介護者カフェさらに開設 4年で全国へ
※文化時報2022年1月21日号の掲載記事を再構成しました。写真は浄土宗安福寺で行われた介護者カフェ。
浄土宗は4月から、介護に関わる人々が悩みやつらさを語り合う介護者カフェ=用語解説=の全国展開を本格化させる。4年程度で全都道府県の寺院が開設することを目指す。
介護者カフェでは、孤立しがちな介護者や、介護していた人が亡くなり喪失感のある人らが思いを分かち合う。寺院で行う際には、地元の地域包括支援センターや社会福祉協議会の協力を得て、介護経験や知識不足を補っている。
宗は、社会貢献の一環として開設を推奨しており、2020年度に支援事業を試行。これまでに全国16カ寺で開設され、3月末までにさらに2カ寺が増える。
22年度からは、開設寺院を本格的に増やす。
具体的な支援としては、開設を希望する寺院にスタッフを派遣し、計画や広報について助言。地元自治体など公的機関との橋渡しも行う。初めて開催する際には司会も担当する。社会部内の「介護者カフェ立上げ支援担当」が窓口になる。
宗は実践講座を開いた上で、参加者の中から開設希望者を募る。
昨年10月に初めて介護者カフェを開いた浄土宗安福寺(大阪府柏原市)の大﨑信人住職は「介護者カフェに失敗はない。参加者が1人でもいい」という言葉に背中を押されて開設。「1回の開催でも、意義のあることだと感じた」と話している。
初の音楽イベント 浄土宗金剛寺
浄土宗金剛寺(中村徹信住職、京都市東山区)は12日、第10回目の介護者カフェを開き、初の音楽イベントを行った。福祉施設などでピアノ演奏のボランティア活動をするカフェ常連の西野朋子さん(58)が、新年にちなんだ曲や昭和の流行歌メドレーなどを披露した。
西野さんは、東山区社会福祉協議会の会合で中村住職と知り合ったのを機に、介護者カフェに参加。「親の介護のことが、常に頭にあった。本当にお世話になっている」と話した。
メインプログラムの分かち合いでは、参加者が2グループに分かれて、自由に語り合った。神戸市内に住む実母が認知症という京都市内の女性は「神戸市内の福祉関係者と連携を取ろうとするが、うまくいかない。金剛寺のようなお寺が神戸にもあればよいのに」と話した。
中村住職は「介護は24時間365日休む時がないが、物理的に離れることもテクニック。少しでも喜びが得られる場として運営したい」と話した。
社会貢献の枠組み拡大
浄土宗は、介護者カフェの開設支援で得たノウハウを生かし、さまざまな分野で寺院と地域がつながる仕組みを進める構えだ。宗が人材育成や社会貢献の手法を寺院に伝授し、初期費用の援助や、先駆者の僧侶らとの交流などを想定している。
浄土宗教師の養成課程で、社会貢献に関する単位を必修化。研修会や講習会で社会貢献について紹介し、意欲を高める。実際に取り組む寺院には支援員の派遣や資金の助成などを行い、持続可能な活動として定着させる。
今年は年間を通じて社会教化審議会と下部組織の社会福祉専門部会で具体的な手法を検討し、実施計画を策定する。
【用語解説】介護者カフェ
在宅介護の介護者(ケアラー)らが集まり、悩みや疑問を自由に語り合うことで、分かち合いや情報交換をする場。「ケアラーズカフェ」とも呼ばれる。主にNPO法人や自治体などが行い、孤立を防ぐ活動として注目される。
【サポートのお願い✨】
いつも記事をお読みいただき、ありがとうございます。
私たちは宗教専門紙「文化時報」を週2回発行する新聞社です。なるべく多くの方々に記事を読んでもらえるよう、どんどんnoteにアップしていきたいと考えています。
新聞には「十取材して一書く」という金言があります。いかに良質な情報を多く集められるかで、記事の良しあしが決まる、という意味です。コストがそれなりにかかるのです。
しかし、「インターネットの記事は無料だ」という風習が根付いた結果、手間暇をかけない質の悪い記事やフェイクニュースがはびこっている、という悲しい実態があります。
無理のない範囲で結構です。サポートしていただけないでしょうか。いただければいただいた分、良質な記事をお届けいたします。