文徒ジャーナル vol.193
Index------------------------------------------------------
1)フジテレビにおける女性蔑視の企業文化
2)系列局・制作会社をも襲う不安にフジは応えられるのか?
3)フジテレビの「経営」が直面する危機について
4)讀賣新聞と講談社が「書店の活性化へ向けた共同提言」を発表!駄目だ、これは!!
5)ユーチューバー青木歌音に幻冬舎編集者が「冷たい言葉」で誤爆の顛末
6)日本人の価値観・消費行動は、確実にインターネットへシフトしている
7)「比翼の象徴」から「ゆふすげ」へ
8)最も人数が多いオタクは「アニメ」オタクで約681万人!
----------------------------------------2025.2.10-2.14 Shuppanjin
1)フジテレビにおける女性蔑視の企業文化
朝日新聞は2月5日付で「フジ側に5項目の点検と報告求める『要望書』提出 経営刷新小委員会」(西田理人)を掲載している。フジ・メディア・ホールディングス(FMH)の社外取締役で構成されている「経営刷新小委員会」が5項目に及ぶ点検と結果報告を求める要望書を提出したという。フジテレビとFMHの双方で社外取締役を務める文化放送社長の斎藤清人が報道陣に明らかにした。
《コンプライアンス確保の体制▽人権尊重の考え方と社内体制▽積極的な情報開示および対外説明による経営の透明性の確保方策▽平時および緊急時における社内の情報共有体制▽リスク管理体制について点検し、報告することを求めているという。また、フジテレビの改革プランの早期策定も合わせて要望したといい、斎藤氏は「視聴者やスポンサーへの説明の材料として改革プランというものを立ち上げて、対応していくことが、早期の信頼回復につながるのではないかというのが刷新委のメンバーの同一の思い」と報道陣に語った。》
https://digital.asahi.com/articles/AST2520W6T25UCVL00KM.html
「東洋経済ONLINE」は2月5日付で西山守の「フジ『日枝氏が辞任』でも"CMは戻ってこない"深刻」を発表している。それはそうだろう。まず求められているのが、日枝体制が生み出した企業文化を一掃することであり、そのために日枝の辞任は必須だということである。西山は書いている。
《3月末に第三者委員会の調査報告が発表され、経営陣が刷新され、社内だけでなく、社外からも経営者が招聘され、若手や女性が取締役に就任する。社内組織も改革され、通報窓口の稼働など、ハラスメント行為を防止する体制が整い、望まない会食への参加も求められなくなり――といった好ましい動きが確認されること。
さらに、それが世の中に広く知らしめられて、視聴者もスポンサー企業も「フジテレビは根本的に変わった」と見なされれば、CM再開の動きは本格化するだろう。
しかしながら、現在に至っては、日枝氏が取締役相談役に留任したままで、それが可能であるとは、ほとんどのステークホルダーが思っていない。》
https://toyokeizai.net/articles/-/856809
「PRESIDENT Online」は2月5日付で岡本純子による「日枝久氏"外圧"で相談役辞任でも役員は子飼いだらけ…経営陣刷新でフジは変われるのか」を発表している。
《なぜ、社長・会長を退いたにもかかわらず、権力を保持し続けることができるのか。フジテレビの事情に精通する関係者を取材すると、大きく2つの要因が浮上しました。》
《まず、人事権を駆使して、徹底した「オールイエスマン」体制を作り上げたことです。今回、フジ関係者は「フジテレビで幹部になり出世していく条件はただ一つ。日枝さんに気に入られるかどうかだ」と語りました。》
《聞けば、女性の場合は、主に日枝氏の秘書をした人が昇進するという不文律があり、現在の2人の女性役員のうちの一人も報道局勤務の後、秘書をしていた時期があるとされます(もう一人は総務省からの天下り)。》
《長期体制のもう一つの要因が、お金、情報、人脈の「上納」制度を確立させたことです。独裁体制の中で、お金を差配するばかりではなく、情報と人脈を利用して、その地位を盤石なものにしていきました。
「特に現執行陣の中には、報道局や系列の新聞社出身の人も多くいますが、彼らの多くが、政治家とのつながり、パイプ、人事やお金にまつわる社内外の情報を日枝さんに提供していくことで、気に入られていきました」》
https://president.jp/articles/-/91240
「JBpress」は2月6日付で元朝日新聞記者・宮崎園子の「『ご本人が…』会見で身内の日枝氏に敬語連発のフジテレビ、質問せず説教する記者、通底するのは『ムラ社会の論理』」を公開している。テレビは「日本語」をもって放送する以上、「日本語」を大切にしなければいけないはずなのだが、フジテレビの経営陣にはそれができないのだろう。そう彼らは「日本語の敵」なのだ。このことは何度でも指摘しておかねばなるまい。
《まず驚いたのが、一部の幹部が謙譲語を適切に使えないこと。身内に対して敬語的な表現を使うなんて。
会見では、37年間にわたって役員に君臨し続けているという取締役相談役(フジサンケイグループ代表)の日枝久氏が会見の場に臨席していないことに対する批判が記者側から噴出した。日枝氏に関する質問が向けられたとき、「(日枝氏から)お知恵を借りる」「相談役でいらっしゃいますので」「ご本人がご判断されること」などと、嘉納修治会長を中心に何度も敬語表現が飛び出したのだ。
「企業風土の礎を作っているのは間違いない」(金光修フジ・メディア・ホールディングス社長)という日枝氏は、彼らにとって「身内」の人間のはずだ。にも関わらず、その日枝氏について語るとき、本来外部の人に対して使うべき敬語を無邪気に使っていた。何の説明がなくても「企業風土」「企業体質」がどういうものか、伝わってきた。あまりにも、ウチソトの区別ができていなさすぎではないだろうか。
