【第13話】網膜剥離闘病記 ~網膜剥離になりやすい人の特徴。手術は滅茶苦茶痛い!?~
眼内へのガス注入後のレーザー地獄
え。。。レーザーってそんなに撃つの!?
2月3日、病院に行くとレーザーを撃つためにダメ押しの横向き寝を40分課せられ、処置室の端っこの簡易ベッドで横になった。壁に向かって寝ているため、処置室の光景は見られないが、医師や看護師が話す声や忙しそうに歩く音は聞こえた。しばらくはスマホのゲームをして過ごしたが、そのうちに寝てしまった。
「お待たせしました」とのS先生の声で目を覚まし、レーザー処置をする暗い部屋に案内される。レーザーの痛みを知っているので憂鬱になるが、そんなこちらの感情とは関係なくS先生はテキパキと準備を進め、僕の眼球にレンズを突っ込む。レーザー処置の最中はただ痛みを我慢するだけという苦行の時間が続くので、それを少しでも紛らわせるためにレーザーを撃たれた回数をカウントすることにした。
昨日入れたガスが功を奏したのか、スムーズにレーザーが照射されてゆく。徐々にレベルが上がり、強い痛みを感じる段階になり、「ツー」と歯と舌の間から息を押し出して呼吸をすることでS先生に痛いですよアピールをしたが、親の仇とばかりにレーザーを乱射しまくるS先生は「もう少しですからねー」といつもの棒読みで対応し、手を緩めるつもりは毛頭ないようだ。結局、照射のカウントは200を超え、280発を過ぎたあたりでやっと終焉を迎え、1週間後に経過を見ることとなり、僕は病院を後にした。
レーザー処置をした後、徐々に点眼麻酔の効果が切れてくると、目の奥が熱いような沁みるような感覚で痛んだ。痛みは心臓の鼓動とリンクしてズキズキと響き、涙が出る。この涙は痛みに耐えられなくて泣けてくるわけではなくて、レーザーの熱傷に対応しようとして体が反応している涙だ。
眼内に入れたガスで視界が悪い。
眼内に入れたガスは、おおよそ2週間程度で自然に抜けるとのことだが、とにかく邪魔だった。形状としてはカエルの卵というか、オイル型の砂時計を眼内に埋め込まれたような感覚で、泡の色は黒く、大きな泡が2~3個の時もあれば、特大の泡の周りを小さな泡がいくつもちりばめられている時もあり、頭を振ったり、寝て起きたりするとその形状が変化する。
目は対象物を180度回転させて映るので、通常は泡が浮いているのでその泡は視界の下に溜まって見える。真上を向くと泡は見えなくなり、逆に真下を向くと視界は泡だらけで見えなくなる。これが消えるまでは、常時視界の半分は黒い泡で隠れている状態なのでとにかくストレスだったが、泡に気を取られて気が付かなかったが右目の視野欠損箇所は無くなっていた。
眼科医から聞きたくないセリフランキング1位
2月8日。経過を診るために病院を訪れる。眼内に入れたガスは入れた時の半分位に小さくなっていた。目の充血と眼球の腫れは徐々に改善されていて、術後しばらくジュクジュクとした質感だった結膜は、次第に縫った青い糸がどこに通っているかを確認できるようになってきていた。今までは鏡を見たときに目の充血と結膜のジュクジュクとした質感が気になっていたけれど、それが治まってくると結膜を縫っている青い糸が気になってくる。それでもまだ白目は真っ赤に充血しているし、つるんとしたきれいな眼球には程遠い状態だった。
診察室のS先生は、いつものようにスリットランプ越しに僕の目を眺めてしばらく考え、「レーザー撃ちましょうか」と言った。ここ最近で一番聞きたくないセリフランキング堂々の1位フレーズだ。もうかれこれ500発を優に超える数のレーザーを照射している。かと言ってイヤですとも言えないし言ったところでじゃあやめましょうかとはならないので、この日も数百発のレーザーを甘んじて受け入れた。
14話へ続く