炭鉱の島を舞台に、愛と青春をダイナミックに描く/日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』
九州在住のため、あの軍艦島(正式名称・端島)がドラマの舞台になることが、まず感慨深い。それだけで、なんだか泣きそうになる。
(以下、ドラマの内容を一部含みます)
命を削って海底石炭を掘り続ける炭鉱夫たち。今は廃墟と化しているけれど、日本初の鉄筋コンクリートのアパートにぎゅうぎゅう詰めでみんなが家族のように暮らし、活気に満ちあふれていた人工島。最盛期は、東京の17.5倍もの人口密度だったというから凄まじい。小さな島に、学校や映画館、社交場や共同浴場、病院、商店街、神社、農園まであったのだ。建物の屋上も最大限に生かして。ドラマでは、リナが住むことになる寺の和尚役でまっさんが登場したが、実際端島には泉福寺という島唯一の寺もあったという。
甦った端島を見たとき、スケールの大きさと映像美に驚き、「令和の技術、スゲーー!!」と一人感動してしまった。あっという間に1955年の鮮やかな端島に入り込み、人々の息づかいを感じて興奮した。一方で、差別や葛藤、炭鉱の島としてのプライドなども描かれ、今後への期待は増すばかりだ。
キャストには神木くんや宮本信子さん、杉咲花ちゃんなど、好きな俳優が勢ぞろい。ドラマを手がけるのは、新井さん×塚原さんコンビと脚本・野木さんという、自分の中では絶対的信頼のおける人たち。期待値が大きいぶん多少の不安はあったが、それは杞憂に終わった。まだ初回しか観ていないけど、言いきっていいのか!? いいんです!!
NHKの『Shrink〜精神科医ヨワイ〜』のときも感じたこと、土屋太鳳ちゃんは「私、がんばってます!」という役よりも、百合子のような役の方が魅力的に映る。そして、密かに鉄平に想いを寄せる朝子を演じる杉咲花ちゃん。鉄平の気持ちは、百合子からリナに変わった模様だよ……。朝子のモヤモヤを表現する花ちゃんは、見どころのひとつになりそうだ。
池田エライザちゃんが演じる謎の女・リナは、台風の目になるのだろうか。予告では、鉄平の兄・進平と何かありそうな雰囲気が漂っていた。もしかして、リナの恋の矢印は進平に? 初回冒頭に登場した、小舟であたかも島を脱出したような1965年の彼女につながって、いろいろ妄想中。色気と男気が同居する斎藤工さんの進平にも、注目していきたい。
2018年、夢も希望もないホストの玲央に近づくいづみ(宮本さん)。彼女が、忘れられない人に似ているという理由だけで玲央に接近したのは本当だろうか。玲央と出かけた長崎で軍艦島クルーズに乗り込んだいづみは、端島が見えた途端に泣き崩れる。まだ彼女が何者か分からないのに、一瞬で郷愁や後悔、悲しみという彼女のバックグラウンドが想像できる。いや、まだ何者か分からないんだけど。
一体、いづみは誰なのか。
はじめはリナだと思ったが、意味深なペンダントに「え?百合子なの?」とも思えてきた。話し方も百合子に近い。しかし、最初のいづみの髪の結び方(ピンの留め方?)が朝子と同じなのも気になった。
鉄平が大学生活を終えて島に帰ってきた1955年は、玲央といづみが出会った2018年から63年前である。鉄平と女性たちが同級生もしくは同年代と考えると、生きていれば2018年時点で85歳前後。「いづみは誰なのか」問題は今後も続きそうだし、「あの赤ん坊は誰なのか」についても考察が過熱しそうだ。
美しい映像と再現された島の様子(なんだかタイタニックっぽい!)。あの時代に漲る生命力が、画面いっぱいに感じられる。繰り返しになるけど、そこには本当に感動した。だって私の知っている端島は、エネルギー産業の一翼を担った後に閉山し、今にも崩れ落ちそうなコンクリート建造物が建ち並ぶ灰色の島なのだから。
「廃墟なんかじゃない……」
廃墟ということばを侮辱と捉えたと思われる、いづみの怒りと悲しみ。当時、夢や希望を抱いて多くの人たちがここで懸命に生きていた。今在る灰色の島は、彼らが生きた証である。
時代の波はやがて押し寄せてくる。そのあたりまで描かれるのかも気になっている。舞台は長崎。もしかすると、戦時中のことも描かれるのかもしれない。炭鉱のまちを描いた作品には、つらい別れも多い。常に危険と隣り合わせの彼らの暮らし。それを乗り越える島民の愛と誇り、朗らかさ、強さが、どんな風にドラマに織り込まれるのか。端島の姿を思い出しながら、そんな気持ちになっている。
昨日は放送が無かったので、第2話放送までまた1週間。次回から映画館の館長役で片桐はいりさんが出演するし、第3話からは渋川清彦さんも出演とのこと。日曜日が待ち遠しい。
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