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Momotaro ロマンス〜甘い鳥籠②|#スピンオフ
この短篇小説は、以下のnoteのスピンオフの続篇です。
(ヘッダーは、大橋ちよ様よりご提供頂きました)
↓ ↓ ↓
【登場人物】
也哉子…アラサー、独身、彼氏ナシの事務員。
Momotaro…デパートのウインドウディスプレイをしていた、2カ国語を操るスタッフ。
【前話のハイライト】
ウインドウの奥に設置された大きな鏡に映った也哉子は、スタイルまで良く見えるほど姿が変わっていた。
(巻き方ひとつで、こんなに変わるんだ・・・)
「あなたって、一体・・・?」
「僕ですか?―――僕は、Momotaroと言います」
前髪をさらりとかき分けて、【Momotaro】は白い歯を見せて笑った。
〜Bye Byeルーティン」
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Momotaroロマンス
〜甘い鳥籠
也哉子は自席で、手製のお弁当を食べながら、この前の休みの日を思い出していた。ランチはなるべく手製のものと決めている。節約になるし、身体のためでもある。
(あの人、まだデパートに居るのかな・・・)
偶々、ディスプレイだけに来ていたのかもしれない。外国語―――多分、フランス語を話す男性スタッフ。
優しい目をして、丁寧に首にマフラーを巻き直してくれた。
「その巻き方が、貴女によく似合う」
と褒めてくれた。
(あんなふうに、上等な扱いをされたことは今まで無かった・・・)
母譲りの甘めの玉子焼きを、箸でふたつに切り分け、そっと口に入れた。
❄ ❄ ❄
退社時間になり、也哉子は会社の紺色のユニフォームを脱いだ。
彼女は中学時代バレーボール部だった。身長は165cmほどある。バレー部ではそんなでもなかったが、一般女性では背が高いほうだ。
ショートカットなので、デニムなどパンツスタイルだと、男性に間違われることもある。休日しか、口紅も塗らないのだ。
(帰り、あのデパートに寄ってみようかな?)
バッグからポーチを取り出して、ロッカーの扉の鏡を見ながら、簡単にメイクを施した。(簡単、以外知らないのだが)。今日は幸い、ロングスカートの日だった。
❄ ❄ ❄
街では年始めのセールがほぼ終わり、春に向けた商戦が始まりつつあるようだ。ウインドウの色は、濃くリッチなカラートーンから、爽やかなスモーキーパステルへと移ってきている。
(色って、不思議だよね・・・)
同じコートでも、色ひとつで初春を感じるものとなる。
也哉子は、高校では美術部に転向した。何となく、バレーボールが身にも心にも添わない気がしたからだ。絵を描くとか、美しいものを観るのは好きだった。
今まで【何となく】、そんなふうに立ち位置を変えながら、人生をやり過ごしてきたと自分でも思う。
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デパートに着いて、先ず外からウインドウディスプレイがどうなっているか眺めた。インスタレーションを観るように、也哉子はディスプレイだけを見に来ることがあった。
このデパートは街の一番店なので、ディスプレイも凝っていて華やかだ。全体的にエレガントなのは、ここに買いに来る客の志向に合わせているのだろうか。
ディスプレイには、夢が詰まっていた。春霞 のように見せたオーガンジーが螺旋状に大きく何枚か巻かれ、濃いピンクから淡いピンクの花弁が、1枚1枚そこに縫い止められていた。
そして誘われるようなポージングのマネキンが数体、何処かのブランドの最新の服を纏って、歩き出す様子だった。
(ほんと、こういう服が似合うようになりたいよね・・・)
也哉子のファッションはいつも素っ気ないほどシンプルで、そのデパートで買うことは滅多に無かった。同僚の結婚式用の服くらい。
(こんな服、着ているのが想像出来ないわ・・・)
つくづく羨ましくなって目を皿にしていると。
「―――Nous nous rencontrons à nouveau. mademoiselle.」
以前耳にした、よく響くアルトの声が聴こえた。也哉子はびっくりして振り返った。
「Vous avez aimé quelque chose?」
【モモタロウ】と言った背の高い彼が、前と同じ微笑みで也哉子を見下ろしていた。
「・・・え、っとあの・・・」
也哉子が突然の再会にどぎまぎしていると、【モモタロウ】の彼は薄手の白いパーカーの衿元を整え、
「―――失礼。また会いましたね、って言ったんですよ」
テーラードのジャケットコートの長い前たてを引っ張った。
「・・・何か気に入るものがありましたか?
このウインドウは、僕のブランドの洋服なんです」
也哉子は顔を巡らせ、あらためてウインドウの中を見た。
【モモタロウ】に、
「―――これは、あなたがデザインした服なんですか?」
【モモタロウ】は頷き、立ったまま片方の手で頬杖をつくようにして、也哉子に言った。
「この前お会いしてから、ちょっとお願いしたいと思っていたことがあるんですよ。
―――良かったら、デパートの僕のショップでお手伝いして頂けませんか?」
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▶Que Song
ワスレガタキ/石崎ひゅーい
【continue】
🌹Momotaroロマンス 本篇🌹
Momotaroは悩める女性の味方です。
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🌟Iam a little noter.🌟
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