清水賢治新社長は日枝氏を「親戚のおじさん」などというカジュアルな表現で例えたが、甥っ子たちのビビりぶりは痛々しいほどだった。渦中の女性ではなく日枝氏をこそ守りたいんだな、この人たちは。世間からの批判よりも、日枝氏からの叱責を恐れているんだろうな。会見を見ていた多くの人がそう思ったのではないだろうか。》
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/86453
「アエラドット」は2月6日付で「加藤綾子アナに入社面接でセクシーポーズ要求…フジテレビの『性体質』を暴露していた女性アナ5人」(泉康一)を発表している。
《フジテレビの企業体質に焦点が当たる中、各所で掘り起こされているのが元フジテレビアナウンサーで“カトパン”こと加藤綾子アナ(39)が語っていた「セクハラ面接」だ。
「2017年7月に、当時、新人だった久慈暁子アナがMCを務める『クジパン』にゲスト出演した際のことです。加藤アナはフジ入社時の面接試験で、面接官から『セクシーポーズをしてください』と求められたと暴露。戸惑いながらもスカートの裾を膝上まで上げ、『エヘッ』と笑ったと明かしていました。加藤は笑い話として披露していましたが、このエピソードがここにきて注目を浴び、ネット上でフジ叩きの燃料となっています」(芸能記者)
加藤アナだけでなく、23年にフジテレビを退社した“ミタパン”こと三田友梨佳アナも、18年のバラエティー番組「志村の夜」にて、入社試験時に「ビヨンセのモノマネをして」とむちゃぶりをされ、腰を振る動作をして乗り切ったことを明かしている。》
https://dot.asahi.com/articles/-/249415
この記事でも女性アナウンサーに「パン」をつけて愛称としているフジテレビの社風についてタレントのフィフィが次のようにポストし、これが1800万回近く閲覧されている。
《フジの女子アナの名前の後ろに~パン~パンって付けて呼んでたアレって、ほんとなんの意味があったの?》
https://x.com/FIFI_Egypt/status/1879339532254167435
その本質的な意味は女性蔑視であり、女性社員の「性商品化」であったはずだ。「アエラドット」の記事はこうも書いている。
《1987年、1991年にそれぞれ発行された「アナ本」「アナ本2」という本では、“三人娘”と呼ばれた看板アナの有賀さつき、河野景子、八木亜希子による書き下ろし恋愛小説が掲載され、表紙には胸を半分露出した写真が使われていた。そこでは、八木が入社後の初仕事となるゴルフ大会のプレゼンターに「バニーガール」の格好をしてくるように言われ、ゴルフウェアにしてもらったことを述懐。有賀はアナウンス部の「Tさん」から「おはよう」のあいさつと共に肩を抱き寄せられていたことがつづられている。》
こうした企業文化に中居正広はつけ込んできたのである。
2)系列局・制作会社をも襲う不安にフジは応えられるのか?
「現代ビジネス」は2月7日付で〈【独自】「ある日を境に状況が一変、決壊したダムのように...」《フジテレビ問題・極秘資料》で明かされた「スポンサー撤退劇の全真相」【フジテレビ・ドキュメント】〉と〈【独自】「100社以上が一斉に動き出した…」《極秘内部資料》で浮き彫りとなったフジテレビ・スポンサー問題と「奇跡の復活プラン」〉を発表している。
《報道当初からドミノ倒しのように始まったスポンサーによる広告取りやめ騒動。内部資料によれば、まず先陣をきったのはソフトバンクだった。
「ソフトバンクは女性トラブルを最初に報じた『女性セブン』の発売日である昨年12月19日当日から中居正広氏の出演するCMの差し替えを検討。本人が出演している広告とあって他社よりも動きが早かった」(前出・フジテレビ関係者)
続いて、トヨタ、アフラック、ヤクルトのいずれもが1月8日以降の中居が出演する番組での自社広告を外す調整へ歩を進めた。》
《状況が一変したのは1月17日以降だ。きっかけはフジテレビによる1回目の会見だった。》
《「第1陣としてフジ関連のAC差し替えや番組提供外しの検討、打診など何らかのリアクションを取った主な出稿主はアイフル、ライオン、ライフネット生命、日産、佐川急便、三菱電機、第一三共、P&G、サッポロ、NTT東日本、スズキ、クボタ、積水ハウス、アイリスオーヤマ、サカイ引越センター、大塚製薬、メナード、住友不動産、レイクなど。いずれも記者会見翌日となる1月18日からの動きとして調整を始めました」(前出・フジテレビ関係者)》
《第2陣としてスポンサーらが動き始めたのは1月20日以降の広告出稿だった。広告代理店関係者が語る。》
《では実際、1月20日以降の調整に手を挙げた企業はどれほどだったのか。以下、内部資料を元に主な会社名を列挙する。》
《三井不動産、イオン、MS&AD、味の素、ゼリア新薬工業株式会社、あんしん生命、Google、リクルート、日本郵便、ホンダ、メルセデスベンツ、再春館製薬、ビックカメラ、飯田グループホールディングス、セブンイレブン、アサヒビール、タマホーム、ロッテ、住友不動産、東急不動産、エディオン、LINE、Indeed、JRA、大正製薬、日清食品ホールディングス、アートネイチャー、ソニー損保、花王、ファンケル、三菱地所、エステー、東日本旅客鉄道、マイナビ、明治、キューピー、第一生命、JT、ヤマダHD、
メナード化粧品、丸美屋食品、ローソン、任天堂、SMBCプロミス、アリナミン製薬、KDDI、シオノギヘルスケア、ハウス食品、タカラトミー、ブルボン、リクルート、東洋水産、第一三共ヘルスケア、プリマハム、山崎製パン、ZOZO、楽天銀行、住友生命、キリンビール、メルカリ、ライオン、第一生命、サントリーホールディングス、ファミリーマート、モスフードサービス、シチズン、カネボウ、日本ケンタッキー・フライド・チキン、日清オイリオ、P&G、大和ハウス…(順不同)。》
https://gendai.media/articles/-/146373
https://gendai.media/articles/-/146375
朝日新聞は2月6日付で「フジテレビCM差し替え、別会社なのに痛手『系列局』支える分配金」(照井琢見 滝沢文那)を掲載している。
