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なにもかもロビンソンに聴こえてた


それまでの人生でラブソングを聴いたことがなかった。

“君”をうまくイメージできなくて感情移入できなかった。

新しい季節は なぜかせつない日々で

河原の道を自転車で 走る君を追いかけた

短期バイト先で君に出会った。バイトはすぐにやめた。短期なのに。

初めてひとを好きになって、長続きするといいとシンプルに思った。

そういうラブソングがいっぱいあってよかった。

思い出のレコードと 大げさなエピソードを疲れた肩にぶらさげて しかめつら まぶしそうに

1秒ごとに君を笑わせようとしてしまって、そういう僕がどのラブソングの中にもいた。

同じセリフ 同じ時 思わず口にするような

ありふれたこの魔法で つくり上げたよ

前髪なしポニテ。「

かわいいって言われるよりカッコいいって言われたいんだ」と君。

ダサい僕を見たらきっと笑うな。

せーの、で手を繋ぐ。カバンは僕が持つ。

卒業したあとの話もした。早く大人になりたいと思わなくなった。

誰も触われない 二人だけの国 、君の手を離さぬように大きな力で 空に浮かべたら

ルララ 宇宙の風に乗る。

片隅に捨てられて 呼吸をやめない猫も、どこか似ている 抱き上げて 無理やりに頬よせるよ。

名前をつけてやる。ほっとけなくて、でも無力で。

君と泣いた。

いつもの交差点で 見上げた丸い窓は

うす汚れてる ぎりぎりの 三日月も僕を見てた

若さを全部使い果たす気でいた。

待ちぶせた夢のほとり 驚いた君の瞳

話があると言うから来たんだ。

雨の夜。なかなか言わないから帰ると僕が言った。

「私がいけないの」

君が泣いてなかったから、僕は救われた。

そして僕ら今ここで 生まれ変わるよ、人を好きになれてよかった。

誰も触われない 二人だけの国、 終わらない歌ばらまいて。

サヨナラを知った時が恋を覚えた時さ。

大きな力で 空に浮かべたら ルララ 宇宙の風に乗る。

君を知る前の僕に本当のサヨナラさ。

大きな力で 空に浮かべたら ルララ 宇宙の風に乗る。

ルララ 宇宙の風に乗る。



                        終

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