父の好物を思い出す
6月に入ると、父の日について思いを巡らせる。
「今年は何にしようか」
そんな風に考えることは、父が死んでからはなくなってしまった。それでも雨の季節が近づくと、なんとなく父を思い出す。
先日、いつも行く産直スーパーの鮮魚コーナーに金目鯛のアラがあった。私は魚の目玉周辺のぷるぷるしたところが大好きなのだ。アラが売られているときは、頭の有無をチェック。もちろん、カマも一緒に入っていればラッキーだ。
並んでいたアラは頭入りだったので、即買いした。
そういえば、父も目玉の部分は大好きだった。好き嫌いのない人だったけど、アラや内臓系は特に目がなかった。いつも身のたくさんある部分は子供に分けられ、食べにくそうな部分は父に振り分けられた。
アラを食べるのは解体作業のようなもの。骨を外しながら、ぷるぷるの部分と周辺のやわらかい身がきれいに取れたときの快感といったらない。夢中になって食べてしまう。
父は身を吸い取りながら食べていたなあ。尋常じゃないほどしゃぶり尽くしていて、やわらかい骨まで食べきっていた。皿に残されるのは、見事に大きな骨だけで。ただ、猫と暮らすようになってからは大半を奪われることになった。わが家の猫たちは、まず母のところで「魚くれ!」とねだり、次に父、その次に姉のところでおねだりしていた。まあ、猫さまたちに遊んでもらっていたはずなのでプラスマイナスゼロってことだろう。
ちなみにこの日の晩ごはんは、金目鯛のアラ煮と南関あげの味噌汁。「南関あげ」は食感がやわやわだけど(食べたことがある人ならわかると思う、このやわやわ具合が……笑)、クセになる。何より日持ちするのがいい。
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金目鯛のアラを食べつくして数日経ち、同じ産直スーパーに立ち寄ったら今度はこんな大量に頭の入ったパックを発見した。
おおお、頭だけ!!
しかも、クローズ間際だったため半額になっていた。うそー、これで100円未満。画像はグロテスクだけど、私には宝の山に見える……。
実家では母も姉も目玉のぷるぷる部分は苦手で、今では買うことがなくなった様子。
私は父のように実直で努力の人でもなく、マイペースな部分だけ引き継いでしまったのだが、好物は継承したようだ。
魚のアラと雨の匂いに、そんなことを考える。
昔、父の日のお礼に描いて送ってくれた紫陽花の絵手紙は、愛猫に遊ばれながら笑っている写真と一緒に飾っている。あちらで仲良く魚を分け合っているといいけれど、さてどうだろう。
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