《フジ系列の準キー局である関西テレビも先月22日、30社を超えるスポンサーから、CMをAC広告に差し替えるといった対応を求められていると明らかにした。
別の系列局の社員によると、現状はフジ制作の番組でCMを流さない代わりに、自社が制作する番組でCMを流すよう広告主に依頼しているという。ローカルCMの出稿は再開しつつあり、現時点では「東京より落ち着いている」と話す。》
《一般に、全国で放送される「全国ネット」番組のタイムCMは、大部分をキー局が代表して営業し、広告主との契約を取り付ける。キー局はその売り上げの一部を、地方局に分配している。
この分配金は、「電波料」「ネットワーク配分金」などと呼ばれ、各局の収入の柱となってきた。関係者によると、小規模の局では、こうしたキー局からの分配金が、広告収入の3~4割を占める場合もあるという。》
《フジ制作番組へのタイムCMが減少すれば、フジからの分配金も目減りすることになる。フジが分配金を補填(ほてん)するといった対応がなければ、系列局の経営を左右する事態になりかねない。
系列局との連絡調整にあたるフジ社員は、「規模の小さな系列局もあり、うちの問題で打撃を与えてしまう可能性はある」と懸念する。系列局の社員も、「4月以降の状況は不透明だ」と話す。》
https://digital.asahi.com/articles/AST253SHMT25UCVL013M.html
「ORICON NEWS」は2月6日付で「番組製作社団体、フジに番組休止や仕様変更にともなう作業への対価の補償を要望 “異例”の懸念表明『即倒産につながるケースも』」を配信している。
《東京、大阪の主要テレビ番組製作会社が加盟する一般社団法人全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)が、フジテレビに対してレギュラー番組の予算や本数の確保、局都合による休止や仕様変更にともなう作業への対価の補償などを求めた。6日までに公式サイトで要望書を公表した。》
https://www.oricon.co.jp/news/2367855/
これがその「ATPからの要望書」。1月30日付である。
《いま、テレビ業界はかつてない激震に見舞われています。 ATPは、今回の中居氏トラブルに端を発する事案を業界全体として信頼回復に取り組むべき重要課題であると認識しています。
第三者委員会の設置や総務省の要請を受け事態の究明にご尽力の渦中と存じますが、日々番組を送り出す製作会社の使命を十全に果たすため、あえてこの書面をしたためる次第です。
番組の中止や広告の差し替えにともなう自主返金作業などフジテレビを大きく揺るがす事態に対して、ATPには会員社から数多く不安の声が寄せられています。 納品済み番組の緊急再編集、取材先のキャンセルによる急な内容変更など、その影響は製作会社だけでなく撮影・編集などの協力会社にも及びます。現場スタッフの疲弊につながる過重労働も避けなければなりません。零細企業も多いATP会員社にとって、番組終了や発注キャンセルが即倒産につながるケースも容易に想定されます。
4月改編を目前にATPとして以下の項目につきまして特段のご配慮を要望致します。
○レギュラー番組の通常予算や本数の確保。
○局の都合による休止や仕様変更にともなう作業への対価の補償。
○予算一律カットなどを行わず双方で適正な製作取引を目指す。
○4月編成の見通しを早期に提示いただく。
ATP40年の歩みを振り返れば、フジテレビの番組から日本のコンテンツ産業を支える製作会社の多くのトップクリエイターを輩出できた事は私たちの誇りでもあります。 その豊かな製作土壌を将来にわたって維持するためにも、信頼の早期回復を切に願っております。 要望をご理解いただき、何卒ご配慮のほどよろしくお願い申し上げます。》
https://www.atp.or.jp/rights/pdf/request_20250130.pdf
3)フジテレビの「経営」が直面する危機について
「NHK NEWS WEB」は2月5日付で「フジテレビ副会長 民放連の遠藤会長が会長職辞任の意向を表明」を公開している。
《中居正広氏と女性とのトラブルをめぐる一連の問題を受けて、フジテレビの副会長で民放連=日本民間放送連盟の遠藤龍之介会長が会長職を辞任する意向を表明しました。》
《遠藤会長からは「フジテレビの出演タレントと女性に関する一連の事案により、私が民放連会長を続けることは適切ではないと考えている。後任の会長の選定手続きを速やかに進め、次期会長に職務を引き継げるようになった段階で会長職を退きたい」という申し出があったということです。》
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250205/k10014713551000.html
遠藤がフジの役員陣で唯一まともだという評価を抱いていたのは私だけではあるまい。既に第三者委員会の報告書が提出されたらフジの副会長を辞任すると発表していただけに別に驚きはないのだけれど。
「M&A Online」は2月6日付で「【フジ・メディア・ホールディングス】成功した不動産事業の買収が『物言う株主』の標的に」(M&A Online 編集委員・糸永正行)を公開している。
《ダルトンは不動産事業を抱えるフジのグループ体制を「非効率なコングロマリット企業構造」と批判した。同社に資産売却などのリストラに取り組めば企業価値の向上が見込めると主張。2024年5月にサンケイビルなどが持つ不動産の証券化や持ち合い株の売却で資金調達し、MBO(経営陣が参加する買収)を実施するよう要求した。この提案はフジが拒否している。
これはフジが不動産事業を買収したことが招いた事態とも言える。同社に不動産事業がなければ、ダルトンが手を出す可能性は極めて低かっただろう。》
《・・・フジとしても一部とはいえ大株主から不動産事業に厳しい目が向けられた以上、新たな収益事業を探さざるを得ないだろう。その手法としては、やはりM&Aになるはずだ。同社はこれまでも多くのM&Aを実施しており、これからも不動産事業に代わらないまでも「補助エンジン」となりうる新規事業の買収に乗り出す可能性が高い。》
