東京で生きている

「今日は月が綺麗だから、お散歩に行きませんか」
近所に住む人からそんなお誘いを受けて、ちょっとだけお散歩してきた。

私、昨日振られたんです。
7月くらいに自分から振った恋人に
8月くらいに「ちょっとずつでいいから、やり直してみませんか」と告白して、
「明日連絡するね。ごめんね…!」と言われてから連絡を待つこと1週間、
「とても丁寧に気持ちを伝えてくれて、気持ちはよく伝わりましたけど、やっぱり元に戻りたいとは思えません。ごめんね」
って、振られちゃった。

付き合ってる頃からすれ違いばっかりだったし、
嬉しいことよりも悲しいことの方が多くて、
それでもひっそり思い続けていたんだけど、
やっぱり振られちゃった。
だいぶ雑な扱いを受けてたから、そんな気はしてた。
泣くほどショックは受けなかったけど、
ぼんやり気分が落ち込んでいた。

だから気分転換に、
知らない人とお散歩してみたんだ。

とっても温かい気持ちになった。
恋心ではない。
だけど、優しい気持ちになった。

ちょっとだけセンチメンタルな夜、
「会いませんか」と誘われて、こんな時間から誰かとすぐに会えるのは、東京という街ならではだと思う。

歳下の女の子から連絡があった。
「一緒にライブに行きませんか」

とても嬉しかった。

彼女は埼玉に住む大学生で、
私は都内に住む社会人だ。

元彼のいなくなったバンドのライブを見に行って、
そこで出会った。
それから連絡を取るようになって、
今ではこうして、彼女からライブに誘ってくれるようになった。

地元に住んでたら、こんな出会いはなかったと思う。

地元に住む従姉妹から連絡があった。
「今年はこっちに帰ってくるの?」
万が一のことがあるから、祖母にコロナを移したくなくて、まあ帰る予定はないんだけど…
彼女は私の6個下くらいで、
お互い幼い頃はほとんど会話もしなかった。
親戚の集まり特有の空気が苦手で、私はほとんど誰とも話さなかった。
浮いた冷たい初孫だったと思う。
それでもこうして今、「東京で頑張ってるらしい」と噂されて、
就活の相談を受けたり、成人式の相談を受けたり、たまになーんとなく頼られる存在になったようだ。

大学の後輩から連絡があった。
「明日、w.o.dのライブ行くんですか?意外でした。俺、まだ◯◯さんのこと勉強不足でした」
と言うもんだから、
「どういうこと?」と聞くと、
「俺、◯◯さんファンですから。大ファンです」
って。
なんだそりゃ。

だけど、ちょっとだけ嬉しい気持ちになった。

5月に一度食事に行った男性から連絡があった。
「今度ご飯に行きませんか」
今さらどうしたんだろう、と思った。
食事に行ってから、お互い何となく特に連絡を取ることはなかったから。
もしかして、いいなと思ってた女性から振られたのかな?
だけどいいんだ、別にそれでも。
会いたいと思ってくれるなら、そんなに光栄なことはない。
たとえそれが下心だとしても、他のたくさんの女性に声をかけていたとしても、
それでも、嬉しいものは嬉しいんだ。

職場の同期の女の子から連絡があった。
「今度先輩誘って鍋食べに行かない?」
もちろん答えはOKだ。
職場の人たちとこうやってご飯を食べに行くことになるなんて、一年前の私じゃ想像もつかなかったな。

悪友とも言える友達から悪魔のお誘いがあった。
「スプラトゥーンしない?」
そりゃだめだ、時間を忘れて沼ってしまうから。
大学で出会ってから8年。
未だにこうして毎日連絡を取っている。
不思議なもんだ。
男女の友情は成立します!

ギターを背負って2度目の上京を果たしてからはや一年半、
都民になって通算2年が過ぎた。
あの頃は友達もいなくて、知り合いもいなくて、当時の会社の同僚ともなんとなく距離があって、
恋人に振られたら絶望して、お母さんに泣きつくしかなくて。

だけどそれが今、こうして、いろんな繋がりができた。

東京が寂しい街だなんて絶対嘘だ。
ううん、寂しい街だからこそ、人の温かさが身に沁みるのかもしれない。

みんな優しい。
それは、私がみんなに優しくなったからかな?

最後に雰囲気をぶち壊す余談なんですけど、
眼鏡かけてる日よりもコンタクトつけてる日の方が、なんとなくみんな私に優しい気がするのよね。
結局見た目なのかな?

最近の私は確かに自分でも可愛くなったと思うんだけど、
ナンパされる回数も格段と増えた。
容姿って大事だねえ。

性別・関係性問わず、
運命の人っていつ現れるかわからないから、
いつでも素敵な女性でいなきゃな。

振られたからって、落ち込んで、ぼろぼろになって、身なりもおろそかにしてしまう私じゃなくて。

いつだって、誰かに優しくありたい。
私に優しくしたい。
他でもないこの私を、誰よりも大切にしたい。

25歳独身だからってなんだ。
この街は温かい。
東京は優しい。
私が求めてやまなかった生活、今それが、ここにある。

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