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ノーレイティング(No Rating)とは
ノーレイティング(No Rating)とは、従来の人事評価における数値やランク付けを廃止し、定性的なフィードバックや対話を重視する評価手法です。このアプローチでは、上司と部下が日常的にコミュニケーションを取り、目標設定やフィードバックを行うことで、従業員の成長やエンゲージメントを促進します。
◎ノーレイティングのメリット:
• 環境変化への迅速な対応: 目標設定や評価基準を柔軟に変更できるため、急速に変化するビジネス環境に適応しやすくなります。 
• 評価への納得感の向上: 上司と部下が密にコミュニケーションを取ることで、評価に対する納得感が高まり、従業員のモチベーション向上につながります。 
• 働き方の多様化への対応: 個々の状況に合わせた目標設定と評価が可能となり、多様な働き方や価値観に対応しやすくなります。 
• 上司と部下のコミュニケーション活性化: 日常的なフィードバックを通じて、上司と部下の関係性が深まり、組織全体のコミュニケーションが活性化します。 
◎ノーレイティングのデメリット:
• 上司の負担増加: 頻繁な面談やフィードバックが求められるため、上司の業務負担が増える可能性があります。 
• 高いマネジメント能力の必要性: 適切な評価とフィードバックを行うため、上司には高度なマネジメントスキルが求められます。 
• 現場の混乱リスク: 目標が頻繁に変更されることで、現場が混乱する可能性があります。 
• 企業文化との適合性: 組織の文化や体制によっては、ノーレイティングが適さない場合もあります。 
◎導入事例:
以下に、ノーレイティングを導入した企業の事例を紹介します。
•アクセンチュア
グローバルなコンサルティング企業であるアクセンチュアは、従来の評価制度を廃止し、ノーレイティングを導入しました。これにより、社員のパフォーマンス向上とエンゲージメントの強化を図っています。 
•マイクロソフト
テクノロジー企業のマイクロソフトは、社員の評価制度を見直し、ノーレイティングを採用しました。これにより、社員同士の協力やイノベーションの促進を目指しています。 
•GE(ゼネラル・エレクトリック)
米国の大手企業GEは、年間評価を廃止し、継続的なフィードバックを重視するノーレイティング制度を導入しました。これにより、社員の柔軟性と迅速な対応力を高めています。 
•IBM
IBMは、従来の評価システムを刷新し、ノーレイティングを取り入れました。社員の自主性と創造性を尊重し、組織全体のパフォーマンス向上を目指しています。 
•デル(Dell)
コンピュータメーカーのデルは、社員の評価方法としてノーレイティングを採用し、継続的なフィードバックと対話を重視する文化を築いています。 
日本企業におけるノーレイティング(No Rating)の導入事例として、以下の企業が挙げられます。
•カルビー株式会社
カルビーは、従来のレイティングによる人事評価を廃止し、「Commitment & Accountability(C&A、約束と結果責任)」という制度を導入しました。これは、上司と部下が約束を交わし、その達成度が賞与に反映される仕組みで、信頼関係が報酬に直結する特徴があります。 
•日本マイクロソフト
日本マイクロソフトでは、従来のランク付けによる評価制度を廃止し、ノーレイティングを導入しました。これにより、社員同士の協力やイノベーションを促進し、個々の成果や成長に焦点を当てた評価を行っています。 
これらの企業は、ノーレイティングの導入により、組織の柔軟性や社員のモチベーション向上を実現しています。ただし、導入に際しては、組織の文化や体制に合わせた慎重な検討が必要とされています。
ノーレイティング、中小企業診断士試験では、出題実績はまだ内容ですが、1次の企業経営理論、2次事例Iで出題されるかも知れませんね。