https://news.goo.ne.jp/article/maonline/business/maonline-archives_fuji_media_hd20250206.html
「ニューズウィーク日本版オフィシャルサイト」の連載「加谷珪一 経済ニュース超解説」は2月5日付で「フジテレビ『最大の経営危機』、本番はむしろこれからか...市場は『今後』をどう見ている?」を発表している。
《番組を買い切るタイム広告については通常、2クール(2四半期)ごとに契約されることが多いので、このまま見合わせが続くと26年3月期の業績は悪化せざるを得ない。
仮に広告が2割を超えて減少したとすると、グループ全体で獲得している経常利益が吹き飛ぶ計算となり赤字転落の可能性も取り沙汰されるだろう。》
《同社が問われているのは深刻なガバナンスの欠如であり、現在、執行を担っている経営陣は問題の当事者かもしれない。とりあえずフジテレビの港浩一社長は辞任したが、こうした場合には、社外取締役らが中心となり事態を打開するのがグローバル市場の常識である。
社外取締役主導で確実に第三者委員会による調査を行い、経営責任をはっきりさせることが同社を復活させる最短距離といえるだろう。》
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2025/02/post-312_1.php
フジ・メディア・ホールディングスは2月6日付で「フジテレビ『再生・改革プロジェクト本部』設置の件」を発表している。
《本日、当社子会社の株式会社フジテレビジョン(以下、「フジテレビ」)は、同社常勤役員の会議(常務会)において、「再生・改革プロジェクト本部」(本部長:フジテレビ代表取締役社長清水賢治)の設置を決定しました。課題に真正面から向き合い、組織の在り方を見直し、信頼とブランドの再構築を目指します。
構成
当本部では、本部長の元、 「再発防止・風土改革」など複数のワーキンググループ (以下、「WG」)を設置します。
WG メンバーは、現場の率直な意見を反映させるために中堅・若手を中心に構成します。
あわせて外部の専門家の知見も取り入れながら、具体的かつ実効性のある改革を、本部長
が先頭に立って速やかに実行に移します。取り組みの流れ
当本部では、まず「再発防止・風土改革」に重点を置いて、取り組みを開始します。
本部長はすでに現場との話し合いを開始しており、意見や実態を広く吸い上げ、改革案に
反映していきます。誰もが働きやすく、個人の意思が尊重される職場環境を目指して、
人権意識に関する研修、内部通報制度の拡充 ・通知方法の見直し等、多岐にわたる項目を、目に見える形で変えていきます。今後の方向性
今回の事案では、フジテレビにおける「コンプライアンス」と「ガバナンス」の特に
運用面において、課題が見られました。当社とフジテレビは第三者委員会に調査を委嘱して
おりますが、必要な対策は自主的に進めつつ、今後の調査結果を踏まえて、より一層適切
な措置をとってまいる方針です。
また、当本部の取り組みに関しては、随時情報を開示していく予定です。》
https://www.fujimediahd.co.jp/pdf/DIIQS3xdTgaF3yqE.pdf
給湯器のキンライサーがフジテレビのCM放送を再開した。「X」に2月7日付でこうポストしている。
《フジテレビのCM放送を再開いたしました。
今回、フジテレビの関係者の皆様と直接お話をさせていただきました。報道の訂正がなされた一方で、いまだ議論の余地が残る点もあることを理解しております。また、第三者委員会の調査が進む中で、新たな事実が明らかになる可能性もあると認識しています。
しかし、私たちはフジテレビ様の中で誠実にこの問題に向き合い、より良い未来を築こうと努力されている方々がいることを知りました。
どのような困難の中にあっても、変わろうとする意思がある限り、そこには前に進む力が生まれます。今回のCM再開が、未来を信じて努力を続ける方々への励ましの一つとなることを願っております。
さまざまなご意見があることも承知しておりますが、私たちはこれからのフジテレビ様の歩みを見守ってまいります。》
https://x.com/kinliser/status/1887652499655737531
日本経済新聞は2月7日付で「SBIホールディングス系投資信託運用会社 フジ親会社の大株主に」を掲載している。
《投資信託「ひふみ」で知られる運用会社のレオス・キャピタルワークスがフジ・メディア・ホールディングス(HD)の株式を5.12%保有していることが7日、分かった。レオスが同日、関東財務局に大量保有報告書を提出した。1月20日から保有比率を段階的に引き上げている。保有目的について報告書では「純投資」としている。》
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC07A2G0X00C25A2000000/
「NHK NEWS WEB」は2月7日付で「SBIホールディングス系投資信託運用会社 フジ親会社の大株主に」を公開している。
《フジテレビの親会社の株式をネット金融大手「SBIホールディングス」系の投資信託運用会社が5%余り取得し、大株主になったことがわかりました。取得の目的は純投資だとしていますが、今後、株主としての動向が注目されます。
フジテレビの親会社「フジ・メディア・ホールディングス」の株式を取得したのは、SBIホールディングス系の投資信託運用会社「レオス・キャピタルワークス」です。
会社が関東財務局に7日付けで提出した大量保有報告書によりますと、先月20日から段階的に株式を取得し、6日時点で5.12%を取得したということです。》
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250207/k10014716381000.html
4)讀賣新聞と講談社が「書店の活性化へ向けた共同提言」を発表!駄目だ、これは!!
