下町のGOEMON ~立ち飲み屋で遭遇したおっさん~
以前、一人でプラッと立ち飲み屋に行ったときのこと。
僕が立っているカウンターの隣には、パチンコ帰りのおっさんが2名、ワイワイと民度の低い会話を繰り広げていた。
その会話が面白かったのでちょっと紹介しようと思う。
オッサンA「今日俺、暇だったもんだからさぁ、パチンコ行く前にDVD借りたのよ。GOEMONってやつ」
オッサンB「へぇ・・・。知らなねぇなぁ。時代劇かぃ?」
A「まぁ、時代劇みたいなもんなんだけど、CG(“すぃーぢー”的な発音)がすんげぇの」
B「へぇ・・・。誰が出てんの?」
A「あれだ・・・。アノ・・・。クリーニング屋」
僕ははGOEMONの主演が江口洋介だと知っているから、「あぁ、このおっさんは“ひとつ屋根の下”のことを言いたいんだな」と分かるが、いきなり“クリーニング屋”と言われても、
B「クリーニング屋ぁ???誰だそりゃ???」
それはそうだ。おっさんBがGOEMONの主演が江口洋介だと知らない以上、当時の日本のCG技術を結集した作品の主演がクリーニング屋だと言われてもちんぷんかんぷんであろう。
その後も、
A「アレだよアレ、クスリで捕まったヤツと一緒に出てた」
(あぁ、小雪《酒井法子》のことを言いたいんだな)
B「押尾学?」
いやいや、確かにどっちもクスリやってたけどおっさん芸能情報混同しすぎだから。
そもそもおっさんBは何に対しての回答として「押尾学」なのだろう。
オッサンAが導き出したい答えは、ドラッグで捕まった酒井法子と共演していたクリーニング屋こと江口洋介なわけだ。
しかし残念なことにおっさんBの脳内では「ドラッグ=酒井&押尾」という方程式が完成されていて、その時点で条件反射的に発した言葉なのだろうが、おそらくこの時点でおっさんBはGOEMONの主演俳優を当てるというミッションを完璧に見失っている。
まぁ、パチンコ帰りにまだ明るいうちから飲んでいるおっさんの会話なんてだいたいそんなもんで、イチイチ突っ込んでいるとこっちの身が持たない。
そう、彼らは良い意味でも悪い意味でもなく、そのままの意味で「バカ」なのだ。多分最後まで江口洋介の名前が出てくることはないだろうし、それをどうこうするつもりもない。ただ言葉を発しているだけで満足なのだろう。思考は数年前からストップしているはずだ。だから日々繰り広げられる彼らの会話に根拠や裏付けなどない。ほぼ100%が憶測と偏見、思い込み、さらにはその日拾って読んだスポーツ新聞によって錬成されている。いや、錬成はされていない。
ただそれはとても羨ましいことなのかもしれない。僕らが飲みにいくと大体仕事の話や人の愚痴になりがちだ。
おっさん達にはなにも言うことはないが、ただ、生活保護で競艇に行くようなことだけはやめてほしいと切に願う。