再会〜二十億光年の記憶解凍|#短篇小説
この短編小説は、以下のnoteの続篇となっております。
ご高覧頂けると幸いです。
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【3】
同窓会は、クラスの女性のひとりが開いている店で集まることとなった。
カウンター席がいくつかと、大きめの白木のウッドテーブルの席があった。15人くらいが、そのテーブル席中心に座る指示が出た。
女性たちはお決まりの文句、「昔と変わらないね」をまず言い交わしていた。
沙良は、もしも離婚したことを知られていて、自分の何処かに同情をひくような雰囲気の欠片が残っていたら・・・と密かに気にしていた。だから、お決まりの文句であっても、その言葉が嬉しかった。
昔の彼、斎藤俊彦は先に来て静かにカウンターの隅に座っていた。沙良は目顔で挨拶した。
男性は他にも何人か来ていて、遠方から駆けつけている人もいた。サラリーマンよりは、自営業をしている人が多いようだった。
高校生の頃から、俊彦は積極的に中心には関わらないけれど、自分の立ち位置をいつの間にか確立しているタイプだった。この会でも、皆の動きの邪魔にならないように、カウンターに座っているのが彼らしいと思った。
「席について―――」と号令がかかって、沙良は入口近くの下座へ座りかけたが、
「はい、奥。・・・もっと奥に座って!」
と促され、仕方なく席を移動した。結果、俊彦の近くには座れなかった。
「飲み放題」ということもあって、最初はお互いの距離感を探り探り話している印象だったのが、時間とともに皆大きな声になり、くだけた雰囲気になってきた。
「―――実は私、庄司くんが好きだったのよ」
とか、
「でも当時、庄司くんは久山ちゃんと付き合ってたよね」
とか、
「俺は田中が気になってた・・・」とか。
恋愛話が何とはなしに席順に打ち明けられ始めて、沙良はちょっと居たたまれなくなってきた。
まだ、「恋愛」なんて、自分には違う星の話にしか聴こえない。過去のことでも、気恥ずかしくてしょうがない。
今夜の同窓会に出るのがやっとの思いだった。自分の日常から、そういう話題を皆の前で話すなんて、頭がついて行かないのだ。
同級生のひとりの話で場が盛り上がって、うまい具合に話題が切り換わった。
ほっとした沙良は、酔いが進んできて、
(もう、お酒は控えめにしないと、帰れないな・・・)と思った。
―――娘の詠美が、もしかしたら起きているかもしれない。
ぼんやりと大皿から自分の取り皿へ、カルパッチョを移していたとき。
「―――沙良。楽しんでるか」
俊彦が、お手洗いに立った隣の席に、代わりに座って来た。
軽く驚きながら、声を聞いた途端に、温もりのある懐かしさが記憶解凍されて、ちょっと焦った。
昔と変わらない、一重まぶたの奥の穏やかな眼差し。微笑みを含んでいる。
「ご無沙汰、だな。どうしてた?」
(どうしてたか・・・言い切れないわ、貴方には・・・)
沙良は片手にグラスを持ち直しつつ、口火を切れず・・・ただ、俊彦と目を合わせていた。
【 continue 】
▶Que Song
COLORLESS/三浦大知
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🌟Iam a little noter.🌟
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