読売新聞グループ本社と講談社は、全国各地で書店が衰退し、無書店エリアが拡大している現状に歯止めをかけたいとして、2月7日付で「書店の活性化へ向けた共同提言」を発表した。書店は本と人とをつなぐ地域の文化拠点であり、豊かな想像力や独創性を育む国力の源と位置づけたうえで、次の項目を求めている。
・書店向けキャッシュレス決済手数料の引き下げを
クレジットカードなどのキャッシュレス決済の増加により、その決済にかかる手数料が、特に小規模書店の経営を圧迫している。
・ICタグで書店のDX化を
厳しい市場環境下にある出版業界では、DX(デジタル・トランスフォーメーション)化が遅れている。中堅以上の書店は多くがPOS(販売時点情報管理システム)レジを導入しているものの、街の小さな書店では導入されていない店もまだ多く、売れ行きや在庫の管理がままならない。棚卸し作業は、書店員自ら、あるいは店の発注を受けた外部業者が、手作業で行うところが多く、コストや手間がかかるため、年1~2回程度しか実施できていない。このため、取次会社や出版社との連携もなかなか進んでいない。出版社や取次では店頭の在庫を正確に把握できず、適切なタイミングで商品の補充ができない状況が生じている。
・書店と図書館の連携を
書店が減少していく一方で、図書館も自治体の財政難で図書購入費が減り、国民1人当たりの貸出冊数が減少している。書店も図書館も、住民にとっては「本との出会い」の場であり、いずれも重要な「文化の拠点」だ。両者が連携して読書活動の振興を担い、読書人口を増やしていく取り組みを進める必要がある。
・地方創生へ、新規書店が出やすい環境整備を
交付金を活用した書店活性化は、地域のにぎわい創出にもつながり、地方創生の趣旨に合致する。現行の交付金などを活用した書店活性化はもちろん、中小書店が活用しやすい支援制度の創設や、書店経営者に対する経営アドバイザーの派遣など、書店経営者と伴走するような支援策が求められる。
・絵本専門士など活用し、読書教育の充実を
「読書離れ」に歯止めをかけるには、本に触れる機会を幼児期から増やす必要がある。
https://info.yomiuri.co.jp/pressrelease/書店活性化へ向けた共同提言全文.pdf
「X」にはこんなポストが発表されている。
《今日の読売新聞はスゴイぞ。必読だ
まず6段抜きの1面トップで、読売・講談社提言「書店振興 官民で」--の記事
次いで3面に補足記事(と言っても1面すべて使用)
さらに、中面に2Pフルの特別面として「もっと詳細」なデータが載っています(写真は特別面より)。これは図書館に言って是非見て欲しい!!
https://x.com/Bunko_king/status/1887652835476783306
讀賣新聞オンラインは早速2月7日付で「書店振興策に賛同の声、林官房長官『省庁連携して活性化を推進』[読売新聞社・講談社提言]」を掲載している。
《読売新聞社と講談社が「書店活性化へ向けた共同提言」をまとめたことを受け、閣僚や書店関係者から賛同の声が上がった。
林官房長官は7日午前の記者会見で「書店は読書を通じて多様な価値観を学び、創造性を育む場として重要だ」と述べた。経済産業省は今春、関係省庁と「書店活性化プラン」を策定予定で、林氏は「関係省庁が連携して書店活性化を推進する」と強調した。》
https://www.yomiuri.co.jp/culture/20250207-OYT1T50075/
ところで讀賣新聞と共同で提言を発表した講談社は、私の記憶に間違いがないのであれば清武英利+魚住昭「Yの悲劇 独裁者が支配する巨大新聞社に未来はあるか」や「渡邉恒雄 メディアと権力」の版元であったのだけれど、そういう講談社ジャーナリズムの矜持は今や摩滅してしまったということか。
まあ講談社の「ええかっこしい」はお家芸なのだろうが、恰好をつける前に文庫やコミックスのシュリンクラップをやめるべきだし、正味を見直すべきではないのか。負担を他者に求める前に自らの身を切って範を示すという発想はないのだろうか。
「古本と新刊 書肆スーベニア」のポスト。これが現実だ。
《本屋の再興を謳うときに、人々が集い交流する「居場所」としての価値を挙げられることが多いけど、本屋ってそういう場所でした?
ここ十数年のイベント傾倒や独立系はともかく、関東の地方都市で育った店主は、普通の本屋で他人と交流をした経験はありません。》
https://x.com/shoshisouvenir/status/1888129995035627851
仲俣暁生がポストしている。
《いつまでこんなこと言っているのか。最初に「活字離れ」と言われたのは半世紀前、団塊世代がマンガを読むようになった頃で、活字は別に印刷を意味してない。自分たちに都合の悪い現象を「ナンチャラ離れ」というのは天動説である。
>インターネットの普及による活字離れ》
《提言してるのが読売と講談社つーのも嫌。》
《講談社は単体でも書店に対してやれることがあるのでは。(文庫のシュリンクラップやめるとか、正味を見直すとか)》
https://x.com/solar1964/status/1887618236088545512
https://x.com/solar1964/status/1887621324258091343
https://x.com/solar1964/status/1887622466597756967
正味については全く触れていない提言である。そういう「狡さ」も気持ちの良いものではない。
2月28日をもって閉店する清風堂書店で社会・人文・新書・ビジネス書を担当する谷垣大河のポストを講談社の諸君はどう思うのか。
《これについて私が思うのは、
(1)掛け率改善に手をつけないと根本的な解決にはならない。
(2)DX(タグ管理)はやるとしても大型店だけでいい。
(3)「文化の拠点としての本屋を」と言うけれど、書店員を育てる環境、安心して働ける環境の整備について触れられていない。》
https://x.com/Silver_Hammer6/status/1888174006756585845
小鳥遊書房の編集者・高梨治がポストしている。
《この最大手の一つの出版社と新聞社による書店振興のための共同提言を出されているので、ざっと読んでみて思ったこと。大手版元さんも小さな版元なみの正味にすればもっと書店は助かるのではないかというもので、そこから始めてはどうでしょうかね。》
https://x.com/nashishi036/status/1888000402186191342
三輪舎代表の中岡祐介はこんな連続ポストを発表している。
《これ読んだ。キャッシュレス手数料補助、図書館連携など、現実的な提案として評価します。ただ、やっぱり思うのは、書店に持続的かつ創造的な地域文化拠点機能を求めるなら、掛率改善がぜったい必要だということ。》
