追悼オリビア・ニュートン=ジョン『グリース』【映画レビュー】
訃報のニュースが飛び込んできた。悲しい。
澄んだ歌声で日本でも広く愛された、歌手オリビア・ニュートン=ジョン。
ここでは、映画『グリース』(1978)の女優オリビアを偲ぶ。
『グリース』(1978)
★★★★★
アメリカ映画
監督:ランダル・クレイザー
ジョン・トラボルタ
オリビア・ニュートン=ジョン
歌手としてのオリビアではなく『グリース』のサンディで存在を知った。
歌もダンスもイケているオリビア=サンディに恋した。
トラボルタとのデュエットもキマッていて、サントラをヘビロテしていた。
公開当時オリビア30歳。出演者皆が高校生には見えないのだが、そんなことはこの映画の魅力の前では、些末なこと。
舞台はまだ麻薬もベトナムも知らない50年代、ゴキゲンに楽しいハイスクール・ミュージカル。
リーゼントとポニーテール、革ジャンにペチコート?ファッションもいい。プロムにダイナー、ドライブインシアター、パジャマパーティー、カーレース、ダンスパーティーそして卒業カーニバル。
アメリカの高校ってスゲーってちょっと憧れもあったりして。
明らかに相思相愛なのに、仲間の前では見栄を張っちゃう純な不良男子高校生ダニーと、こちらも純でまじめでキュートなサンディのもどかしい青春ストーリー。って正直ストーリーは二の次で。
本作品に否定的な人をたまに見かけるが(話がつまらない、演者が歳をとりすぎ等々)、頭固くせずに、スクリーンから溢れ出る青春エネルギーを楽しめばいいのだ。
時にそれが眩しすぎるために、受け止められず否定的になるかもしれないが。青春は短い、朱夏を生きる身としては懐深く受け止めたい。
当時劇場で観れておらず、水野晴郎の水曜ロードショー(日テレ)、淀川長治の日曜洋画劇場(テレ朝)をビデオに録画して、擦り切れるほど何度も観た。なので吹き替えも馴染みがある。
ラストの卒業カーニバルの覚醒サンディとそれに射たれたダニーの「愛のデュエット(You're The One That I Want)」、最高のエンディング。
オリビアとトラボルタのカップル最高。いいキャスティング。
サントラも最高。「愛のデュエット」「想い出のサマー・ナイツ」「愛すれど悲し」「グリース」等々ヒットした。
歌手として世界的に有名であったオリビアが『グリース』に出演することになったのは、プロデューサーのロバート・スティグウッドが空港で、ヨーロッパツアーに出るオリビアを偶然見つけ、一目ぼれして口説き落としたとか。キャリー・フィッシャーが候補に挙がっていたみたいだが、今となってはサンディはオリビア以外考えられない。
トラボルタは当時、スティグウッドと映画を3作つくる契約をしており、本作品は『サタデー・ナイト・フィーバー』に次いで2作目だ。2作とも大ヒットしたが、3作目はというと…『年上の女(Moment By Moment)』知らないなー。
再び共演した『セカンド・チャンス』(1983)は興行的には大失敗。
だがサントラは良かった。「運命のいたずら(twist of fate)」、トラボルタとのデュエット「Take A Chance」がヒット。
2012年には約35年ぶりに、トラボルタとデュエット・アルバム『The Christmas』をリリースした。
トラボルタは80年代に入り、作品に恵まれず『パルプ・フィクション』(1994)で復活するまでの十数年間低迷する。16歳の息子を亡くし、2年前妻ケリーを乳がんで亡くした。(パンフレットを読むと当時の恋人を白血病で亡くしている)
オリビアは80年代もヒット曲を連発するも、1992年乳がんで闘病中と公表。
以後はがん治療の啓発活動に力を入れた。環境保護活動、ユニセフ親善大使もつとめた。59歳の時ジョン・イースタリングと結婚。
人生何が起きるかわからない。波乱万丈な2人。
だが色褪せることないサンディとダニーの物語。
オリビアとトラボルタが出会って起きたケミストリ、あの時あの瞬間にしか出せない若きエネルギー、奇跡のコラボ。
名作として語り継ぎたい。
オリビアのCDを引っ張り出し聴いている。「グリース・メガミックス」なるものが収録されていたから買ったCDもある。映画のシーンが目に浮かぶ。
澄んだ美しい歌声、世代を超えて聴き続けられるだろう。
日本を愛してくれた、いつも笑顔のひとであった。
オリビアの歌声を聴くことで追悼としたい。
(text by電気羊は夢を見た)
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