「ペニー・ベンジャミンって誰?」女優ジェニファー・コネリー愛を語る。 其の②迷宮・ジェニコ編 『ホット・スポット』『恋の時給は4ドル44セント』『ロケッティア』『愛の奴隷』『狼たちの街』『ダークシティ』【映画レビュー】
決して順風満帆だったわけではないこれまでの女優人生を大きく三つに分けて
① アイドル・ジェニコ
② 迷宮・ジェニコ
③ 復活・ジェニコ
レビューと共に語りたい。
1970年12月12日、アメリカ・ニューヨーク生まれ。父親はアイルランド、ノルウェー系でファッションデザイナー、母親はユダヤ系でアンティークのディーラー。10歳の頃、両親の知人の勧めでモデルの仕事をスタート。CMや雑誌の仕事を経て、1982年にテレビドラマ出演して女優デビュー。そして1984年「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」でヒロインの少女時代役を射止め、映画デビュー。1985年「フェノミナ」主演以降アイドル的な人気を得た。1986年には日本語でレコード発売(「愛のモノローグ」)。
アート系の名門校、セント・アンズ・スクール卒業後、1988年イェール大学に進学して英文学と演劇学を学ぶ。2年後、スタンフォード大学に転入するも、卒業には至らず女優業に専念。英、仏、独、伊語を話す才女。
パナソニック(当時はまだナショナル)CM 歌声を聴いて♪
②迷宮・ジェニコ編
さて、90年代ジェニコは、女優業に専念し、コンスタントに映画出演を重ねていくわけだが、
正直リアルタイムで鑑賞していないものが多い。
ジェニコ愛を語ると言いながら、離れていたのだ。痛恨の極み。
もちろん忘れたわけではなかったが、
当時のアルバイト先の店長の影響で、それまでは映画監督といえば、コッポラ、ルーカス、スピルバーグくらいしか知らなかったが、フェリーニ、ゴダール、ヴィスコンティ、キューブリック、カラックス、リンチ、ヴェンダース、ジャームッシュ、カーウァイ等々監督に傾倒していき、そんな中、観たいと思わせてくれる作品が少なかった。スカしてたなー。
だが、これは言い訳で、実のところセクシー路線に舵を切ったジェニコに戸惑っていたのだ。
女はいつも男の先を行くのである。敵いません。
どんどん大人になっていくジェニコに追いつけていなかった。だから距離を置いていたと思う。直視するのを避けていた。観たいくせに観たくないという男心(笑)
「ホット・スポット」(1990)を皮切りに惜しげもなく脱いでいく。まだ20歳。ファンとしては、眼福なのだが何とも寂しさもあり複雑だ。
とはいえアイドルらしさを残した作品もあり、口元がハート型になる愛らしい笑顔は健在。
後になって気づかされるのだが、この時期に培ったヌードも厭わない女優魂。
80年代はソフィー・マルソー、ブルック・シールズ、フィービー・ケイツらと競い合っていたが、90年代に入ると、ジュリア・ロバーツ、デミ・ムーア、メグ・ライアン、ウィノナ・ライダー、キャメロン・ディアス、サンドラ・ブロック(誰か忘れている気がするが)等々が台頭、ラブロマンス物、ラブコメ物も全盛に。
そんな中、落ちぶれたから脱いだわけでは無く、スタンフォード大を中退した時期、アイドルで終わらない、女優でやっていくという強い意志を感じた。
この後00年に入り、この時の10年が結実するのである。女優になるために必要な時間。すべてはジェニコの掌の上だ。
スゴいなージェニコ。
数年程遅れて鑑賞。
90年代日本ではバブルが崩壊し「失われた10年」が始まり、洋画では「タイタニック」「ゴースト ニューヨークの幻」「羊たちの沈黙」「「プリティ・ウーマン」「シザーハンズ」「氷の微笑」「スピード」「めぐり逢えたら」等々女優の存在感の強い作品も多くヒットした。
この時期のジェニコ出演作はB級映画ばかりと思っていたが、悪くない作品多数。ただヒット作には恵まれていなかった。アイドル的作品と演技派的な作品が入り乱れている。
「ホット・スポット」「恋の時給は4ドル44セント」(1991)この2作品は、今ではなかなか観ることが叶わず、20年程前に観た時の感想。
『ホット・スポット』(1990)
★★★★☆(ジェニコ度★★★★★)
アメリカ映画
監督デニス・ホッパー(2010年74歳没)
ドン・ジョンソン
ヴァージニア・マドセン(兄はマイケル・マドセン)
俳優としてのホッパーもいいが、(今回は監督に専念)監督ホッパーのいやらしさ全開の演出が光った。テキサスの田舎に男1人女2人。そこに事件は起こる。
主演3人がエロティックに魅せるフィルム・ノワール。商業的には失敗しているが傑作だと思う。弱冠20歳のジェニコの美しさにドキドキした。リアルタイムで観ておけばと後悔。
『恋の時給は4ドル44セント』(1991)
★★☆☆☆(アイドル・ジェニコ度★★★★★)
アメリカ映画
監督ブライアン・ゴードン
フランク・ホエーリー
脚本はジョン・ヒューズ(ホーム・アローン他/2009年59歳没・ヒューズ監督作「大災難」(1987)はコメディ映画マイベスト3に入るースティーブ・マーティン最高)
ショッピング・モールで深夜のバイトをする青年。そこへジェニコ、更に強盗が現れるドタバタ90Sコメディ。音楽も軽快。