《書店員(書店主含む)は地域で暮らすひとのために試行錯誤して本を選んでいる。書籍の発行点数は90年代と比べてざっくり倍の7万点になった(実はもっと多いと思う)。DXが必要、というけど、本の仕入れはやっぱり人がやるものだ。本を選ぶ、売る工夫には人件費をかけることが必要。》
《書店員なのに本を買えない状況がある。編集者は本づくりのために、営業は本を売るために、本を買う。でも、書店員は満足に買えない。そもそも、低賃金すぎて生活が厳しい。努力が足らない?いやいや、価格も原価率も、なんなら仕入れできる数すら決まっている(売れ筋など)。》
《そんな状況で、どんな努力をしろと。今回の提言をした人たちに抜けている視点はこれに尽きる。ICタグ要らない(これ上の人好きだよね)から3パーセント掛け率改善してほしい。あるいは、とりあえず売れ筋の本を必要な数量を送ってほしい。どう優しめに見ても適切な配分ではない。》
《「適切な配分」というのは、優遇してくれってことじゃなくて、版元にとっても取次にとっても、単純に売り逃し、機会損失になっているよと、言いたい。返品が怖いなら、初回だけでも買切にすればいい。》
https://x.com/yusukenakaoka/status/1888098082833019015
~
https://x.com/yusukenakaoka/status/1888098092643483943
本屋ライター・和氣正幸もポストしている。
《読んだ。調整しながら全部やれば良いと思う。でも、掛け率の話がまったくないし、大きなところがやるのなら大きな構造に手をつけないと意味がないとも思うのよ。》
https://x.com/wakkyhr/status/1888215978397610009
有志舎・永滝稔がこんな提言をしている。
《講談社と読売新聞社による「書店振興のための共同提言」。
私からすると、読書を広めるために「絵本専門士や認定絵本士、読書アドバイザーを派遣する」とか、他人を遣いものにするのではなく、大手出版社の編集者自身が街に出て読書会などを開いたらどうなのか、と思う。》
https://x.com/yushisha/status/1887716641796190293
講談社に求められているのは「提言」ではなく、正味変更の「決断」であろうし、読書推進のための自らの「行動」ではないのか。この提言で講談社はどんな「痛み」を負うというのだろうか。自らの「痛み」は回避し、「痛み」が想定できるとしても、それは他人任せの「提言」に感動するほど私はナイーブではない。それともキャッシュレス決済の手数料の減額分を講談社が負う覚悟でもあるのだろうか。
ローカル・カルチャーマガジン「IN/SECTS」編集長・松村貴樹のポスト。
《僕の読み違えかもしれないけど、全部他責じゃない? これ。》
https://x.com/quishe9/status/1888204064925847576
松村は読み違えてはいない。
くれブックス合同会社の久禮亮太は冷静にポストしている。
《読んでいます。1~5の提言それ自体はもう15年か20年は同じことを話題にし続けているように思います。それを具体的な段階に落とし込もうとすると、出版社も書店も、大きなところと小さなところの事情がかなり違うという課題があって、どこを取っ掛かりにするべきかわからないままに年月が過ぎている感…》
https://x.com/ryotakure/status/1887741224347738478
京都市北白川でシスターフッド書店kaninを運営している京極祥江のポスト。
《うーん、手数料下がるのはうれしいけど数十円だし、タグも要りません。それより普段は独立書店向けの小取次に卸してる講談社が、ものによって「この本は不扱い」にする方がダメージ大きいです。最近出たフェミニストの本、仕入れたかったなー。》
https://x.com/sachiekyogoku/status/1888228810019238208
冒険研究所書店店主・荻田泰永もポストしている。
《一通り読んでみたけど、目新しいことは特に書かれていなかった。
言ってしまえば、分かりきっていることを再確認しているような感じ。
具体的な大胆な提言があるかと期待したけど、なんのための提言だったのだろうか。》
https://x.com/ogitayasunaga/status/1888026431030210902
ゴン太郎のきつ~いポスト。
《こういう上から目線の版元意識が、書店を苦境に追いやってる要因ではないのか?一冊あたりの販売利益率を書店側にもう少し還元するとか、なぜ言えん?》
https://x.com/gonzaburo1011/status/1888238013945380959
これは提言とは言えない代物なのではないか。そう本音では思っている書店は決して少なくないことだろう。
5)ユーチューバー青木歌音に幻冬舎編集者が「冷たい言葉」で誤爆の顛末
日刊スポーツは2月7日付で「性被害告発のユーチューバー、幻冬舎編集者の“誤爆”不問に『人間誰しも裏の顔があるし…』」を掲載している。
《お笑いコンビTKO木下隆行(53)から性被害を受けたと告発したユーチューバー青木歌音(32)が7日、X(旧ツイッター)を更新。幻冬舎の編集者による“誤爆”投稿について言及した。
青木は、木下をめぐる件で、自身に対して幻冬舎の編集者がXで「冷たい言葉」を投げかけるも、すぐに削除していたことを一般Xユーザーの投稿から知り、「ポストでもこのような書き込みしてる方いるので余計に気になってます 気にしすぎならごめんなさい、、!」などと投稿していた。》
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202502070000416.html
幻冬舎の編集者・箕輪厚介が
《僕じゃないです。》
https://x.com/minowanowa/status/1887647734439743638
と否定したうえで、青木にこうポスト。
《その編集者から連絡するように言いますね。》
https://x.com/minowanowa/status/1887648106571047402
これに青木がリプライ。
《ご対応ありがとうございます。
申し訳ございませんでした。》
https://x.com/memory_kanon/status/1887655695010635959
改めて青木歌音がポストしている。
《幻冬舎の編集者さんが
私に対し誤爆したポストのスクショ頂きました。
※箕輪さんではありません。
相手は恐らく裏アカでポストするつもりが
本垢でポストしてしまって即削除したような内容です。
人間誰しも裏の顔があるし
失敗する事もあるので仕方ない!!!!!
水に流します!!!!!!!》
https://x.com/memory_kanon/status/1887661334655082600
その日のうちに青木はこうポストするに至る。
《幻冬舎の編集者さんから謝罪DM頂きました。
私はすでに水に流してます
そんな事よりも幻冬舎から書籍デビューする事になりました!!!!!!!!!
