引退には早すぎる、キレキレのイーストウッド最新作『陪審員2番』【映画レビュー】
★★★★★
鑑賞日:1月9日
劇 場:自宅 U-NEXT配信
監 督:クリント・イーストウッド
出 演:ニコラス・ホルト
前作『クライ・マッチョ』が脱力しまくりのゆるゆる映画で、イーストウッドのキャリアも晩年に差し替かかり良くも悪くもレイドバックしてきたなと思っていたが、ここに来てバリバリの緊張感溢れる傑作を拵えてくるとは恐れ入った。
法廷ミステリーということもあり、ストーリーも画面に映る映像も地味だ。
ひねりやどんでん返し、驚きの展開がある訳でもない。
いや、画面には真実しか映らない。
起こっていることは現実であり事実である。
主人公の回想も妄想や想像ではなく、実際に起こったことである。
前半のかなり早い段階で、ある種の結論が判明し、それは揺るがない。
その真実を主人公であるジャスティン(ニコラス・ホルト)が完全に認識してしまうため、彼はとことん苦しむ。
果たして、真実は正義なのか。
この事件を担当する検察官と弁護士曰く、
「正義のシステム、完璧ではないが最高のもの」
判決が出たとはいえ物語は終わらない。
ラストシーンの切れ味は絶品だ。
これを94歳のお爺さんが撮ってしまうのが凄すぎる。
引退なんて言わないでほしい。
本人も別に明言している訳でもないっぽいし。
まだまだイーストウッドの映画を見たい。
(text by President TRM)