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レゲエマスターとの戦い
(2024.08.29 なんとなくいろいろ修正)
これは、私がレゲエマスターと出会うまでの体験記。
2018年〜2019年頃、
私は、大好きなバンドSyrup16gのギターボーカル五十嵐隆さんに憧れて、バンド初期に彼がよく使っていた(らしい)レゲエマスターというギターを探していた。
音が好きだというのもあったが、赤と黒の上品でキレのある見た目に惚れ込んだ。
(というか、ギターはいつも見た目で選んでる。買う時に試奏したことない。
すみません、使いこなせるほどの技量がないので…)
そんなこんなでレゲエマスターを探す旅に出たのだが、これがなかなか見つからず…
少なくとも、地元愛知・岐阜の大手楽器店では手がかりすら掴むことができなかった。
もちろん、中古品も見つかるはずがなく。
同年の春夏、就活で東京に行くことが何度もあったためその機会を利用し、楽器の本拠地である御茶ノ水と下北沢に出向いた。
いくつかお店を回って相談したが、
面白いことに、お店によって回答が全く違った。
先に結論から言うと、
レゲエマスターを手に入れるために、
私に与えられた選択肢は3つ。
①オーダーメイドする
②中古が出回るのを待つ(かなり希少なので難しい)
③新品で売られるタイミングで買う
以下、各店舗でのやり取り。
◼️御茶ノ水A店
ハイエンドモデルのギターを取り扱っているお店で、私以外にお客さんはおらず入りづらい雰囲気はあったが、だからこそ店長の方とお話しできた。
「レゲエマスターは置いてないですか?」と写真を見せて聞くと
「また珍しいものを選びましたね…なかなか欲しがる人がいないので、このモデルならオーダーになると思います」とのこと。
色々お話ししたが、
店長さんのスタンスとしては、
・試奏して違いがわかるようなギターは個体差があるから、本当に良いものではない。つまり店頭に出回る個体を買うのは良くない。
・だからこそオーダーをおすすめするが、数十万はかかる
・その代わり、お店としても本気で対応したいから、工場に直接出向いて細かく要望を伝えるし、最終的にはあなたも一緒に行きましょう
というもの。
提示された金額は、結構目がひん剥くレベルでお高かったため、今回は話を持ち帰ることにした。
「学生の値段では手が出せないので社会人になってから考えたいです」
と微妙な返事をしても、
「高い買い物なので、納得がいくように、無理せず考えていきましょう」
と名刺をいただけた。
御茶ノ水の楽器街は全体的に塩対応のイメージが強かったので、
ここはかなり好印象だった。
(ちなみに東京に住んで今5年目になるが、今でも御茶ノ水の楽器街に対する印象は変わらない。いつも冷たい。なんで〜)
だが、当時まだ学生の身分だったので、
即決でオーダーを依頼することはやはりできなかった。
一旦、保留。
◼️地元のライブスタジオの店長(先輩)
◼️地元の楽器屋さんの副店長(友人)
身内で音楽関係の仕事に携わるこの2人。
どちらも楽器・音響機材に精通しているバンドマンで、
仕事としても楽器を取り扱っている。
頼れる2人に御茶ノ水A店での話をしたところ、
・オーダーしたとしてもそんなに高くならない、それはボラれてる
・うちでオーダーかけた方が安くできるから考えてみて
とのこと。
とりあえず、御茶ノ水A店でオーダーするのはやめた方がいいと止められた。
じゃあどうする?ということで、
就活で東京に行く次の機会では、
下北沢の楽器店を回った。
◼️下北沢B店
駅前の大通りにある広めの楽器店。中古品の取り扱いもアリ。
高校生の男女が楽しそうに弦を選んでいて、比較的入りやすい空気。近隣大学の学生向けのお店なのかな。
40代くらいの男性スタッフさんに
「すみません…ギター全く詳しくないんですけど、レゲエマスターっていうギターを探してて」
と言うとすぐにスマホで調べてくれて、
・五十嵐さんモデルだと中古が出回るのを待つしかなさそう…年代も古いのでそれはかなり難しい。
・取り置きや予約ができないから、うちの店舗に入荷した時はタイミング次第での購入になる
と申し訳なさそうに教えてくれた。
その上で、さらにレゲエマスターについて情報提供していただいた。
スタッフさんの見解は、
・現行のレゲエマスターなら新品で売ってる
・完全なオリジナルモデルなら中古で探すしかないが、moon社は一度製造をストップしててオリジナルモデルは希少価値が高いので出回らない
・復元版でもいいならオーダーメイドするしかない(うちからオーダーできるかは別として)
というもの。
とても親切な店員さんではあったが、
まだ地元で学生をやっている身としては、
当時のモデルの中古が入荷するタイミングを下北沢で待つのはほぼ不可能に近いことだった。
ということで、めげずに次のお店へ進む。
◼️下北沢C店
駅から少し下った裏路地の2階にある。
楽器販売の他にスタジオを併設した小さなお店。
店頭掲示品はあまり種類がなかった。
若い男性2人がレジでMacを触っていて「いらっしゃいませ」の一言もなかったのだが、
私がスマホと睨めっこしていると
「どうしましたか?」と、ようやく声をかけてくれた。
なんだか怖い。足元見られてる感じがする。
おぉ、下北沢のイメージによく似合う塩対応接客だ…と思いながらも、
「好きなバンドの方が使ってるレゲエマスターを探してて。ギターに詳しくないのでよくわからなくて」と説明。
「ちなみにどなたですか?」と聞かれたので、
「syrup16gの…」
と言った瞬間に、
「あぁ、五十嵐さんですか…話にはよく聞いてます」とちょっと笑っていた。
何の話やねん!
