
読了記録「夢野久作読本」
極論させてもらうとするなら、オレの文学的な素養の大半は、下記リンクのこの河出書房の文藝読本のシリーズに尽きると思います。
https://search.rakuten.co.jp/search/mall/%E6%96%87%E8%8A%B8%E8%AA%AD%E6%9C%AC/
このシリーズが高校の図書室にあった作家の数だけしかオレは文学の知識を持ち合わせていないと言う方が早いかもしれません。
今回、オレが読んだこの末尾リンクの本は、地方出版社から出されたされたものではありますが、嘗て学生の頃に読んだ河出書房の同名シリーズの文藝読本のフォーマットに近い、夢野久作の人生を辿る評伝と主な著作に対する解説を中心に構成されております。
そういう意味においては慣れ親しんだ理解しやすい構成でとても読みやすかったです。
さらに補足させてもらうなら、オレはそもそも作家の文体というものを分析する能力自体がかなり欠けていると自覚しています。
コレは多分に、オレが音楽的に見た場合に旋律もリズムも含めて音痴なことと関係があるのかもしれません。
音色や音質や音圧に関しては、かなり神経質なくせにね…。
そんな文体音痴なオレでさえ、夢野久作の文体は瑞々しいと感じます。
それが、古典芸能である能や民間芸能である博多仁和加にその原点があったとはね…。
さらにオレが殊更興味を唆られたのが、実父である杉山茂丸の生き様とその思想。
オレは、戦前戦後を問わず西洋白人文明に対峙する形での大陸主義者や汎アジア主義主義者の掲げる、いち早く文明開化を成し遂げた日本こそが黄色人種乃至非白人全体を主導すべきという主張があまり好きではないという反感を抱くと同時に、一方で大陸浪人といった生き方に対する私的な憧憬という、ある種の分裂した想いも持っています。
久作の父である杉山茂丸と戦前戦中の右翼の頭目である玄洋社の頭山満の関係にも高校生の頃から興味津々だったので、改めてこの本の評伝的な解説によって九州男子によく見られる、その国士的な思想の源泉にも触れられたような気がして非常に勉強になりました。
父子ともども、人生を通して思索や表現においてこんな脳味噌の使い方をしていれば、そりゃあ、脳自体へ負担をかけすぎにもなりますわな。
胎児よ胎児よ、なぜ踊る。
…以下略。
夢野久作読本 https://amzn.asia/d/iAMMyN4