ふぉれすとどわあふ|masakoの恋
如月の月ももう10日が過ぎようとしている。
何かアイテムが揃えば、アイツを見つけ出してそのアイテムを渡してやれるのに、何なのかさっぱり分からない。
その日偶々留守番をしている雑貨屋の中を(物を壊さぬように)落ち着きなく歩き回り、親指の爪を噛む。
・・・一体、何だってんだろう?こんなに考えるのも私らしくないし、次の行動に手をこまねいているのも、まったく私らしくない。
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カランカラン、とドアチャイムが鳴って人が入ってきた。
「あ、お姉ちゃん!ただいま」
ミユが満面の笑顔で帰ってきた。
その笑顔にマサコの心は少し和らいだ。
マサコの口元に微笑みが宿った。
そして、ミユとともに入ってきた黒づくめの長いドレスの美女を見つめた。
「―――この人、どちらさん?」
「あ、この人はね、西の魔女さん。船に乗って会いに行ったの。
西の魔女さんはね、コーヒー豆を育ててるの。」
「コーヒー豆・・・」マサコは繰り返した。
「そう、本物のコーヒー豆よ!!ふぉれすとどわあふにはなかったでしょう?
ここで本物のコーヒーが出来れば、今よりもっとたくさんのお客様に喜んでもらえるわ!私ぜったいコーヒー豆をうまく育ててみせるわ。
ね、魔女さん!」
ミユは興奮していたが、西の魔女はミユを見ていなかった。
ドアを入ってからずっと、マサコだけを見ていた。固まったように。
(何だ?・・・この魔女。同性愛者か・・・?)
マサコが訝しげに魔女と目を合わせて睨みつけると、魔女は右手を上げて人差し指でマサコを指差した。
「お主・・・
呪が、かけられておるの」
差された人差し指の爪は禍々しく長く伸びていた。
マサコだけでなく、あの天真爛漫なミユまでも凍りついた。
「・・・お主の姿は、本来のお主ではない。
おそらく、お主の親のどちらかが、この店を守るために呪をかけたようじゃな。
お主は、この呪にかかっているうちは真に幸せになれぬ」
魔女はそれだけ言うと腕を下ろした。
(真の幸せ・・・?)
マサコにとっては青天の霹靂だった。
マサコの幸せは、親から受け継いだ
この雑貨屋を守り、ミユの頑張っている姿を見守ることだったのだから。
「・・・・これが、本物のコーヒー豆じゃ」
魔女は黒いローブのポケットを探り出し、小さめの麻袋を出して、ミユではなくマサコのほうへ渡そうとした。
思わずマサコは、魔女の麻袋を受け取った。
「そう、お主はミユや親たちのために自分を忘れてきたのじゃ。
自分を思い出すには、このコーヒー豆で、自分のためだけのコーヒーを飲むと良い。
・・・そして、いま想い人がいるのじゃろう?」
(・・・・・・!?)
マサコは麻袋を持つ手から、反射的に魔女の顔を見つめた。
魔女の顔には憐れみがあった。
「その想い人に、コーヒー豆を使ったチョコレートを用意して、目の前で食べてもらうのじゃ。
・・・さすれば必ず、お主の願いが叶う」
「・・・ふぉれすとどわあふの
マサコの話はな、
だいたいこれで終わりだ。」
「え!?マサコはどうなったの??」
「そうだな、諸説あって、
マサコが自分のためだけの
コーヒーを飲んだ途端、
口調も服装も女らしくなって、
別人になったという話もある」
「成る程ね」
「コーヒー豆のチョコレートを
渡しそびれて、そのまま雑貨屋で
一生を終えたという話だってあるさ」
「そうなんだ・・・辛いね」
語り部だった男は、
息子のような子どもに向かって
言った。
「・・・まあ、俺は、
ちゃんとふたりが
元の姿でまた会って、一緒に
星のかけらを探しに行ったってのが、
お気に入りの結末だけどな」
こう言って、
種明かしのようなウインクをした。
✠ continue ✠
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このnoteは、三羽 烏様のnoteにインスパイアされて執筆しました。
三羽 烏様、誠に有難うございます😊
#ふぉれすとどわあふの企画に
応募しております。
三羽 烏様、拙作ですが
何とぞお納め下さいませ。
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お読み頂き有難うございました!
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また、次の記事でお会いしましょう!!
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