マガジンのカバー画像

ティールブルージャケット シーズン1(#101~)

9
朝昼兼の小説作品(連載)を掲載しています。 不定期更新になっちまいましたが頑張っています°・(ノД`)・°・
運営しているクリエイター

記事一覧

ティールブルージャケット 【#109】 たんけんちかのまち(後編)

ティールブルージャケット 【#109】 たんけんちかのまち(後編)

 目を開けているのに真っ暗な視界の隅でちらちらと白文字が瞬き、暗かった眼前に、モノクロだがぼんやりと夜明け寸前の明るさが戻ってきた。
 何度か鼻で深呼吸するが、息が上手く入ってこない。口で何度も深呼吸を繰り返す。
 頭痛と不快感は再起動時の常だ。しばらく待てば程々に元に戻る。で、どうしたんだっけ、左脚が膝下から取れたという警告があって、急にシャットダウンが始まって、犬に振り回されたまま気絶した――

もっとみる
ティールブルージャケット【#108】  たんけん地下のまち 前編

ティールブルージャケット【#108】  たんけん地下のまち 前編

 南洋の小さな島に建設された発電所と、その周辺に連結された様々な船籍の巨大船で構成された街でできた島がある。
 薬師の住む日本船籍船『☆あぐらいあ☆』にも警察等があり、本土の五万人地方都市程度の規模がある。警察以外の特殊公務員の配備はまだ予算が付かず、島嶼部の発電所以外には配備されていない。
 そんなわけで、四十万人ほどある実際の人口や犯罪件数に比べて、警察能力が著しく規模に欠ける。
 そんなわけ

もっとみる
ティールブルージャケット【#107】  教授、置き引きに遭う

ティールブルージャケット【#107】  教授、置き引きに遭う

 先日の侵入者の件で、地下の工事が止まってしまった。
 
 南洋の小さな島に作られた発電所と、そこにサブシステムとして接続されたいくつかの巨大な船で構成される島に住む薬師ルリコの家は、島嶼部発電所に一番近い船『☆あぐらいあ☆』の上にある。
 『☆あぐらいあ☆』船上の、民間人が所有権を持つ土地(法律上土地とされている、地上ソイルパネル・地下船体の空間)で、発電所に最も近い荒野がそれだ。荒野すぎて素人

もっとみる
ティールブルージャケット【#106】  西岡、西岡、西岡、西岡、ぼくも西岡

ティールブルージャケット【#106】  西岡、西岡、西岡、西岡、ぼくも西岡

 島嶼部に巨大船を連結した、南洋の人工島。
 船のひとつ『☆あぐらいあ☆』の、島嶼部にほど近い場所。
 以前海賊の砲撃で破壊された病院の跡地がある広いソイルパネルの荒野に、小さな平屋と少し大きなガレージ、結構広い地下部をしつらえて住んでいる住人がいる。
 完膚無きまでの荒野だった場所が少し整備されてきており、広い目の畑ができて、貸し農園と間違えて覗きに来る訪問者がまれにある。
 その家の住人は家を

もっとみる
ティールブルージャケット【#105】  鼠の巣

ティールブルージャケット【#105】  鼠の巣

 その南の島の、島嶼部基礎の奥には巨大な発電所があり、島嶼部基礎には多くの巨大な船が接続されている。
 巨大な船の中身はざっくりいって表面層が街、中身が重要施設と環境調整機構になっている。
 それら船のひとつ、日本船籍船「☆あぐらいあ☆」の南の隅っこに、その昔海賊の砲撃の的にされて立ち退いた病院の跡地があった。
 現在そこには、小さな花壇スペースを耕された、広い荒れ地に見えるソイルパネルの平面と、

もっとみる

ティールブルージャケット【#104】くじらのおつかわれ

 巨大船「☆あぐらいあ☆」街区の南の外れ、ぎりぎり船の上。薬師ルリコは最近、庭に花を植える様になってから家に帰ることが多くなった。先日、園芸用自動庭番と、(会社の営業の口車に乗せられて)街区警備用大型犬ボットのかなり大型の犬種を一台ずつ導入したので、余程の侵入者でもない限り帰らなくてよいのだが、何となく里心がついていた。
 それはそうと、本当は小型犬ボットにするつもりだったのに、面倒な訪問者の襲来

もっとみる

ティールブルージャケット【#103】気配はひっそりと脚の下から

 あけぼの会警備部の実体が存在する、巨大な日本船籍船「☆あぐらいあ☆」の接続された南の島の、島嶼部基礎の奥には巨大な発電所があり、島嶼部基礎には各国船籍の船がいくつも接続されている。
 「☆あぐらいあ☆」とそれに満載された街区・医療法人あけぼの会を中心とした各種施設・環境調整機構の島嶼部接続中は、島嶼部基礎辺縁を経由し他船に貨物を運搬するパイプラインが提供される。中のレーンを、コンテナを積んだ貨車

もっとみる

ティールブルージャケット【#102】静かな生活というやつ。

 薬師ルリコが住んでいるこの南の島の、島嶼部基礎の奥には巨大な発電所があり、島嶼部基礎には多くの巨大な船が接続されている。
 巨大な船のひとつ、日本船籍船「☆あぐらいあ☆」とそれに満載された街区・医療法人あけぼの会を中心とした各種施設・環境調整機構のうち、船体表層、街区の南の隅っこ、雨水ますのほぼ真上に彼女の家の敷地はある。
 元々、海賊の砲撃の的にされて立ち退いた病院の跡地だったので、広い割に地

もっとみる

ティールブルージャケット【#101】その病院跡の空き家、誰か住んでます

 その南の島の、島嶼部基礎の奥には巨大な発電所があり、島嶼部基礎には多くの巨大な船が接続されている。
 巨大な船の中身はざっくりいって表面層が街、中身が重要施設と環境調整機構になっている。
 それら船のひとつ、日本船籍船「☆あぐらいあ☆」の南の隅っこに、その昔海賊の砲撃の的にされて立ち退いた病院の跡地があり、現在は広い荒れ地に見えるソイルパネルの平面と、砲撃避け・環境調整で作られた小さな丘陵に似せ

もっとみる