【第4話】網膜剥離闘病記 ~網膜剥離になりやすい人の特徴。手術は滅茶苦茶痛い!?~
いよいよ入院。手術までの時間
他の入院患者には付き添いがいるのに…。
1月23日。10時の入院だったので9時45分に病院に到着して、指示された11階の病棟に行くとエレベーターホールと病棟を仕切るオートロックの自動ドアがあり、スタッフステーションと通じているインターホンを鳴らしてドアを開けてもらう。
病棟に入ってすぐ正面のデイルームに行くとそこには僕の他にも今日入院と思われる旅行バッグを持った人が数人いて、それぞれ親族や配偶者が付き添っていた。コロナ禍のため入院中の面会は原則不可能なので、付き添いの家族とは退院までは会えない。デイルームで入院を待つ僕以外の患者のほとんどは誰かしら付き添っている人がいて、こういう時に親族や家族がいると安心だろうなと思ったのと同時に、ひとりぽつんとそこにいる劣等感というか、少し惨めな気分になったので妻も彼女もいない僕は人妻の友人にLINEで泣き言を送った。こういう時、男友達に泣きつくのは何となく嫌で、かといって女友達だとどうしても格好つけてしまうので、唯一弱音を吐ける相手がその人妻しかいなかった。
いざ病室へ
デイルームの隣には眼科診察用の部屋があり、細隙灯顕微鏡(スリットランプ)という眼科の診察室に必ずあるあの機械とデスクとパソコンがセットになって10台ほどずらりと並んでいる。入院中の病棟では毎朝回診があるが、眼科に関してはスリットランプを各病室に持ち運べないので、眼科の入院患者が毎朝そこに集まって朝の診察を受ける。まずはそこに案内され、簡単に目の状態を検査し、再びデイルームで待つように指示された。
しばらく待っていると若い女性の看護師が来て体温や血圧を測り、僕のフルネームとQRコードが印字されたベルトを手首に巻かれる。これは1回装着すると刃物で切らない限り外すことができない作りになっていて、退院までは外すことが許されない。病棟外の売店などに行く際はこのQRコードをかざすと病棟出入り口のオートロックが開く仕組みになっていて、病棟外への外出が許可されていない患者はQRコードをかざしてもオートロックが開かないように管理されている。
看護師さんに案内されてついていくと、僕の病室は廊下の突き当りにある一番奥の部屋で、僕のベッドは入り口から一番近い区画だった。病室のドアは消灯までは常に開けられているので、各ベッドを仕切るカーテンをしっかり閉めないと廊下を通った人から僕のベッドが見えてしまう配置だ。それでも廊下の一番奥の病室で尚且つ2泊3日なので良しとした。
「あとでまた来ます」と告げて看護師さんが病室を出て行ったので、僕はとりあえず荷物を広げてロッカーに入れたりいろいろな引出しを開けてみたり、旅行の際に泊まる宿と同じように病室の設備などを無駄にいじっていた。通路側の区画なので開閉できる大きな窓は無かったが、ベッドからは嵌め殺しの小さな窓越しに冬の西新宿高層ビル群が見えた。
入院費用と最初の病院食
しばらくすると病棟の手続き関係をする事務担当の男性がやってきて、今回の入院手術一連の会計のタイミングや施設の説明などをしてくれる。入院や手術の費用は概算で約11万円ほどになり、退院の際に請求となるとの説明を受ける。この病院では高額療養費制度の際に提出する限度額適用認定証の準備が必要なく、病院側ですべて手続きを行ってくれるという。認定証を自分で準備したり、ひとまず自分で建て替える必要がないというのは大変ありがたいシステムだ。事務的な説明をしばらく受けたその後、看護師が再度やってきて入院後の流れを説明してくれた。手術はその日の16時15分からを予定していた。
正午を過ぎると、病棟内に昼食の準備ができた旨のアナウンスが流れ、ベッドから起きて動ける患者はナースステーション前まで取りに行く。入院して最初の院内食はカレーで、それは学校給食のそれと似た懐かしい味で、キュウリとキャベツにリンゴ、パイナップルの入ったすっぱ甘い謎のサラダも学校給食の味だった。
手術に向けての準備が始まる
昼食後から手術までは特にすることは無いが、注射や点眼などでコンスタントに処置があるのであまり院内をウロウロするわけにもいかない。そういえば朝の入院時と昼の検温の際、37度前半の微熱が出ていた。熱っぽい感覚や風邪っぽい感覚も特になかった。手術前のストレスや緊張などで熱が出ることがあるのかどうかはわからないが、看護師さんも「ちょっとお熱ありますねー」というくらいで、特に気にしている様子はなかった。
夕飯の院内食は医師の指示で提供無しになっていたが、特に絶食をしなければいけないということはないらしく、手術後の夜におなかがすいたときは9階のコンビニで買い食いをしていいとのことだ。しかし術後は病棟からの外出は許可されていないので、何か買いたい場合は今のうちにとのことで、僕はコンビニでサンドイッチとおにぎり、麦茶と水を買ってきた。
次に看護師が来たのは、術前、術中、術後に行う点滴用の針をあらかじめ腕に刺す為だった。手術の際、上半身は裸の上に手術着を着用し、眼科の局所麻酔なので下半身はパジャマ用のスウェットのままでいいとのこと。手術着は前開きになっていて、心電図の装置が張り付けやすいようになっている。手術までならいつ着ても良いとのことだったが、病棟内で私服でウロウロすると逆に目立って恥ずかしいので、点滴針を留置した時点で着替えておくことにした。
第5話へつづく