本日の「読了」
柳田由紀子『宿無し弘文 スティーブン・ジョブズの禅僧』(集英社インターナショナル 2020)
白井聡『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社 2020)
大野和基編『コロナ後の世界』(文春新書 2020)
※正確には本日の読了は最初の一冊。ほか2冊は昨日までの読了。
最初の一冊は、禅僧の伝記だが、副題にあるようにアメリカアップル社のスティーブン・ジョブズと関わりがあった。もっとも禅僧にとっては、ジョブズといえども衆生の一人にすぎなかったのだろうと思う。この禅僧の波乱万丈というか、書中に語られる「自ら願って地獄に堕ちる」ような生涯が、堕ちながら禅僧が希求していた色即是空を体現していたとわかる(個人の感想です)のは、最期の一頁。ネタ晴らしになるので書けないが、筆者が描く「地獄への道行きに」付き合ってきた心が一瞬にして開放された。
二冊目は、手にしてから読了までにずいぶんと時間がかかってしまった。著者は最近、過激な言動でネットを騒がせた。「Web論座」の論考は読んだけれど、これまで何冊か手にしてきた著書からすると、ちょっと言葉が「らしく」ないと感じた。おかげで、「論理」では「かなわない」言論・知識人に格好の餌を与えたことは残念。
それはさておき、面白かった。
大学時代、この人にマルクス経済学を教えてもらっていたら、楽しかっただろうし、身にもついていたかも?
書名には「武器」とあるが、「道具」のほうがしっくりくる。
私たちの日常である消費経済社会で感じる不合理や生きづらさの根源が不明で探りあぐねているときに、視点や尺度を強制的に変えさせるゴーグルとでも言ったらよいのだろうか。
気軽に読めて、古書店には売りたくない1冊。
三冊目は、「流行りもの」につい手を出しただけ(笑)。もともとはコロナ前の月刊誌掲載の記事に「コロナ」後に追加取材した部分を加えたもの。だから、必ずしも「コロナ」後ではなく、それぞれの専門分野からの近未来の話。
個人的には、コロナ前の世界像もしっかりと認識できていないので、コロナ後もないものなんだが、編者が登場する顕学に共通する発言として「コロナが与えた影響の最大なるものは、ゆっくりと思考する時間を持ったということ」というのは、凡人のおっさんも同じ。
「死を想え」となると「重たい」が、ドアの向こうにその気配を感じざるを得ないを共有したことは、劇的にこの世界を変えないまでも、じわじわと蝕み変容させる。問題は、おっさんがその変容の果てまで「付き合えるか」だが……(笑)。
では、また。
[2020.09.16. ぶんろく]