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ふたりで散歩|#妄想代理人


河川敷を、ふたりでそぞろ歩いた。


・・・日が暮れかけて、

 
まだ、風も冷たく。



お互いにコートを着て、

肩を寄せ合うように

足並みをそろえる。



「―――あ、手袋を忘れちゃった」 


私は言う。すると、彼はごそごそと

左側の手袋を片方外す。


「―――はい、これ」


「・・・片方じゃ意味ないよ?」


「いいんだよ。・・・ほら」



彼は自分の左側の

コートのポケットを指し示す。 


(・・・そうか)


恋人同士には、

二組の手袋は要らないんだ。



手袋のない片手同士は、

同じコートのポケットに入れて、

手を繋げばそれでじゅうぶん。


いや手袋よりも、もっと温かいのだ。






―――この鉄塔、何処まで続くのかな?


―――まあ、何処までも。海までは続く

かな。






―――鴛鴦おしどり

住処すみかに 帰っちゃったね。


―――・・・・・。   


―――・・・・・。








―――ねえ、此処ここは遊具がい

っぱいあるんだ。


――ー哀愁漂うな。



ーーーそうだね。誰も遊んでない。






ーーーこれほら!カバさんに乗ってみ

たら?

―――いいよ。きみが乗ればいい。

写真に撮ってあげるよ。






―――見て! 私たち みたいだね。


―――・・・・・・。






―――夕焼け・・・!!

きれいじゃない・・・?



―――そうだな・・・・。






橋が間近に来て、

私たちは河川敷から

道路まで上がり、

橋の上で右と左に別れた。



彼が駅へ

まっすぐ向かっている背中を、

見えなくなるまで見送った。




彼は右。

北方面の街なかへ。

私は左。

夕飯の買い物をするために、

行き慣れているスーパーへ。





グッバイ・マイ・ラブ  

この街角で

グッバイ・マイ・ラブ  

歩いてゆきましょう

あなたは右に  わたしは左に

ふりむいたら 負けよ・・・

「グッド・バイ・マイ・ラブ」
アン・ルイス







釣瓶つるべ落しに日が暮れた

街角で

信号を待ちながら、

遠ざかる彼の背中を思い出して。


―――帰る時間を決めていたかのような

確かな足取りを思い出して、



想い依らず、ぽろぽろと・・・



涙があふれ、

こぼれてきた。







“フランス人はどんなことにも
うまい言葉を持っていて、
その言葉はいつも正しかった。



さよならをいうのは、
わずかなあいだ死ぬことだ。




The French have a phrase for it. The bastards have a phrase for everything and they are always right.To say goodbye is to die a little.

『長いお別れ』より





✠Fin✠





▶QUE SONG

メイン・テーマ/薬師丸ひろ子


▶聴き比べ

スタンダード・ナンバー/南 佳孝


✢✢✢

 

お読み頂き有難うございました!

毎日散歩している河川敷でした!!



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また、次の記事でお会いしましょう!



🌟I am a little noter.🌟




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