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ある理科教師との出会いから人生を切り開く/ドラマ『宙わたる教室』

新しいドラマの放送が少しずつ始まっている。火曜日、クール恒例の気になるドラマ5選でも取り上げた、NHKの『宙わたる教室』を視聴した。

原作は伊与原新さんの小説。夏に『オオルリ流星群』を読んで、すっかりファンになった。この原作はまだ読んでいないので、まずはドラマを楽しむつもりだ。

(以下、ドラマの内容を含みます)

主人公は、窪田正孝さんが演じる藤竹叶。物語は、優秀な研究者である藤竹が、定時制高校に理科教師として赴任してくるところから始まる。冒頭、彼の大学同期でJAXAの准教授・相澤が登場。相澤役は、朝ドラ『エール』で窪田さんと共演した中村蒼さんだ。再びこのコンビに会えてうれしい。

将来有望な研究者が、なぜ新宿にある定時制高校の教師になったのか。生徒たちはいろいろな事情を抱えており、年代も国籍もバラバラだ。藤竹は謎の多い人物だが、細やかに彼らを見つめ、たとえ小さくても違和感を覚えればその原因を追究する。研究者ゆえの探究心なのかもしれない。教師としてはまだ手探り状態。だが、冷静沈着で飄々とした理科教師が、生徒たちにじわじわと影響を及ぼしていく様子が伝わってくる。

初回は涙の回だった。原作を読んでいないのに、 窪田くんの藤竹があまりにも馴染み過ぎて、「これ、藤竹じゃん! 藤竹じゃん!!」と勝手に本の中の主人公と結びついてしまう。窪田くん@藤竹の吸引力よ。

そして第1話の主人公と言ってもいい、柳田岳人を演じるのは小林虎之介くん。日曜劇場『下剋上球児』では、兄貴(日沖誠/菅生新樹くん。朝ドラ『おむすび』では丸坊主姿で登場して誰か分からんかった!)大好き・日沖壮磨を演じた彼が、岳人の心を見事に解放させた。数式はあっという間に解いてしまうのに、用紙に表記された文章問題は頭に入らず解くことができない岳人。子どもの頃から読み書きが苦手で、「努力していないだけ」「怠け者」のレッテルを貼られて生きてきた。それは家庭内でも同じだった。

どんなに努力しても自分は「不良品」だと語る岳人。藤竹は、彼の答案に違和感を抱いたことから学習障害について調べ、本人にディスレクシアではないかと伝える。私は、ディスレクシアという学習障害をこのドラマで初めて知った。もしかしたら、今まで出会った人の中にもいたのかもしれない。

岳人側からすれば、戸惑いを隠せない。どんなに努力しても報われてこなかった彼にとって、今さら「それは学習障害のせいであって、君のせいじゃない」と言われても、うれしくもなんともないのである。これまでの努力は何だったのか。そればかりか、「お前は不良品だ」とはっきり言われた気持ちになってしまったのではないだろうか。

読み書きが苦手なことがきっかけで、不登校、そして不良の道へと走った岳人。自分が学習障害と知ったときの虚しい叫び。小林くんが、岳人のこれまでの辛さや諦めなどさまざまな思いの入り交じった感情を体現した。これをきっかけに益々荒れるのではないかと心配したが、藤竹の発したあることばが刺さり、岳人はようやく自分を取り戻す。導いてくれる大人がいれば、彼はもっと早く負のスパイラルから抜け出せたはずだ。一人の若者の可能性が、藤竹によって再び開かれた。

「空はなぜ青いのか」

岳人の示した小さな興味を見逃さず、藤竹は教室で実験を行う。学校は、自分で人生を切り開いていく場所。教師はその場を提供することしかできないのかもしれないけれど、藤竹のようなある意味“異物”が、夜学の生徒たちに奇跡の種をまいていく。岳人のこれからに、なんだかワクワクした。あわせて藤竹自身の謎も、最終回までに解かれるのか気になった。



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ぶんぶんどー
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