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第八回文学フリマ大阪レポート 〜出店者さんたちの感染対策〜

京都事務局スタッフの岸本です。2020年9月6日(日)、半年ぶりに開催される文学フリマへ向け、京都事務局の応援スタッフとして第八回文学フリマ大阪に参加しました。
私自身、グループでサークル活動をしている事もあり、当日に皆さんがどのようにブースを運営しているのかとても気になっていました。今回は、自分で調べた感染対策についての情報も交えながら、現場で見かけた各ブースでの対策方法についてレポートしたいと思います。

ブースでの感染対策はどうすればいいのか?

じつは自分のサークルは第八回文学フリマ大阪への出店をとりやめることにしたので、今回は初めて1日中、事務局スタッフとして参加しました。サークルとしての出店を取りやめたのは「ブースでの感染対策をどのようにしたらよいか」について、自分の中でまだ方向性が掴めていなかったからです。ビビリなのです。
しかし、今ではすでに、自分なりに工夫して、さまざまな対策を考案した上でイベントに参加された方が沢山いらっしゃいます。自分のサークルが欠席を決めたあとも、そういった方達の情報をインターネット上、SNS上などで収集をして、安心して参加できるような材料を見つけようとしていました。たとえば感染対策を開催している他のイベントの設営画像などを、SNSの「#設営完了」というハッシュタグをたどって拝見していました。そうやっていろいろと調べているうちに、自分も段々「こういう感染対策があるのか。それなら参加できそう」と思えてきました。また、後述するように大阪当日に実際感染対策をして運営されているブースを拝見して、実際の様子も想像しやすくなりました。
結論、私は次こそ出店できそうな気がしています。

大阪開催で見かけたさまざまな対策

第八回文学フリマ大阪の当日は、休憩時間に友人に頼まれた買い物をしながら色々観察させていただくと、各ブースで、色々な工夫をされていました。私が個人的に調べていた対策を、当日出店された皆さんは更に工夫していたという感じでした。
以下に具体的な感染対策と、それに対する自分の感想をまとめました。

コイントレーの使用
会場で多く見かけたのはコイントレーの使用でした。
各ブース、色んなデザインや形のトレーをご用意されていました。
私も買い物する際には、できるだけおつりがないように代金をお渡ししたかったのですが、最近ふだんの生活で小銭を出す機会がかなり減っていて、千円札は用意してあったものの小銭の持ち合わせが少なく、絵に描いたような「お釣りが必要な購入者」になってしまいました。
それに久々のイベントでしたし、キャッシュレス生活に慣れたせいもあって手持ちの現金があまり多くはありませんでした。その結果「気になったけれども少しお高い本」というのは買うのをためらってしまいまいた。
自分が次に出店する時には個人でも使えるペイペイなどの電子決済(キャッシュレス決済)も準備してみようかなあと思いました。いっぽうで、小銭もコツコツ貯めておこうと思います。
ちなみに、本を買わせてもらう時など、自分でも消毒できるようにアルコール消毒液を持っていた方が出店者さんに安心して貰えるかなと思って持ち歩いていたのですが、実際は登場させる機会がなく、取り出そうかどうか迷って結局取り出さないという挙動不審な購入者になってしまいました。会場には入口にアルコール消毒液があるので、素直にそれを利用したほうがよさそうです。ちなみに出店者さんによっては、ブースでお客さんが自由に使えるように消毒液を用意してくださっている場合もありました (自分が持っている消毒液は、せっかくなので、会場につくまでの間や帰宅するまでの間に使う事にしました)。