書籍タイトル「野球少年が女子アナもどきになるまで」》
https://x.com/memory_kanon/status/1887687173232902561
書籍デビューは冗談のようだ。青木のポスト。
《※書籍デビューしませんよ?!!!》
https://x.com/memory_kanon/status/1887689525591482382
この疑問符が気になるところだ。ま、真相はこういうことであるらしい。
《書籍デビューは冗談ですよ
ツリーにもデビューしませんと書いてますがDMにも祝福メッセージを頂いてしまったので念の為。
幻冬舎の編集者さんを許す代わりに
いつか書籍デビューさせてね?!と謝罪DMにラフに返信したって流れです、、笑》
https://x.com/memory_kanon/status/1887725638565695844
箕輪厚介は「X」でTKO木下とは絶交することを表明した。今回、箕輪厚介は「広報」として良い仕事をしたと言えるのかもしれない。
ちなみに青木歌音は「X」のプロフィール欄に性分化疾患で生まれたことを記している。これは青木が「X」に 2024年8月15日付で発表したポスト。
《懐かしい写真出て来た。
私が男として生きるのを諦めた直後の頃の写真。
専門学生の時。
染色体検査で性分化疾患が判明し
病院の先生から「あなたはこの先どちらの性別で生きたいですか?」と言われた直後の時。
もうすでにその頃には
男として生きる自信を失ってた。
それに私が男性らしくなるには
乳房切除手術と死ぬまで男性ホルモン治療が必要と言われた。治療を始めたら声変わりが起きて身体も男性っぽくなると。
本当は男として生きたかったけど
中学生の頃からこの身体で生きてたからか
逆に変化を恐れてしまった。
先生も私には男性より女性として生きた方が
難しくないと言って来た。
その選択をした後の写真だから何だか吹っ切れてる。メイクをするのもブラジャー付けるのも屈辱的でしか無かったのに。》
https://x.com/memory_kanon/status/1823991718951444634
6)日本人の価値観・消費行動は、確実にインターネットへシフトしている
野村総合研究所は、「生活者1万人アンケート(10回目)にみる日本人の価値観・消費行動の変化」を発表している。
「生活者1万人アンケート(10回目)にみる日本人の価値観・消費行動の変化」(野村総合研究所)
https://www.nri.com/jp/knowledge/report/files/000041825.pdf
この調査は、1997年から実施されていて、全国の満15~79歳の男女個人(2009年調査までは満15~69歳としていた)を対象に、訪問留置法により調査したものだ。つまり、インターネットの利用者だけが調査対象ではないので、結果に回答者のデジタルリテラシーによるバイアスが少ないと見ていい調査だろう。
この調査では、「景況感・生活価値観・生活不安」「働き方・就業価値観」「余暇・チャネル利用」「消費価値観・消費スタイル」「情報利用行動」について尋ねている。長期にわたる消費者の価値観やライフスタイルの変化が可視化されており、一見の価値がある。
この中で、メディア利用時間の変化という項目があるので、それを紹介しておく。
《
利用情報端末の変化
・スマートフォン利用は70代まで含めた生活者全体で9割に迫っている。
・スマートフォンの普及が60代において9割程度、70代でも2/3以上に達しており、シニアにおける普及が急速に進んでいる。
メディア利用時間の変化
・テレビの視聴時間は、特に若年層を中心に大きく減少している。さらに、2024年には今まで維持していた高年齢層でも視聴時間が減っている。
・コロナ禍時に特に大きく増加したインターネット利用時間は、2024年調査においてもさらに伸長している。
消費の際の情報源
・購入時の情報源として、さらにマス媒体の利用は減少し、インターネットによる情報収集傾向は強まっている。
・「いつものお店でいつもの消費」をする傾向が高い。その場でスマホで情報収集を行う傾向は上昇しているが、気に入った商品の情報を発信する行動は限定的。
》
インターネットを利用する上で行われる個人情報の登録についての消費者の意識についても調査をしている。
《
・利便性が高まる等のメリットがあれば個人情報を登録してもよいと考える人は増加しており、過半数を超える。
・個人情報登録意向は40代~60代にて大きく増加している。
》
かつてなんとなく不安に思っていたインターネットサービスで個人情報を登録することに対する懸念は薄れつつあるようだ。大規模な情報漏洩は盛んに報じられているが、それによる実害もあまり感じていないのか、それともそうしたことには慣れたのか。それよりも、サービスの利便性を得るためには、個人情報と引き換えてもいいという考えが浸透してきたと捉えるべきか。いずれにしても、これらの調査結果から、若年層からシニア層まで、情報はインターネットから得るのは当たり前になっていることがわかる。
7)「比翼の象徴」から「ゆふすげ」へ
「比翼の象徴」全3巻が完結した際に専修大教授・武田徹は次のように書いている。
《国民の象徴となる新しい天皇・皇后像を模索した明仁天皇と美智子皇后の姿を上中下三巻本で緻密に描き出す。敬称を安易に使わず、客観的な歴史記録に徹しようとする文体が印象的だ。優れたジャーナリストの手による平成皇室史の完成を最も喜ぶのは上皇、上皇后自身ではないか。》(12月22日付北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1104132/
「比翼の象徴」を書いたのは井上亮。こんなプロフィールの持ち主だ。
《1961年大阪生まれ。86年日本経済新聞社に入社。社会部で警視庁、法務省、宮内庁などを担当。現在、編集委員(皇室、近現代史担当)。元宮内庁長官の「富田メモ」報道で2006年度新聞協会賞を受賞。著書に『非常時とジャーナリズム』(日経プレミアシリーズ)、『天皇と葬儀』『焦土からの再生』(ともに新潮社)、『熱風の日本史』(日本経済新聞出版社)、『忘れられた島々「南洋群島」の現代史』(平凡社新書)、『昭和天皇は何と戦っていたのか』(小学館)、『天皇の戦争宝庫』(ちくま新書)、共著に『「東京裁判」を読む』『「BC級裁判」を読む』(ともに日経ビジネス人文庫)がある。》
