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2022年5月の記事

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①【書評】正しい小説――年森瑛「N/A」 川村のどか ②【文芸批評時評・5月】審美眼はふらふらさまよう 中沢忠之 ③【連載】地方文学賞の賞金で文芸同人誌をつくる(第五回) なかむ…
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記事一覧

耳ヲ貸スベキ!――日本語ラップ批評の論点――

第五回 ポストモダニズム/ポスト・ソウル/ヒップホップ批評  韻踏み夫

ポエムはみんな生きている(第五回)

〜Time To Say Goodbyeゼロ年代のワナビーたち〜 松波太郎『カルチャーセンター』論  ni_ka ワナビーが消えた。 私ni_kaが学生だったいわゆるゼロ年代(2000年代)までは、「ワナビー(wannabe) 」という言葉を、文化系界隈で頻繁に耳にした。 作家志望者・画家志望者・歌手志望者・漫画家志望者など、さまざまな分野にわたり、自分をワナビーと自虐したり、他人をワナビーと貶めたり。そんな使い方をされた言葉がワナビーだった。  かつて、法学部では、旧司

『文學界』から干されたオレがなぜかまた文芸時評をやっている件について(最終回)

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地方文学賞の賞金で文芸同人誌をつくる(第五回)

文学フリマ広島に出店しました なかむら あゆみ 前回のエッセイから2か月が経ち、季節は春から初夏に移ろうとしています。毎年今ごろになると思い出すのが、庭に出て植物を観察する父の姿。何か発見するたび「ちょっと来てみ」と呼ばれ、一緒にカマキリの孵化や新芽や花芽の様子を眺めました。父はその間もナメクジを見つけると躊躇なく手に持った鎌ですり潰し、死骸を一か所に集め、共食いに来たナメクジをまた潰すのでした。ぱっぱ(煙草)を吸っている時でさえ鎌を操る手を止めることのない父の横顔とセブンス

審美眼はふらふらさまよう

文芸批評時評・5月 中沢忠之 文學界新人賞を受賞した年森瑛「N/A」の評価をSNSなどで見ていると、全体的に絶賛だが、批判的な評価もある。といっても、荒木優太https://twitter.com/arishima_takeo/status/1519984097149390849と栗原裕一郎https://twitter.com/y_kurihara/status/1519348918253125632くらいだが。当該作は、選考委員の選評にもある通り性的マイノリティを素材にし

正しい小説

【書評】年森瑛「N/A」 評者:川村のどか 生理を止めるため過度なダイエットをしている高校生のまどかは、周囲から「拒食症」を疑われている。母はインターネットで拒食症の娘との接し方を調べ、様々な資料にあたり、そこで得た情報通りの言動をするようになる。あるいは、まどかに同性の恋人がいることを知った同級生の翼沙は、同性愛者の友人との接し方を検索した上で、相手を傷つけないための振る舞い方をぎこちなく実演する。いずれも専門家や当事者からお墨つきを得た「正しい」姿勢だが、そこには彼女たち