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水槽の彼女〜カバー小説【11】|#しめじ様


この小説は、しめじ様のnoteからインスパイアされてカバー小説にさせて頂きました。


もとのお話はこちら。
元のしめじ様のお話 +【1】〜【10】まで収録。

↓ ↓ ↓



《登場人物》



・僕…34歳。ひとり暮らし


優愛ゆあ…ハイティーン。崩壊星《collapser》の瞳をしている。異国のpapaから離れたがっている。


・異国のpapa…世界的な画家。
海外へ仕事で行く予定。


・りら…彼女の齢の離れた父親の違う妹。

「彼女」を母親だと思っている。



―――


《10話ハイライトシーン》


・・・あの街には居場所が無いわ。
papaはこれから、仕事で海外に飛ぶことも考えてるけど・・・」



僕は、2本目の煙草を取り出していた。



「一緒に行くのか?」



優愛は後ろ姿のまま、首を振って否定した。



「じゃあ、妹のために、家へ戻らなくちゃ・・・」



「・・・そうね・・・」



煙草をくわえたとき、優愛はくるりとまたこちらに振り返った。
優愛の瞳を見て、一瞬寒気がした。



ホテルで会った時のように、彼女の瞳は崩壊星コラプサーごとく、くらいくらい闇の色を宿していたのだ。



「・・家から、離れられないわね」

「水槽の彼女〜カバー小説【10】」




川べりの散歩に出て以来、優愛ゆあのメンタルの調子はあまり良くなかった。


家で珈琲コーヒーを飲みながら、動きを止めてずっと一点を見つめていたり。


料理はどちらかというとたのしんでするほうだったのに、

「何もメニューが浮かばない」

と言って、弁当屋の、出来合いの弁当を買ってきたり。



ある晩、僕がコンビニエンスストアの弁当を食べていると、両肘をついてぼんやりこちらを見ていたので、優愛に声をかけた。


「昼間はどうしてるの?家で」


優愛は目を泳がせた。


「え・・・
とくに何もしてない」


僕はあれこれ家事をしろと言うつもりは無かった。ただ、優愛が心配だったのだ。


「サブスクとか、好きな映画でも観たらどうかな?・・・暇なら。

音楽でも良いし・・・」


「うん・・・」


優愛は、両手をテーブルの上で組んだ。懺悔ざんげをする人のようだった。


「集中して、観たり聴いたり出来ない気分なの」


「そうか・・・」


最近、優愛が来てから、コンビニエンスストアの弁当が口に合わなくなってきた。僕は、箸を置いて蓋を閉めた。


「YouTubeとか・・・

気になった本を、ただ眺めるくらいなら、出来ないかな」


続けて提案した僕に、おそらく少し気兼ねをしたのだろう。テーブルの白い台拭きを一度広げて、また畳み直したあと、伺うように僕の顔を見た。


「何か―――おすすめがあるの?」


「そうだな・・・、まあ」


僕はリモコンを手にして、テレビのほうへ向けた。しばらく動画を探したあと、


「・・・これは、【VOGUE JAPAN】のハウスツアーだよ。

海外のアーティストやアクターたちが、自宅の中を紹介するんだ」


【アーティスト】という言葉に、優愛はぴくりと反応したように動いた。


「日本と違って、自由な発想で空間をクリエイトしてるのが面白いんだ。


・・・どんな家が、持ち主を癒やす【巣】になりうるのか。

そんなことを、考えさせられるYouTubeだよ」


優愛に説明し、何度も何度も再生した動画を見やる。インテリアやハウスデザインを語り始めると、僕はつい前のめりになってしまう。


「面白そうね・・・」


本当にそう思っているのか、微妙な返事だった。ただ、YouTubeの画面からは、目を離していないようだった。


「・・・あと、写真集なら」


ゆっくり立ち上がって、まず食べ終わったお弁当を片付け、本棚へ向かう。


「これが僕は好きだな。

―――【CASA MODELNAカーサ・モデルナ】」

取り出した重い本の表紙を、優愛に見せる。


「コロンビアの富裕層の、自宅か別荘かのアーキテクチュアの写真集だよ」


「コロンビア・・・?」優愛はまた片肘をついた。


「うん。都会ではなくて、郊外にある邸宅さ。


インテリアは年季が入っていて、よく見ると、住んでいる人たちの息吹いぶきを感じるんだ。


本好きだったり、芸術アート好きだったりね。


綺麗にまとまり過ぎてないところが、良いと思う」


「ふうん・・・」


ちょっと僕はしゃべり過ぎていた。優愛への心配りというよりは、スピーチ大会の様相になりつつあった。


「まあ―――ごめん。とりあえず、そんなところかな」


やや恥ずかしい気持ちを隠して、ダイニングの、優愛の前の椅子に戻った。


「・・・あなたはやっぱり、インテリアのお仕事が好きなのね」


優愛はそう言って、何日かぶりにゆっくり僕に微笑みかけた。


「papaもそうよ・・・絵を描くこと、芸術アートにかけては、ふだん話さないのに、とても饒舌になるの。

もっと、ふだんがわかり易いと良いんだけれど・・・」


優愛の目は、僕を通してpapaを見ていた。今夜は崩壊星コラプサーくらい瞳ではなかった。


・・・いつくしみ、諦め、戸惑い、不安。
様々な感情が、瞳にゆらゆらと映っていた。


―――もしかしたら、優愛は。


僕の中でひとつの疑問が浮かんで、身体を締め付けた。


締め付けられた僕は、知らぬ間に、何かを期待していたことにようやく、気付いたのだった。




▶Que Song

Phototype/Dios




【 continue 】




▶参考YouTube

Open Door/VOGUE JAPAN

独特の世界観。



40本以上のアーカイブ。
↓ ↓ ↓



▶参考書籍

【CASA MODELNA】

(Amazonのプレミア価格となっているので、書店でどうぞ)





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次回で終話の予定です😌


また、次の記事でお会いしましょう!



🌟Iam a little noter.🌟



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