ストーリーはどうでもよく、ただただ可愛いジェニコを観るためのアイドル映画。ローラースケートのシーン最高、木馬シーンはカオス(笑)。こちらはジェニコの眩しさにドキドキした。「ホット・スポット」と真逆のジェニコ。懐が深い。
『ロケッティア』(1991)
★★★★☆(アイドル・ジェニコ度★★★★★)
アメリカ映画
監督ジョー・ジョンストン
ビル・キャンベル
ティモシー・ダルトン
今ほどアメコミヒーローがいなかった90年代の、マーベルではなくディズニーの作品。
「ミクロキッズ」「ジュマンジ」のジョー・ジョンストン監督は、のちに「キャプテン・アメリカ/ファースト・アベンジャー」を撮るのだが、主人公の設定がキャプテン・アメリカで風貌はアイアンマンという時代を先取りしていた? ラブコメ+アクション映画。
第二次世界大戦直前のアメリカを背景にロケット・パック(ボバ・フェットが背負ってるランドセルタイプ)を手に入れた主人公が、空飛ぶヒーロー・ロケッティアになってガールフレンドを助けるために奮闘。
ハリウッド俳優、FBI、ギャング、ナチスそしてハワード・ヒューズ(詳しくは「アビエイター」(2004)参)を絡めて展開するストーリー。飛行シーンにチープさはあるが、クラシカルな雰囲気が世界観に合っていて、予想以上に面白かった。
憎めないイケメン、ビル・キャンベル、007俳優ティモシー・ダルトンは流石の存在感。そしてジェニコは安定の可愛さ。ジェニコとダルトンのダンスシーンは見惚れる。戦争絡みなのだが、爽快で家族でも楽しめる作品。
この共演をきっかけにジェニコとビルは婚約するが、のちに解消となる。少し切なくなる話だ。
『愛の奴隷』(1994)
★★★☆☆(ジェニコ度★★★★☆)
アメリカ/アルゼンチン ドラマ映画
監督ベティ・カプラン
アントニオ・バンデラス
先ずこのタイトルにこのジャケットが良くないな。完全にエロティックな方向に誘っている。確かにこんなシーンはあるが、しっかりとした社会派ドラマだ。
舞台は軍事政権下のチリ。ジェニコ演じる記者とバンデラス演じるカメラマンが、軍部の残虐な非道行為を暴こうとする。メロドラマ風な演出とスペイン語でなかったところが気になったが、二人のキャラクターは相性が良く好印象。奔放でまっすぐなジェニコがいい。バンデラスはセクシーだ。タイトルとジャケ写で損をしているが良質な映画。
「狼たちの街」(1996)
★★★☆☆(ジェニコ度★★★★☆)
アメリカ映画
監督リー・タマホリ
ニック・ノルティ
チャズ・パルミンテリ
ジョン・マルコヴィッチ
マイケル・マドセン
メラニー・グリフィス
ウィリアム・フリードキン監督の「L.A.大走査線/狼たちの街」とよく勘違いされるようだ。(確かに、こちらは劇場で鑑賞していたから、あれ?ジェニコ出てたっけ?ってなった)邦題が良くないな。原題の「Mulholland Falls」で良いのではと鑑賞して思った。
どんな圧力にも屈しないロス市警の特別捜査班「ハット・スクワット」の面々(ニック・ノルティ、チャズ・パルミンテリ、マイケル・マドセン、クリス・ペン)がある殺人事件を追うのだが、謎解きストーリーはイマイチ。4人組だが活躍するのはほぼニック・ノルティだけ。終始ハードボイルドな演出は及第点。ハット・スクワットの4人をはじめ、メラニー・グリフィス、ジョン・マルコヴィッチその他カメオ出演も多数あり豪華な俳優陣だが、何か物足らない。もっと面白く出来ただろうと残念だ。
冒頭から全てをさらけ出すジェニコに目が釘付け。
豪華な俳優陣の中、登場場面は少ないが、重要な役どころを身体を張って演じている。コケティッシュで美しい。
『ダークシティ』(1998)
★★★★☆(ジェニコ度★★★★★)
アメリカ映画
監督アレックス・プロヤス
ルーファス・シーウェル
キーファー・サザーランド
ウィリアム・ハート
監督はのちに「アイ、ロボット」を撮るオーストラリア出身のアレックス・プロヤス。
ゴシック調の闇に包まれた街ダークシティ。「チューン」とは何か?記憶喪失の主人公が謎を追うSFスリラー。この世界観好き。
今では珍しくないのだが、「マトリックス」より1年早く、「インセプション」より10年以上早く提示したのは凄いかも。チープな表現も多々あるが、そこがまたいい。カルトな人気があるのも頷ける。
「マトリックス」ヒットのせいで陰に隠れてしまった感はある、もったいない。
キーファー・サザーランドがハマり役。闇夜にジェニコの美しさが映える。海辺のテラスのシーンは、のちの「レクイエム・フォー・ドリームス」でデジャヴュする。「砂と霧の家」でも。海辺のシーンを撮らせたくなる女優ジェニコ(笑)
撮影時期は長男を出産したあとだろうか、母になったジェニコ。深みと美貌が増した。
「迷宮」と題したが、ジェニコ本人は全然そんなつもりはなくこちらが勝手に迷宮に迷い込んでいたと思っていた。
役者修行のために必要な時間だったに違いない。
迷宮に迷い込んだのはこちら側だったのだ。
そして2000年、衝撃の「レクイエム・フォー・ドリーム」が公開される。
③復活・ジェニコへ続く。(※近日公開)
(text by 電気羊は夢を見た)
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