ビニール製の間仕切り
ビニールで仕切りを作成している出店者さんも多くいらっしゃいました。しっかりした支えがあり「絶対倒れません」という安定感のある構造で、どうなっているのかじっくり拝見したかったのですが、じろじろ見ると不審者になってしまうので遠目から見ていました。
自分が間仕切りの用意を考えていたときにはビニールの「材質」にまでは全然気が回っていなかったのですが、実際に使われていたのは透明度の高いビニール(もしかしてビニールではない何かの素材?)が多く、「仕切られている」という感じがあまりしませんでした。
そういえばお店などに間仕切りが置かれるようになった最初の頃は、スーパーなどのビニールの仕切りも分厚かったと思うのですが、最近分厚いなとは感じなくなっていました。分厚いと声が聞こえなくなってかえって困りますから、ビニールが適切な厚さになっていることも重要なんだと気づきました。自分だったらあまり考えずに厚いビニールを使っていたと思いますが、今回準備された方は厚さにも気を遣っていたのかもしれません。
もう一つ驚いたのは皆さんの間仕切りの設営のコンパクトさです。今回は、机と机の間に空間がある状態でブースが設置されていたのですが、それでも1ブースは長机半分なので、すぐお隣のブースとはくっついている状態です。決められているスペースの中に、間仕切りも含めて綺麗に収まっている事が驚きでした。自分が作成していたら、もしかすると慣れないために不安定なものになってしまい、近くの出店者さんにご迷惑をおかけしてしまっていたかもしれません。間仕切りがあると確かに安心ではあるけれど、自分が「無理かも、難しいかも」と思った事は一旦じっくり考えてから実行しようと思いました。

机の上には見本誌だけ置く
普段のように在庫の本を机の上に出さず、試し読み用の見本誌だけを机の上に出しておいて、お客さんが「この本ください」と伝えれば、机の下からその本を出してくださるというブースもありました。本自体が飛沫にさらされる確率を減らすことができる画期的なやり方だと感じました。また、机の上の見本誌にはビニールのカバーをかけて、お客さんが戻したあとに毎回消毒しているというブースも見かけました。
また実際に「見本誌どうぞ~」とおすすめしてくださる出店者さんもおられたのですが、私は急いで買っていたためゆっくりできず、代わりにブースで無料配布のペーパーや配布物を頂くことが多かったです。これはあとでゆっくり読めるのでうれしかったです。出店者さんの名前さえわかれば、また次回出店される時にも探せるので、感染対策の上でなら、個人的にはペーパーも良い文化だと思います。

④ブース名の表示 
今回私は、自分が買いたいものだけではなく友人に頼まれた作品も買いに行きました。友人から久しぶりに開催されるのですごく行きたいけど、仕事柄行くのはまだ控えなければならないので買ってきて欲しい……と頼まれたためです。自分のお目当ては覚えていても、こういう友人のお目当てまではサッと見つからないこともあります。
でも今回はブース番号とサークル名を書いた紙が机の見やすいところに飾ってあったり、ポスターに書いてあったり、ブースの前に貼り出してある出店者さんが多くいらっしゃったので、買い物の時とても助かりました。訪れる人が見やすいように、通路に対して斜めに設置している方もいました。ポスターや紙も、今回はブース内の人が少なかったり、通路が広かったりしたので、とても見やすかったです。
また、ビニールの間仕切りをしているブースで、ビニールにブース番号を貼ってあったこともあり、まるで空中に表示を出しているように見えて「や、やってみたい」と思いました。
カラフルな印刷で、大きい文字になっているなど、老眼の私にはとても見やすかったです。お陰様で、短い時間で頼まれたものを買う事が出来ました。

⑤Webカタログの情報を充実させる
今回の開催では色々変更点があり、見本誌コーナーもないので、今まで使った事がなかったWebカタログの「☆気になる」ボタンを活用してマイリストを作り、情報を整理しました。
リスト上ではブースが番号順に並んで掲載されているため、スマートフォンでWebカタログのリストを見ながら歩くと、目的のブースにとてもスムーズにたどりつけました。沢山情報を載せてくださっている出店者さんが多く、助かりました。
また、Webカタログは画像を登録すれば、見本誌コーナーと違って小さいサイズの本でも埋もれることがないので、そういったものも事前チェックできて良かったです。自分が出店するときも、事前情報をたくさん更新するようにしようと思いました。
Webカタログの「☆気になる」ボタンも、もっと使っていこうと思いました。 

当日の感想・今後に向けて考えたこと

今回の文学フリマ大阪は、全体的に見やすいイベントだった、という感想でした。半年ぶりの開催で、参加者数が少なかった事もあります。しかし、今回の対策は参加者が倍の人数になっても出来る気がするという感覚がありました。それに、きっと実際の現場で物事への反応や結果をみて、これから各ブース、そして事務局の用意する対策にも、改良・調整が加えられていくのだろうなと思っています。
 
