウスの件を、ちゃんと話していないと思わせてしまったから。そして、クロにちゃんと説明して、安心してもらうことも、そんな余裕もなかったから。だと思う。
時間が経つうちに、クロの中で私の言動に不信感が芽生えて、溢れたイライラを私に言い出せずにアオに助けを求めた。そんなところだった。

空っぽのお皿を、お店の人が下げてくれた。
1時間は余裕で経っていたと思う。

それぞれの気持ちを順番に話して、それぞれの想いを静かに聴いた。
気づけばアオだけじゃなく、私も泣いていた。

みんな、それぞれの言葉を使って、話し方も、言い方も、もちろん色々だったけれど、「みんなのことが大好きだよ」って違う表現で言っているように思った。

私は、自分のことをあまり話さないクロが、アオに気持ちを話したことは、嬉しかった。
でも、強くて要領が良さそうに見えるけど、実はトラブルに弱いアオのこと、クロは全然わかってない！とも思った。

2人が大好き故に、いろんな感情が混ざった涙だった。

❤️‍🩹

ぐちゃぐちゃの顔でお会計をして外に出た。
店員さんも引いてた。（ごめんなさい）
大の大人が定食屋さんで、しかもシラフで号泣ですから。仕方ない。

顔は酷いけど、
心はちょっとスッキリして、
2人のことはもっと大好きになっていた。

「私、クロのこと大好きだから
　怒らせて無駄な体力使わせたくない！
　一生傷つけたくもない！
　だからそう思わせてしまうなら、わざとじゃないし
　絶対誤解もあるはずだし、非があるなら謝りたい！
　だから、これからは私に思ったことは遠慮なく
　直接言ってほしい！」

クロは、その時、頷くだけで何も言わなかった。

寝る前、LINEでクロが締めくくる。

📱「今日から、シン・ほいこおろおだよ。」

その返信として、私はグループ名を【シン・ほいこおろお】に変更した。

私たちのLINEのグループ名は、思い出の出来事があるたびに変わるシステム。
その頃、シン・ゴジラが上映されている時期だった。

私シン・ゴジラ観てないけど、「これからもよろしくね」って意味で合ってるよね？

今日はここまで。