そんな会話をしながらMacでレゲエマスターの在庫を調べてくれて、
・町田の楽器店にいくつも新品ある
・町田はmoonの本社があるから、そのあたりで買えばいいんじゃないか?
とのこと。
こわい!呆れられてる!もうこれ以上話せない!
と思って、逃げるように帰った。
いや、たぶん、“いくつもある新品”って絶対現行モデルじゃん…とは思いつつ、そんなことは言えなかった。
そこまで調べてあげるほどの客ではないと見切りをつけられたんでしょうね。
・旧型(五十嵐隆と同じモデル)であれば、比較的ネットで出回っている
・町田の楽器店ならレゲエマスターを多く取り扱っている
という情報を得られたことが唯一の救い。
◼️その後、自分で調べてみて…
そもそもレゲマスには、ヘッドがストラトタイプ(中期)と五十嵐さんが使ってるテレキャスタイプ(初期)とあるらしい。(Google先生調べ)
・ギブソンP-90の1ピックアップ搭載
・ピックアップセレクターのデザインがレスポールタイプ
・ピックガードのデザインがメインモデルとは違い、赤色
・ボディはマホガニー
ネットで調べてみる限り、
私が探してる五十嵐さんモデルのレゲマスはこのタイプなのではないか、ということだが、
正直あんまりよくわからない。
(今自分が使ってるギターでさえ、完全に見た目だけで買ったので、どんなものなのかさっぱり…笑)
さて、どうしましょう。
買ったところで上手く使いこなせるのか、宝の持ち腐れにならないか、そもそもどこまで妥協して買うのか。
買うお金なんてないくせに、レゲエマスターと戦った夏でした。
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追記
2020年春頃、
様々なご縁があり、五十嵐隆さんモデルのレゲエマスターを特別にオーダーしていただき、受け取ることができた。
ざっくり経緯。
東京での就職とそれに伴う上京が決まって、
改めて御茶ノ水へ出向いたところ、
クロサワ楽器さんで、moonの社長のご友人というスタッフの方に出会った。
例の如く、五十嵐隆に憧れてレゲエマスターを探している旨を伝えると、
「私、moonの社長と友達ですよ!
ちょうど、さっきまで一緒にいました!
五十嵐さんのモデルですよね、私もシロップ好きなので分かりますよ!」
と…
おおお、神は存在した!
「社長にすぐ伝えておきます!ぜひ作っちゃいましょう!」
とまで言ってもらえたので背中を押され、
その場でオーダーすることを決めました。
後になって、
現行モデルじゃだめだとか本当に希望がちゃんと伝わってるのかとか心配になったけれど、
ついに来たレゲエマスター受け取りの瞬間、
私は、戻ってきたオーダー依頼書を見て笑ってしまった。
「五十嵐隆さんと全く同じモデルで」
の備考。
オーダー依頼書を書いてくれたスタッフさん、
最高…!
夢にまで見たレゲエマスターをついに受け取る瞬間、
スタッフさんからあれこれ教えてもらった。
・moon社長のご厚意で、独断で五十嵐隆と同じモデルに仕上げてくださったとのこと
①ヘッドのMOONのロゴが今と昔で違うらしく、たまたま工場に残ってた昔のロゴを採用
②ネック・指板の素材の色が現行モデルと違うらしく、それもたまたま工場に残ってた当時のものを採用
③ピックアップ、ピックガードはもちろん五十嵐隆と同じものを採用
なんという、おもてなし精神…
This is Japan.
本格的に探し始めてから2年くらいかかったかな?
お世話になったクロサワ楽器御茶ノ水店のお姉さん、見てるか見てないかわかりませんが、ここで心からお礼申し上げます。
私の生活は変わりました!
そしてmoonの社長さん、本当にありがとうございます。
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追記
2020年夏秋頃、
中畑さんとお話しする機会があり、五十嵐さんのレゲエマスターの話題に。
五十嵐さんはレゲマスを2本持ってるとのことで、
今回私が手に入れたレゲマスのモデルが、その2本のうちどちらの型番かはわからない。