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宇喜多の捨て嫁を読みました。ネタバレあります。

一人の純粋無垢な少年が、一人また一人と、無慈悲に大切な人を奪われ、人々から恐れられる梟雄へと姿を変えていく。ある意味、この小説が秀逸なのは、時間軸を巧みに操っているところにあると思います。冷徹な宇喜多直家からスタートして、なぜ自分の娘達を道具にできるほどに、非情になってしまったのか、なり得たのかを紐解いていく。まるで、ミステリー小説のよう。個人的は、非情な策士を自負する浦上宗景が、猟犬同然に扱い、その人生を散々、弄んだ家来の直家から、情に厚き人と評され、戦慄する場面が痺れました。非情な策士とは、自分ではなく、直家こそ世の人々が恐れるそれだと。立場が完全に反転し、宗景は自我を崩壊させていきます。歴史的に正しいとか、間違いはさておき、読み物として実にうまく、人間の内面を表現しているなと。この歴史の曖昧なところにこそ、歴史小説がよるところもあり、私もそこにいつも魅力を感じるわけです。

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