そして、特にブースで感染対策をする場合には「自分ができる範囲のこと」にするのが大事だと思いました。
本を作ってイベントに出店するためには、準備の段階でやはり多少の無理をする事もあります。ある意味では「無理しないと本が作れない」とも思っています。
しかし多少の無理はしても、無謀なことをしてはいけない。何もかも完璧にしようと考えず、まず「これなら出来そう、これは自分用に工夫できそう」と思える範囲で、自分なりにカスタマイズした感染対策をすれば、イベントの1日を十分楽しいものにする事は出来ると思いました。

また、当日のブースでの対策ももちろん大切なのですが、まずは日頃から一般的な感染症対策や健康管理をすることが一番大事です。イベント前はつい徹夜をしがちですが、気をつけなければいけません。最近は、手洗いや、入口出口でのアルコール消毒については日常化してきていると思いますが、手を清潔に保ち、十分な睡眠をとることなどは、イベントに限らず普段の生活にも通じる「長く続けられる、ずっと続けられる感染対策」ですよね。シンプルである事は強いです。

新型コロナウイルス以後のイベント

 新型コロナウイルスがなければ、私はイベントについてこんなに色々な情報を調べようとしていなかったと思います。世の中にはこんなイベントや企画があるのだ、と初めて知ることも多く、自分の世界はまだまだ小さかったのだと感じました。
また、いわゆる「リアルイベント」が出来なかった時に開催されたオンラインイベントは、「イベントはなくならないのだ」という安心感があって、本を作る者にとってとても希望がありました。
ただ「本を読むのが好きで、本屋さんで売っていない本のイベントがある事も何となく知っているけど、どこで何かどういう風に行われているのか分からない」という友人に、オンラインイベントの事を伝えてみたこともあったのですが、そのときは「まだ実際にイベントに行っていないのでオンラインイベントと言われてもどうしてもピンと来ない」と言われてしまいました。そのかわり「感染対策をしながらのイベント開催が日常になったら1回行ってみたい、いつあるの?」と予想以上に前向きな返答もありました。新しく参加する方にとっては、実際のイベントのほうが分かりやすいと感じるようです。
でも、そういった方でも不思議とWebカタログは「見やすい」と言ってすごく見てくれました。これはオンラインの良さで、実際のイベント会場にいなくても本の内容を熟読出来るため、妄想旅のように「この本気になる」と楽しみやすいようでした。また面白いもので、複数の友人に聞いたところ、気になる本が被らないのが印象的でした。この本、実際に見てみたいなあと思うと、イベントへの興味もわきやすいようです。
リアルイベントとオンラインイベントは持ちつ持たれつ、絶対片方だけでは未来へつながらないのだと思います。ものすごく前向きに考えると、ウイルスの流行をきっかけに、出店者、購入者がリアルとオンラインを「選ぶ」事が出来るようになる一歩を踏み込めたのではないでしょうか。だからこそ、実際のイベントもできるだけ安定的に開催していけるように頑張ろうと、私自身、腹をくくりました。

余談ですが、今回久しぶりの開催で設営や後片付けを手伝った結果、イベントから3日後の水曜日になって、やっと筋肉痛がなくなりました。あんなに身体を動かすのも久々でした。
ところで今回、文学フリマ大阪の会場の机は新しいモデルに変わっていました。昔のタイプの机だと二人がかりじゃないと運べなかったのですが、新しい机は軽いし、しっかりしていて、感染に関係のないところでも色んなところが改良されているのだなあと思いました。あらゆるイベントが中止や延期になっていましたが、実際に大阪に行ってみたら、色んな事が前に進み始めていると感じました。

次の関西圏での文学フリマは、自分の地元である京都です。ウィルスがなくなるわけではありませんし、必ずとは約束できなくても、京都でもできるだけ安定してイベントが行えるよう頑張っていこう、と思った文学フリマ大阪でした。

2020年10月1日
文学フリマ京都事務局 岸本

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