母の愛に泣いた第5話。愛生が尾野真千子である意味を知る/ドラマ『ライオンの隠れ家』
今期はヒューマンドラマを中心に楽しんでいる。
『宙わたる教室』
『海に眠るダイヤモンド』
『ライオンの隠れ家』
この3つ+『無能の鷹』は欠かさず視聴中。
「伊東蒼ちゃん……」「藤竹の謎」「科学部ついに本格始動」「天体観測!」(宙わたる教室)、「百合子が背負う戦争」「スクエアダンスに投影された恋模様」「斎藤工を雨に濡れさせたらダメ絶対」「朝子と鉄平、かわいらしか~」「いづみは百合子じゃなくて朝子なの?」(海に眠るダイヤモンド)、「社内運動会ゆるすぎる」「老害朱雀部長、奇跡の改心」(無能の鷹)などなど全部感想を書きたいところなのだが、今回は演者に圧倒された『ライオンの隠れ家』の第4話・5話について書き記しておきたい。
長いので、お時間あるときにどうぞ。
(以下、ドラマの内容を含みます)
母親の顔になる愛生。演じる尾野真千子の凄み
主人公・洸人役の柳楽優弥さん、弟・みっくん役の坂東龍汰さん、そしてライオンを演じる佐藤大空くん。メイン3人の演技にぐっと引き込まれ、「どうか主人公たちが幸せに暮らせますように」と願う気持ちが日に日に強くなっている。第5話は、3人に加えて尾野真千子さんが演じる愛生が本格的に登場し、ますます目の離せない展開に。
「自分たちをこの世から消してほしい」
おそらく愛生は、何らかの事情から息子であるライオンを守るために、自分と息子をこの世から消し去るようX(怪しい男といえば岡山天音くん)に依頼したのだろう。
第5話では、感情をどこかに置いてきたように無表情だった「存在しない人」の愛生が、盗聴アプリから聞こえてくる息子の声に、みるみるうちに母親の顔になっていく。会いたい、でも会えばライオンを守れなくなるかもしれない。身をちぎられるような思いに顔が歪んでいく愛生。声を押し殺して号泣する姿に圧倒され、尾野さんが配役された意味がようやく分かった。輪郭が曖昧だった愛生という存在が、ここへきて一気に浮かび上がってきた。息子への愛に満ちた彼女が、虐待をするだろうか。
サスペンス色が濃くなった中盤
折り紙でチューリップの花束をつくり、母親に会えることを心待ちにしていたライオン。直前でなぜか美央に制止され、泣き叫ぶ姿には心が痛んだ。一体美央は何者なのか。彼女にも重い過去がありそうだ。待ち構えていた刑事らに連行された愛生は、洸人が警察に通報したと思ったかもしれない。連行されながら愛生が洸人に向かって発したことばは恨み節なのか、それとも重要なメッセージだったのか。Xから奪ったスマホを持ち去ったままにできたはずなのに、なぜ愛生はわざわざXに返したのか。少し謎が解けたと思ったら、パンドラの箱のように困難が待ち受けていて、また次々と新たな謎が生まれる。
自分の知らないところで、事態が大きく動いていることに戸惑う洸人。そして、ライオンが落とした折り紙のチューリップを静かに拾うみっくん。彼も洸人と同様に何が起きているのかは分かっていないが、傷ついたライオンの心の痛みを感じて、散乱したチューリップを拾い集める。
どんどん遠のいていく3人の日常。いよいよサスペンス要素が強まってきた。
虐待していたのは父親なのか? 第4話には、自分のせいで仕事を休んだ洸人にライオンが謝るシーンがある。それは母親にではなく父親に対するトラウマなのだろうか。子どもの頃体の弱かった私は、母から「あんたのせいで仕事に行けなくなった」といつも怒鳴られていたので、このシーンはとても気になっている。
ライオンとの暮らしで変化する兄弟の関係
さらに第4話を振り返ってみる。
ライオンを父親に会わせないと決めた洸人だが、3人での暮らしはイレギュラーなできごとが多く、困惑したり悩んだり。それでも暮らしを成り立たせようと努力する。3人の歯車が少しずつ合いはじめていたとき、報道で愛生が亡くなったと思ったライオンがショックから体調を崩した。家で看病する洸人が自然と父親のたたずまいになっていて、これは柳楽くん自身から滲み出ているものなのかなとも感じた。どっしりとした安心感。そんな洸人だが、ライオンが元気を取り戻したこと、姉が生きていることに胸を撫で下ろし、そっと涙を流す。みっくんとライオンの「おなかトントン」に、私はボロ泣き状態だった(笑)。
弟を支えてきた兄は徐々にライオンに時間を費やすことが増え、兄弟の関係は微妙に変化。みっくんはパニックになりつつも一人でできることが増えていき、洸人はそんな弟を少しだけ頼るようになった。ライオンが人知れず6歳の誕生日を迎えていたと知った洸人とみっくんは、お誕生日会を開くことに。みっくんがライオン色の花束を一人で買いに行って戻ってきたとき、洸人は驚きと共に飛び上がるほどうれしそうだった。
「自分が弟の可能性を狭めていたのかもしれない」
これまで、弟を守るために生きてきたという自覚のあった洸人。数話前だが、バスで乗り合わせた同級生たちに弟の存在を知られたくなくて、みっくんを置いたまま降車してしまったシーンはとても切なく、複雑な気持ちになった。みっくんにとってはとても残酷で、今でも「バスで一人」は彼のトラウマだ。洸人も、当時の自分の行動を思い出しては後悔で、胸がチクリとする。ライオンがやって来てからのみっくんの変化は、洸人からすれば成長というより新たな一面を見せられている、そんな感覚なんじゃないだろうか。
ライオンと過ごすことで芽生えた、もしくは大きくなった洸人の父性。葛藤の中で生きてきた彼にも変化が訪れたのだ。アトラクションを楽しむみっくんとライオンをやさしく見つめ、洸人が言い放った「なんなんだよ。疲れるなあ」には、「なんだか面倒だけど幸せだなあ」という気持ちが込められていた名シーンである。
衝撃のラストから続きが気になって仕方ない
そんな彼らの束の間の幸せが、一瞬にして消え去った第5話のラスト。涙なしでは観られないつらい展開だ。自分が殺したことにしてでも息子を守ろうとする愛生の覚悟。一体彼女たち親子に何があったのか。また契約が終わったはずなのに、Xが動いた(たぶん)のはなぜなのか。願いはひとつ。彼らに幸せになってほしい。それだけなのに、今はなんと遠いことなのだろう。
次回以降の向井さんがこわい……。果たして父親の虐待が原因なのか、それとも橘一族やリニア関連でリスキーなことでもあるのだろうか。5話のラストの衝撃と考察で、毎晩なかなか眠れない。はやく金曜日が来てほしい。涼子さま(違う!)は、最終的に洸人たちの味方になってくれると思いたい。