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時にはシネフィルな夜「地獄の警備員」
現在のオレは、サメづいているのと同様に、黒沢清づいてもいます。
そういう心理状態から、この作品を観ました。公開は92年ですが、多分に80年代テイストが全体的に満載。
オレは中途障害者となるまでの生涯で、会社を移って転職をしたのは1回こっきり。
それが奇しくも90年の3月だったから、本作の舞台となる商社のある当時のオフィスビルの情景が出てくるたび「昭和の会社って、確かにこういう雰囲気だったよなあ」と妙に懐かしい思いに駆られました。
まだ、サラリーマンの仕事にデジタル端末が不可欠となる前の時代が舞台です。
本作ではそれを主張する意図かどうかはわかりませんが、オフィスビルをわざわざミニチュアで作って引きの場面で映像化しています。
そのあたりが観る者に、さらなる80年代の昭和感を増幅させてもいるように思います。
ちなみに、この作品は「孤独のグルメ」で有名な松重豊さんの初主演映画。老婆心ながら重ねて言うと、熱心な井之頭五郎ファンの方はこれを安易に観ることはあまりオススメしません。松重さんの役柄がとてもとてもアブナいから。
湿度の高さを感じる映像や不条理で生理的な不安感を煽る演出からも、本作はサイコキラーもののスプラッターホラーというよりは、作品的にはスラッシャー映画と呼ばれるジャンルに近いのではと個人的には思います。
ただし本作の殺人鬼はあまり刃物は使わず、専ら圧倒的な体格と腕力を活かした棍棒による殴打か腕や脚の骨折に拘った偏執的な肉体損壊行為に終始します。
鋭利な刃物や銃器に頼らない分だけ、それが却って画面内で繰り返される暴力に相対した観客の生理的嫌悪感を加速して募らせます。
こういう映画を観てる最中って、時として「どうせ殺されるにしても、自分ならこの殺され方は勘弁してほしい」とか、よくわからない思いを抱いたりしません? そんな描写のオンパレード。
さらに蛇足するなら、演出助手に故・青山真治さんがクレジットされています。故人で言えば、大杉漣さんもクセのある役どころで出演されていますね。
それにしてもこの頃のディレクター・カンパニー(ディレカン)関係の作品はやっぱり今の映像作品に繋がる先鋭的な面白さがあります。
スマホはおろか、携帯もパソコンもない時代のサイコホラー。労働環境ではパワハラもセクハラも微塵も認知されないし、独立愚連隊みたいな一匹狼の人事部長とか、テレックスって何なの? そこに説得力ある? デジタルリマスター公開によって、やっぱり昭和ってスゴいわ…って平成令和世代が衝撃を受ける作品をと、敢えて意図しているわけでは決してないとは思いますが、オレにはとりあえずいろんな意味で非常に面白かったです。
あの時代のオフィスって、どこも昔の学校の職員室みたいな無骨な灰色の重いスチールデスクがやたらに並んでたよな。机の上はファイル山積みで、昼間でも蛍光灯つけないと暗いし…。
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