ただただ、美しいだけの映画があってもいいのではないか『ぼくのお日さま』【映画レビュー】
★★★★☆
鑑賞日:9月23日
劇 場:伏見ミリオン座
監 督:奥山大史
出 演:池松壮亮・越山敬達・中西希亜良
日々、楽しみに映画を見に行っているだけなのに、妙に疲れることは無いか。
社会的なイシューを取り扱った内容がヘビーな映画、残虐な描写が映し出される映画、上映時間が長く肉体的にこたえる映画。
翻って、本作『ぼくのお日さま』は、近年稀に見るほどの美しさと温かさを持った映画だ。スクリーンに映る、ひたすら美しい光景にぼぉーっと見惚れてしまう。(上映時間も90分とコンパクトだ)
スケートリンクの窓から差し込む太陽の光、リンクをテラス青っぽい蛍光灯、フィルム的に少しざらっとオブスキュアに加工された画質も相まって、何とも穏やかでノスタルジックな気持ちにさせられてしまう。
役者陣も美しい。
ピュアという言葉では収まりきれない少年と少女の輝き。
吃音を持っていて野球とホッケーが苦手なタクヤ。
そのタクヤがスケートを始めるきっかけとなった、さくら。
真っ直ぐで、とにかくチャーミング。
本作の白眉は、この2人とコーチ役の荒川(池松壮亮 )の3人がスケートリンクを離れて郊外の凍った池?で練習をする場面。
ワチャワチャと戯れているだけの様な気がするが、幸福感でいっぱいにさせられた。
勿論、ただ綺麗で良い話で終わるわけではない。
子供らしい残酷さのため、苦く痛い思いを味わうことにもなる。
それでも余韻としては、清々しく柔らかく温かい気分に浸れる。
色々なタイプの映画があるが、たまにはこんな作品もいいのではないか。
(text by President TRM)