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お化け工場の秘密と凍ったプリン (短編少年小説)

簡潔こそが英知の真髄である

Shakespeare


お化け工場への突入計画が着々と進んでいた。

ケイイチが模造紙に描いた地図を畳の上で広げてぼくに説明してくれた。

地図にはぼくんちとケイイチんちと学校とお化け工場しか載ってなかった。

それでだいたいのことはわかったし、ケイイチの説明はすごくわかりやすかった。

「プリン凍ってる?」と、そこでケイイチ。

「えっと、ちょっとまって……」ぼくは冷凍庫の中を覗きにいく。

「まだ凍ってない」

するとそこでケイイチは腕を組んでうなった。

「敵ながらあっぱれだ」と言ってケイイチは地図を丸めて片付けてしまった。

お化け工場は毎日その場所を変えるから地図はもともと役に立たないのだと付け加えてから絵文字みたいに肩をすくめた。

お化け工場は需要的にも夏場ににフル稼働なのですごく電力を消費した。

そのせいでぼくらのプリンはこのところあんまり凍らない日が続いた。

お化け工場の工場長は話せば分かる人だと聞いていたし、ぼくらだってお化けの出荷が滞る事態は避けたいと思っていた。持続可能な何かは目に見えるものだけとは限らないはずだ。

ケイイチは苦心の末、お化け第二工場から本工場への輸送トラックにもぐりこむことを考えついた。妙案だった。

「てかさ、プリン凍った?」

「んーと……まだみたい」

お化け工場のお化けは厳しい検査過程を経て最終的に全国へと出荷されていた。海外向けの日本産のお化けもこのところ好調で貿易摩擦の懸念すらあった。

ひどい円安なのでお化けのランニングコストも増大していたけど、合理化によりうまく吸収して、さらなる安心、安全をうたい文句にこの町産のお化けは市場でのシェアを拡大していった。

ぼくとケイイチは来る将来のお化けの空洞化を懸念していて、警鐘を鳴らし続けてきた。

日本の良質なお化けがどんどん海外に持ち出されて、海外のしょぼいのがいっぱい入ってくるという……

想像しただけで、震える。

「あのさ、プリン凍った?」

「あ、えっと、あ、プリン、凍った!」

ぼくらは凍ったプリンを冷凍庫から取り出して食べた。

うまーーい😋

アルテミドーラス  
いえ、私の方をさきにお取り上げくださいますよう、直接、お身の上に関わりますこと、すぐにもお目通しを。

シーザー  
おのれに関わることとあれば、あとまわしにしよう。

OK、うん、そうなんだ。

分かりやすく言えば

お化け工場の最大の功績は

この夏も

凍ったプリンの味を倍増させてくれたってことだと思う。



                       👻

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