水槽の彼女〜カバー小説【2】|#しめじ様
この短篇は、しめじ様のカバー小説の続きです。
よろしければこちらをご高覧下さいませ。
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僕は部屋に戻って、夜の間にウイスキーを飲み過ぎてしまった。あくる朝、久し振りに二日酔いになった。
動悸とともに、ずきずきと痛む頭を持て余す。
(とにかく、何かを食べなくちゃあ駄目だ。オレンジのフレッシュジュースだけでも・・・)
そう思い、朝食に向かうことにした。
半分瞼が塞がったような状態で、ふらふらしながら泊まっていた8階のエレベーターホールまで辿り着く。
エレベーターの表示が点灯し、ドアが開いた。
―――その時。あの、崩壊星の瞳の女の子が、中に立っているのが見えた。頼りないのか意思が勁いのか分からない、不思議な雰囲気の立ち姿。やっぱり、昨日のTシャツみたいなワンピースにニットカーディガンを羽織っている。
今朝はひとりだった。
「おはようございます・・・」
重なる偶然に驚きながらも、僕はまたぎこちなく頭を屈めながら挨拶してエレベーターに乗った。
朝食会場は、2階。
エレベーターがニュートンの慣性力をかけながら降りていく。時間が早いせいか、誰も乗ってくる人は居なかった。
僕は扉近くのフロアボタンが並ぶ前に立っていた。すると、背後の女の子が不意に声を発した。
「―――困っていること、あるわ」
細いがよく通るアルトの声だった。
思わずはっとして振り返ると、女の子は上目遣い気味に僕の目を見返してきた。
「困っているの。たすけてくれる?」
僕は生唾を飲み込んだ。
彼女は今朝は薄く口紅を差していた。
ハイティーンであろう彼女の顔が、そのことで大人びて見えた。
「何を・・・」
「papaから逃れたいの。私は車を運転出来ない。お金も無いから、逃げられない。
―――あなたの車で、遠くへ連れて行って」
そのとき。エレベーターの中は、ひとつの水槽だった。彼女は移動する水槽の中の熱帯魚のように、酸素を求めてぱくぱくと口を開けているように見えた。
「・・・分かった」
やはり異国の人から逃れたかったんだ。
僕は自分の憶測に妙な勝利感を覚えていた。
朝食会場に入る前、人目を誤魔化すために、2階から1階ロビーへつながる螺旋階段を上がり下りしながら、僕と彼女は慌ただしくpapaから逃避行する打ち合わせをした。
僕のチェックアウトはその日の11時だった。荷物をまとめ、フロントで会計を済ませた。緊張しているせいか、サインが上手く書けなかった。
駐車場に置いている車をホテルの車寄せに回してもらい、乗ってから、ホテルに程近い海沿いのカフェテラスで、彼女を待った。
もちろん彼女が来れるように歩ける範囲の近場にしたのだが、その分、すぐにpapaに見付かりそうで恐ろしかった。異国の人の考えが何処まで及ぶのか、見当もつかない。
まだ痛む頭を鎮めるために、カフェのドアを注視しながら、何杯目かのオレンジジュースを口にしていた・・・
【continue】
▶Que Song
逃避行/Dios
はい、今日はここまで。
見切り発車気味に話を進めておりますので、コメント頂きましたら結末が変わるかもしれません😌🥀
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また、次の記事でお会いしましょう!
🌟Iam a little noter.🌟
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