障害者の権利に関する条約
注釈
障害者の権利に関する条約
2006年に国連総会において、「障害者の権利に関する条約」が採択されました。2014年、日本はこの条約の締約国となります。
これに伴い、日本では、条約に批准する社会を促進するために、障害者基本法や障害者差別解消法が施行されました。
この条約は、すべての障害者の人権や基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進する目的で制定されています。
このように書くと、障害者に新たな権利が付与されたように捉えられるかもしれませんが、障害者ではない人に保障される人権と普遍的自由が、障害者にも保障されているということを改めて認め、国際的協力を促す条約になります。
また、その社会の促進のために、法律の整備や行政の措置を含めたより具体的な社会モデル作りが求められています。
条約に定められている障害者
障害者権利条約において、障害者は「全ての障害者」と定義されています。
これは、条約の定める障害者は、「全ての障害者」が対象となり、日本における、障害者区分には依らないということです。
現在、各国が定める「障害者」区分は、世界統一ではなく、国ごとに定められています。この条約では、国の障害者区分の差異などに依らず、「全ての障害者」が対象になると定義されています。
障害者の権利に関する条約の「全ての障害者」の定義です。
条約の促進する社会
障害者権利条約は、前文と全50条から成っています。人としての基本的な権利に即して、多分野に渡る条項が制定されています。
障害者の尊厳、社会への参加、機会の均等、施設利用、法律の前に等しく認められる権利、身体の自由及び安全、地域社会への包容、情報の利用の機会、プライバシーの尊重、教育、健康、リハビリテーション、労働及び雇用、生活水準、社会的な保障、政治的権利、公的活動への参加、国際協力など。
障害の社会モデル
障害者権利条約において、「障害は発展する概念である」と定義され、社会との相互関係において、変わるものと見做されています。
障害は、障害者個人に原因があるのではなく、社会との相互関係によって、社会などの環境に生じていると認められています。
障害者権利条約に定められているこのような障害と社会のあり方は、「社会モデル」と呼ばれています。
障害者の多様性
障害者権利条約において、障害者の多様性が認められています。
「障害者が地域社会における全般的な福祉及び多様性に対して既に貴重な貢献」をしていることが認められています。
障害者は、既に多様性があるということが認められている上で、個人として、自己に影響を及ぼす事項について、意見を表明して、その支援を受ける権利が認められています。
合理的配慮
障害者権利条約において「合理的配慮」について定められています。
障害者権利条約の批准に則して、日本では、「障害を理由とする差別の解消の推進に関す法律」(障害者差別解消法)が施行され、公共機関、民間企業などでの合理的配慮が義務化されます。
家族の保護と支援
家族として、障害者の権利の平等の実現のために、家族が必要な保護や支援を受けられるべきであることが定められています。
インクルーシブ教育
障害者権利条約では、障害者の教育の権利を保障すると共に、一般的な教育制度の下で教育を受ける権利、及び、個人に必要とされる合理的配慮の提供の確保を定めています。
この教育のあり方は、「インクルーシブ教育システム」(inclusive education system) と呼ばれています。
条約締結国としての課題
障害者権利条約の批准は、この条約の定めるゴールではありません。
条約の定める社会モデルに則して、社会を育んでいく必要があります。
全ての条約締約国において、この条約が完全に実現されているとは言えず、日本においても、社会的において、是正されるべき課題を多く残しています。
本条約締約国は、少なくとも四年ごとに、更に委員会が要請するときはいつでも、その後の報告を提出する必要があり、日本も、持続的な平等な社会に向けて舵をきり始めたところです。
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