https://www.heibonsha.co.jp/author/a93597.html
「比翼の象徴」を書くに相応しいジャーナリストだが、「比翼の象徴」にはプロデューサーがいたのではないかと私は想像している。
「比翼の象徴 明仁・美智子伝 上巻 戦争と新生日本」が刊行されたのは2024年7月、「比翼の象徴 明仁・美智子伝 中巻 大衆の天皇制」が刊行されたのは同年9月、「比翼の象徴 明仁・美智子伝 下巻 平成の革命」が刊行されたのは同年11月、そして美智子の歌集「ゆふすげ」が刊行されたのは今年1月。二か月ごとの刊行だ。版元は「比翼の象徴」も、「ゆふすげ」も岩波書店である。日本のリベラルの象徴のような出版社から二か月ごとに刊行されたのは偶然ではあるまい。そして、この4冊をプロデュースしたのは明仁と美智子ではなかったのか。わざわざ版元に岩波書店を選んだことも含めて、ここに明仁と美智子の「政治」を読み取っても良いかもしれない。
「比翼の象徴」の書評を掲載しているのはリベラルな論調と言われている東京新聞と朝日新聞であって、産経新聞と讀賣新聞ではない。今後、産経や讀賣が書評を掲げるかもしれないけれど・・・。
東京新聞に「比翼の象徴」の書評が掲載されたのは1月12日付。評者の平山周吉はこう書いている。
《完璧を期した伝記が、生前に刊行される。「生前退位」した人にふさわしい出版といえる。タイトルからわかるように、上皇と上皇后が、良き夫妻として対等に描かれる。それだけでも天皇伝として画期的だが、真の主役は、むしろ上皇后なのかもしれない。そこにも説得力を感じさせる。》
平山が鋭いのは、この書評をこう結んでいることである。
《天皇の歴史観で一番びっくりするのは、明治天皇に対する評価の厳しさで、反対に孝明天皇を高く評価した。この独自過ぎる歴史観に危うさはないか。柔和な天皇の奥にある自信と頑固さは、その能動的天皇観から発しているのか。そんな重い問いもが浮かんでくる傑作伝記だ。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/378644
平山の書く「能動的天皇観」と私のいう「政治」との間にさしたる距離はあるまい。
朝日新聞は2月8日付で御厨貴による書評を掲載している。
《・・・「大衆天皇制」と言われたように、明仁さんと美智子さんの時代は、メディアを通してのイメージ作りとそれの国民への反映を常に考えねばならぬ。「平成流」を生み出した明仁さんと美智子さんは「象徴学」的に言うならば、国民に寄り添う様々な試みを、天皇皇后になる前の時代から、長く行っている。それはあの戦争に苦しんだ人々、特に沖縄、それから病気や障害で苦しむ人々、およそ社会的弱者のところへ何度となく足を運んでいる事実に現れている。ひざまずいて同じ目線で手を握りながら積極的に声をかける姿が浮かんでくる。美智子さん主導でやがて明仁さんもそうなっていく。》
https://book.asahi.com/article/15617542
二人が安倍晋三という政治家を苦手にしていたであろうことは容易に想像がつくというものだ。
8)最も人数が多いオタクは「アニメ」オタクで約681万人!
いまや「オタク」という言葉にネガティブなイメージを持つ人はいないだろう。誰しもが何らかの「オタク」になっている時代だ。
矢野経済研究所は、国内の「オタク」に関する消費者アンケート調査を実施し、「オタク」人口の拡大推計のほか、分野別の「オタク」層の属性(特性)や活動状況などを分析した結果を公表した。この調査の対象とする分野は、次の31分野である。いずれもメディアビジネスとも関連が深い分野である。
《
1.アニメ 2.漫画 3.ライトノベル 4.同人誌 5.プラモデル 6.フィギュア 7.ドール 8.鉄道模型 9.アイドル 10.プロレス 11.コスプレ衣装 12.メイド・コスプレ関連サービス 13.スマートフォンゲーム 14.家庭用・コンシューマーゲーム 15.PCゲーム 16.インディー・同人ゲーム 17.アナログゲーム 18.トレーディングカード(ゲーム) 19.ボーイズラブ 20.音声合成 21.トイガン 22.サバイバルゲーム 23.ラジコン 24.ミニ四駆 25.ミニカー 26.声優 27.PC組み立て/電子工作 28.ディズニー関連 29.VTuber 30.特撮 31.2.5次元ミュージカル
》
この調査では、「オタク」の人口を拡大推計し、さらには一人当たりの年間消費金額を求めている。
人数の上位は次のようになっている。
《
アニメ:約681万人
漫画:約582万人
アイドル:約392万人
スマートフォンゲーム:約266万人
家庭用・コンシューマーゲーム:約244万人
》
一人当たりの年間消費金額の上位は次のようになっている。
《
メイド・コスプレ関連サービス:146,945円
PC組み立て/電子工作:110,576円
アイドル:109,476円
2.5次元ミュージカル:83,233円
ディズニー関連:81,482円
》
「『オタク』に関する消費者アンケート調査を実施(2024年)」(矢野経済研究所)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3668
ちなみに、「オタク」人口が多いアニメと漫画の一人当たり消費金額は他と比較すると控えめだ。
《
アニメ:19,580円
漫画:18,546円
》
その理由は、他の分野と比較して、単価が低いからか。ただし、これはあくまでも平均金額なので、全体の人数が多いぶん、ライト層も含むことになり、その数字と合算されて薄まっている可能性もある。この調査では対象外だが、アニメや漫画は国外にも「オタク」が多くいることも忘れてはならない。
「オタク」は消費を支えている。それぞれの分野のニーズに応えることができるコンテンツの開発は、次のビジネスチャンスとなる。